特定技能の定期報告が年1回に変わった背景と施行時期
令和7年4月1日、特定技能制度の運用に関する省令・規則が改正され、定期報告の提出頻度が大きく見直されました。ここでは、そもそも定期報告とは何か、なぜ変更されたのか、いつから新しいルールが適用されるのかを整理します。※参考:特定技能制度における運用改善について(出入国在留管理庁)、特定技能外国人受入れに関する運用要領改正のポイント(出入国在留管理庁)
なお、特定技能制度では、定期報告の年1回化だけでなく、分野ごとの受入れ上限に応じた運用見直しも進んでいます。たとえば外食業分野では、受入れ見込数の上限到達が見込まれたことを受け、新規受入れ停止措置が発動されています。
<参考>特定技能「外食業」の新規受入停止とは?背景・影響・今すぐ使える代替策を徹底解説
定期報告(定期届出)とは
定期報告(定期届出)とは、特定技能外国人を受け入れている所属機関(企業)が、外国人の就労状況・生活状況・支援の実施状況を出入国在留管理庁に定期的に報告する手続きです。正式名称は「特定技能外国人の受入れ・活動・支援実施状況に関する届出」といいます。在留資格「特定技能」は、適正な雇用・支援が行われることを前提に認められる資格です。定期報告は、その運用が実態として守られているかを入管が確認するために法令で義務付けられたしくみであり、雇用管理の根幹を成すものといえます。提出を怠ったり虚偽の内容を報告したりした場合は、特定技能の在留資格の取り消しや罰則の対象となる可能性があります。
特定技能では、定期報告だけでなく、分野ごとの受入要件を満たしているかも重要です。特に自動車運送業分野では、日本の運転免許取得、特定活動55号での準備期間、協議会加入など、他分野とは異なる確認事項があります。外国人ドライバーを受け入れる企業は、自動車運送業分野で特定技能外国人を雇用するには?在留資格の要件から雇用の流れまで徹底解説もあわせて確認しておきましょう。
なぜ年1回に変更されたのか(規制改革実施計画による手続き簡素化)
改正前の定期届出は、四半期ごと(年4回)の提出が義務でした。しかし、特定技能外国人を受け入れる企業の多くは中小規模であり、専任の担当者を置く余裕がないケースも少なくありません。3か月ごとに書類を揃えて提出するという作業は、人事・総務を兼務する担当者にとって大きな事務負担となっており、制度を運用する現場から改善を求める声が上がっていました。
こうした背景を受け、政府の規制改革実施計画に基づく企業負担の軽減策として、提出頻度を年1回に見直すことが決定しました。
施行日は2025年4月1日・初回提出は2026年4月〜5月31日
新しいルールの施行日は、令和7年(2025年)4月1日です。ただし、「4月1日から年1回になった」からといって、即座に何か手続きが変わるわけではありません。移行のスケジュールを正確に把握しておくことが重要です。まず注意したいのは、旧制度での最後の四半期届出の扱いです。令和7年1月〜3月を対象期間とする四半期届出については、従来の様式を使用し、令和7年4月1日〜4月15日までに提出する必要があります。
新制度での初回定期届出は、令和7年4月1日〜令和8年3月31日を対象期間とするもので、令和8年(2026年)4月1日〜5月31日が提出期限です。以降は毎年、前年4月1日〜3月31日の実績を翌年の4月1日〜5月31日に提出するサイクルが恒久的なスケジュールとなります。
届出の種類 | 対象期間 | 提出期限 |
旧制度・最後の四半期届出 | 令和7年1月〜3月 | 令和7年4月1日〜4月15日 |
新制度・初回定期届出 | 令和7年4月1日〜令和8年3月31日 | 令和8年4月1日〜5月31日 |
新制度・2回目以降 | 毎年4月1日〜翌年3月31日 | 翌年4月1日〜5月31日 |
提出期限を1日でも過ぎると義務違反となります。年度が始まったタイミングで社内の提出管理スケジュールを設定しておきましょう。
特定技能の運用見直しによる定期報告の回数以外の変更点
令和7年4月1日の改正では、定期届出の頻度・様式だけでなく、随時届出の対象範囲や定期面談のルールも見直されました。「年1回になった」という点だけに注目していると、見落としが生じる可能性があります。定期報告のための届出様式が変更される
定期報告は回数だけでなく、届出様式も統合されました。これまで別々に提出していた「受入れ・活動状況に係る届出書」と「支援実施状況に係る届出書」が、新たに「受入れ・活動・支援実施状況に係る届出書」として一本化されます。
また、改正後は定期届出において機関の適格性も確認するしくみとなったため、令和7年3月31日以前から特定技能外国人の受入れを開始している機関については、在留諸申請の際に以下の書類を提出する必要がなくなります。
- 特定技能所属機関概要書
- 登記事項証明書
- 業務執行に関与する役員の住民票の写し
- 特定技能所属機関の役員に関する誓約書
