技人国ビザの審査厳格化とは?2026年4月改正で変わった要件を企業担当者向けに解説

技人国ビザの審査厳格化とは?2026年4月改正で変わった要件を企業担当者向けに解説

2026年3月〜4月にかけて、就労ビザの中でも最も利用される在留資格「技術・人文知識・国際業務」(技人国ビザ)の審査基準が大きく変わりました。日本語能力の証明義務化、派遣形態への制限強化、企業カテゴリーに応じた追加書類の新設など、これまでの申請常識が通じなくなるケースが続出しています。

ここでは、改正の背景から企業の具体的な対応策まで、採用担当者が今すぐ確認すべきポイントをわかりやすく解説します。

なお、技人国ビザの基本的な対象職種や申請方法、必要書類を一通り確認したい方は、以下の記事も参考にしてください。本記事では、基本要件を踏まえたうえで、2026年の審査厳格化によって企業が特に注意すべきポイントを中心に解説します。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」完全ガイド|職種・要件・申請方法をわかりやすく解説

この記事のポイント

  • 技人国ビザでは、学歴・職歴と業務内容の関連性、専門性のある職務内容、報酬水準などが重要な審査ポイントです。
  • 2026年の見直しにより、翻訳・通訳など言語能力を用いる対人業務では、日本語能力の立証がより重要になりました。
  • 派遣・出向形態で外国人を受け入れる場合は、派遣先の業務内容や就労実態も確認されるため、書類準備に注意が必要です。
  • とくにカテゴリー3・4の中小企業や設立間もない企業では、追加書類や説明資料の不足が不許可リスクにつながります。
  • 自社の業務が技人国ビザに該当するか不安な場合は、申請前に行政書士へ確認しておくと安心です。

技人国ビザの審査厳格化の基本

2026年3月から4月にかけて、出入国在留管理庁(入管庁)は在留資格「技術・人文知識・国際業務」(いわゆる技人国ビザ)の審査基準を大きく見直しました。改正の内容は複数にわたり、日本語能力の証明、派遣形態での就労、提出書類の追加など、入管手続きの実務に直接影響するものばかりです。
※参考:在留資格「技術・人文知識・国際業務」(出入国在留管理庁)「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について(出入国在留管理庁)

いつ・何が変わったのか

今回の技人国ビザの改正は、大きく2つのタイミングに分かれています。
1点目は、2026年3月9日以降に適用される変更です。この日以降に受け付けられた申請から、派遣形態での技人国申請に対して独自の審査基準が追加適用されるようになりました。これまで派遣元企業が申請すれば比較的審査が通りやすかった状況から一転し、派遣先の業務内容や雇用の安定性まで審査の対象に含まれるようになっています。
2点目は、2026年4月15日以降に適用される変更です。翻訳・通訳をはじめとする言語能力を用いる対人業務に従事する外国人については、一定水準以上の言語能力を有していることが技人国ビザの認定要件として明確化されました。
また、4月15日以降の変更では、所属機関がカテゴリー3または4に該当する企業で「代表者に関する申告書」および日本語能力証明資料の提出が同時に義務化されました。

なぜ厳格化されたのか

今回の厳格化の背景には、長年にわたって制度が適切に利用されていない問題があるとされています。
技人国ビザは本来「学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的業務」に従事する外国人のための在留資格です。ところが実際には、通訳・翻訳という名目でビザを取得させながら、実際には工場の製造補助や店舗での接客補助など、専門的知識を必要としない単純作業に従事させる事例が後を絶ちませんでした。
とくに問題視されていたのが、SES(システムエンジニアリングサービス)契約や人材派遣の分野です。「エンジニア」「通訳担当」という肩書きでビザを申請しながら、実態は客先の現場で単純補助業務を行わせるケースが多数確認されていました。
こうした状況を受け、入管庁は「在留資格の決定に係る運用の明確化及び透明性の向上を図り、申請人の予見可能性を高める」ことを目的として、審査基準を公式に明文化する方針に転換しました。「グレーゾーン」として黙認されてきた申請に対し、書面による具体的な立証を求める体制が整備されたのが、今回の改正の本質です。

技人国ビザの審査の変更点①|日本語能力の証明が事実上必須に

2026年4月15日の改正で最も影響が大きいのが、日本語能力の証明に関するルールの明文化です。言語能力を用いる対人業務に従事する外国人については、一定以上の日本語能力を有していることが技人国ビザの認定要件として正式に位置づけられました。

対象となるケース

今回の要件が適用されるのは「主に言語能力を用いる対人業務等」に従事する外国人です。通訳・翻訳・語学指導はもちろん、日本語を使った貿易業務や営業、海外取引業務なども対象に含まれます。
なお、証明資料の提出が申請時に義務となるのは、所属機関がカテゴリー3または4に該当する企業です。カテゴリー1・2の企業であっても、審査の過程で提出を求められる場合があるため、実質的には全企業が対応を検討しておく必要があります。

必要な日本語能力レベル

基準となるのは、CEFR B2相当以上の言語能力です。具体的には、以下のいずれかで満たすことができます。
  • JLPT(日本語能力試験)N2以上を取得していること
  • BJT(ビジネス日本語能力テスト)400点以上を取得していること
JLPT N3以下のスコアしか持っていない場合、日本語を用いる業務としての技人国申請は認められないと考えておく必要があります。採用選考の段階で日本語レベルの確認を怠ると、申請準備が整った段階で初めて問題が発覚するリスクがあります。

証明書類の提出が免除されるケース

下記のいずれかに該当する場合は、日本語能力証明資料の提出が不要とされています。ただし、専修学校卒業の場合は専攻科目と業務内容に関連性が認められることが条件です。
  • 本邦の大学、高等専門学校、または専修学校の専門課程・専攻科を修了していること
  • 中長期在留者として20年以上日本に在留していること
  • 日本の義務教育を修了し、高等学校を卒業していること
たとえば日本の大学を卒業した外国人留学生を採用する場合、日本語で教育を受けていたとみなされるため、証明書類の添付は不要です。一方、海外の大学を卒業した外国人を採用する場合は、原則として証明書類が必要になります。

企業が今すぐすべき対応

採用担当者として最初に取り組むべきは、採用予定者の日本語レベルの確認です。内定を出す前にJLPTまたはBJTのスコアを書面で確認し、証明書類を取り付けておくことが理想的です。証明書類がない場合は、受験・取得を採用条件に加えることを検討してください。
また、日本語を必要としない業務(英語のみで完結するITエンジニア職など)については、「技術」区分(自然科学分野)での申請に切り替えることで、日本語能力証明の問題を回避できる場合があります。業務内容説明書には、日本語使用の有無・頻度・具体的な場面を明記することで、審査の透明性を高めることにもつながります。

技人国ビザの審査の変更点②|派遣・出向形態への制限強化

技人国ビザの申請は、直接雇用だけでなく派遣・出向形態でも行われてきましたが、2026年3月9日以降はこの形態に対する審査が大きく厳しくなりました。派遣形態での申請を検討している企業は、とくに注意が必要です。
2026年3月9日申請分から、派遣形態の技人国申請に対して独立した審査基準が適用されるようになりました。入管庁の公式ガイドラインでは「派遣先等機関を含む」として、派遣先の状況も審査対象に含めることが明記されています。これまでは派遣元企業の申請内容が主な審査の対象でしたが、今後は派遣先の業務内容・雇用の安定性・就労実態まで審査の範囲に含まれます。

派遣・出向形態で不許可リスクが高くなるケース

不許可につながりやすいのは、申請書類上の業務内容と実際の就労実態が乖離しているケースです。たとえば「通訳・翻訳担当」として申請しながら、派遣先では製造補助や店舗スタッフとして勤務させているようなケースは、入管庁のガイドラインが禁じる「特段の専門知識を要しない業務」や「反復訓練によって従事可能な業務」に該当すると判断されるリスクがあります。
また、案件ごとに勤務先が変わるSES契約や常用型派遣の形態も、勤務先・業務内容が固定されていないとして不許可になるケースが増えています。派遣先との契約が短期・更新未定で、安定的・継続的に技人国該当業務に従事することが見込まれないと判断される場合も同様です。出向・グループ会社間の異動についても、出向先の業務内容の専門性が審査対象となる点に注意が必要です。

派遣元・出向元企業がとるべき対応

派遣・出向形態での採用を検討している場合、まず申請取次行政書士への相談を申請前に必ず行うことを強くおすすめします。書類の準備段階で専門家の目を通しておくことで、不許可リスクを大幅に下げることができます。
書類面では、派遣先の業務内容を具体的に記載した業務内容説明書を用意し、派遣先企業の確認印を取得しておくことが重要です。あわせて、長期的な雇用継続を示せる書類(契約更新の実績・予定、派遣先との基本契約書など)も添付しましょう。派遣先が変わる可能性がある場合は、在留期間の更新ごとに就労実態の再審査が入ることを前提に、都度書類を整備しておく体制を整えておく必要があります。

技人国ビザの審査の変更点③|カテゴリー3・4の企業に新たに必要な書類

技人国ビザの申請では、雇用する企業の規模・信用度によって提出書類の量が異なります。2026年4月15日以降、カテゴリー3・4に該当する企業では追加書類の提出が義務化されており、中小企業や外国人採用の経験が少ない企業はとくに注意が必要です。

技人国ビザにおける会社のカテゴリーとは

技人国ビザの申請において、受入機関(雇用企業)は以下の4つのカテゴリーに分類されます。カテゴリーの数字が小さいほど信用度が高いとみなされ、提出書類が少なく審査も簡略化されます。

カテゴリー

該当する企業の目安

カテゴリー1

上場企業、保険業・銀行業を営む企業、国・地方公共団体など

カテゴリー2

前年の給与所得に係る法定調書合計表の源泉徴収税額が1,500万円以上の企業

カテゴリー3

法定調書合計表を提出できる企業(源泉徴収税額が1,500万円未満)

カテゴリー4

設立間もない企業など、前年分の法定調書を提出できない企業
中小企業・スタートアップ・外国人採用の実績が少ない企業の多くはカテゴリー3または4に該当します。自社がどのカテゴリーに当たるか、まず確認しておきましょう。

受入機関(雇用企業)に追加提出が義務化された書類

2026年4月15日以降、カテゴリー3・4の企業が技人国ビザを申請する際には、従来の書類に加えて以下の資料の提出が義務化されました。
1つ目は、日本語能力証明資料です。JLPT合格証書やBJTのスコアレポートなど、外国人本人が取得した証明書類を企業が申請書類に添付して提出します。
2つ目は、代表者に関する申告書です。これは2026年4月15日以降に新設された書類で、企業の代表者が申告する形式で提出するものです。
カテゴリー1・2の企業はこれらの追加書類の提出が原則不要ですが、審査の過程で提出を求められる場合があります。カテゴリー3・4の企業にとっては、書類の準備漏れが申請受理の遅延や不許可に直結するリスクがあるため、最新の必要書類を事前に確認したうえで申請に臨むことが重要です。

今回の改正で不許可になりやすくなったパターン

審査基準が明文化されたことで、これまで通っていた申請が通らなくなるケースが増えています。ここでは、2026年の改正後に特に不許可リスクが高まったパターンを4つ紹介します。

日本語能力の証明なしで対人業務に従事させようとする

通訳・翻訳・語学指導など、言語能力を用いる対人業務での申請にもかかわらず、JLPT N2以上またはBJT400点以上の証明書を添付していないケースです。2026年4月15日以降、カテゴリー3・4の企業では申請時点での証明資料の提出が義務化されており、書類が揃っていなければ審査の入口で指摘されます。「採用後に取得させる予定」という対応では間に合わないため、採用前の確認が不可欠です。

SES・常用型派遣での申請で勤務先が特定されていない

システムエンジニアとして申請していても、客先常駐型のSES契約の場合は勤務先や業務内容が案件ごとに変わるため、「安定的・継続的に技人国該当業務に従事することが見込まれない」と判断されるケースが増えています。申請時点で具体的な勤務先と業務内容が特定されていないと、専門性の立証が困難になります。

カテゴリー3・4なのに追加書類を把握・準備できていない

2026年4月15日以降に新設された「代表者に関する申告書」や日本語能力証明資料の提出が必要であることを把握しておらず、従来どおりの書類セットで申請してしまうケースです。書類不備は申請の受理遅延や不許可に直結します。「以前と同じ書類で申請すれば大丈夫」という思い込みは、改正後は通用しません。

まとめ

2026年の改正により、技人国ビザの審査はこれまで以上に厳しくなります。言語能力を用いる対人業務への日本語能力証明の義務化、派遣・出向形態の審査強化、カテゴリー3・4の企業への追加書類の新設と、変更点は多岐にわたります。
「うちの採用ケースは問題ないだろう」と思っていても、改正後の基準に照らすと書類不備や業務内容の説明不足で不許可になるリスクは少なくありません。とくに派遣・出向形態での採用や、日本語能力の証明が必要な業務への採用を検討している場合は、申請前に専門家へ相談すると良いでしょう。
技人国を含む就労ビザの申請に対応した行政書士は、国内最大級の行政書士検索サイト「申請Navi」で地域・分野別に探すことができます。無料相談に対応している事務所も多いため、まずは自社のケースを専門家に確認してみてください。

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この記事の執筆・監修者

氏名:遠藤 秋乃
行政書士・司法書士資格保有

経歴:

大学卒業後、不動産会社で4年・メガバンクの融資部門での勤務2年を経る。

2015年~2016年にかけて、司法書士試験・行政書士試験に合格。知識を活かしてさまざまな分野の相談に200件以上対応。

入管手続き、相続、企業法務、事業承継などさまざまな分野について最新事例の調査・研究を進め、行政書士資格保有者の立場から、読者に良質な情報をお届けしています。