- 労働保険料・社会保険料・国税・法人住民税の納付に係る資料
- 特定技能外国人の報酬に関する説明書
- 雇用の経緯に係る説明書
受入困難・基準不適合の随時届出の対象が拡大される
定期届出だけでなく、随時届出(何か問題が発生したときに都度提出する届出)についても、今回の改正で大きな見直しが行われています。旧制度では不正行為のみが届出対象でしたが、改正後は特定技能基準省令第2条第1項・第2項の各号の基準を満たさなくなった場合すべてが届出対象となります。具体的には次のようなケースが想定されます。
- 税金や社会保険料等の滞納が発生したとき
- 同種業務に従事していた労働者(日本人・外国人を含む)の非自発的離職を発生させたとき
- 関係法律による刑罰を受けたとき、または実習認定の取り消しを受けたとき
- 外国人への暴行・脅迫・監禁行為が発生したとき
- 外国人への手当・報酬の一部または全部を支払わない行為が発生したとき
また、1か月以上「特定技能」としての活動ができない場合の届出範囲も拡大されました。改正前は「雇用後に1か月以上活動できない事情が生じた場合」が対象でしたが、改正後は「在留資格の許可後1か月が経過しても就労を開始できない場合」も届出対象に加わります。
定期面談は引き続き3か月に1回は実施する必要がある
「定期報告が年1回になった=面談も年1回でよい」という誤解が起きやすいため、この点は特に注意が必要です。定期的な面談の実施義務は従前のとおり、3か月に1回以上です。改正によって頻度が緩和されたわけではありません。一方で今回の改正では、これまで対面のみとされていた定期面談について、一定のルールのもとでオンライン実施が可能となりました。オンライン面談を実施するには次の条件を満たす必要があります。
- 面談対象者(特定技能外国人・監督者)の同意があること
- 面談の様子を録画し、雇用契約終了日から1年以上保管すること
- 入管から録画記録の閲覧を求められた際は、これに応じること
オンライン面談の結果、待遇や業務内容に問題があることが疑われる場合や、第三者の介入が疑われる場合には、改めて対面による面談を実施する必要があります。
市区町村への書類提出が新たに義務化された
今回の改正では、定期届出や随時届出の見直しに加え、所属機関が地域と連携する義務も新設されました。特定技能基準省令の改正により、特定技能所属機関は、特定技能外国人が活動する事業所の所在地および住居地が属する市区町村に対して「協力確認書」を提出することが義務付けられます。また、1号特定技能外国人支援計画の要件にも変更があります。計画の作成・実施にあたっては、外国人が活動する事業所の所在地および住居地が属する市区町村が実施する共生社会の実現のための施策(共生施策)を確認し、これを踏まえた内容であることが求められます。
支援計画書には確認した市区町村名・確認日・確認方法を記入したうえで、在留諸申請の際に地方出入国在留管理局へ提出する必要があります。いずれも所属機関が自ら対応しなければならない義務であり、登録支援機関への委託によって省略できるものではありません。
登録支援機関に委託している場合の役割分担
特定技能外国人を受け入れている企業の多くが、支援計画の実施を登録支援機関に委託しています。委託していれば手続きをすべて任せられるわけではなく、所属機関に残る義務も少なくありません。改正後の分担関係を正確に把握しておくことが重要です。登録支援機関が担う報告の範囲と改正による変更点
今回の改正により、登録支援機関による支援実施状況の届出方法も変更されました。改正後は、支援業務の実施状況を記載した書類を年1回、所属機関を経由して連名で提出する形に統一されています。支援機関が単独で直接入管へ提出することはできません。支援計画の実施を全部委託することで、所属機関が自ら行わなければならない「1号特定技能外国人支援計画の実施困難に係る届出(新設)」は不要になります。その代わりに、登録支援機関側には新たな報告義務が課されています。
登録支援機関は、次のいずれかに該当する場合、認知した日から14日以内に、対象の特定技能外国人が所属する機関を管轄する地方出入国在留管理局へ「特異事案報告書」を直接提出しなければなりません。
- 支援の実施中に支援困難な事由が発生した場合
- 委託先の所属機関が基準不適合となったことを把握した場合
委託していても所属機関に残る義務
登録支援機関に全部委託しているからといって、所属機関の義務がなくなるわけではありません。定期届出の提出主体はあくまでも所属機関であり、支援機関から実施状況データを受け取り、連名で提出する手続きを主導する責任は所属機関にあります。随時届出(基準不適合に係る届出・受入れ困難に係る届出・雇用契約終了に係る届出など)も、所属機関が自ら提出しなければなりません。支援機関への委託を理由に省略することはできない点に注意が必要です。
前の章でも触れたとおり、市区町村への「協力確認書」の提出や、共生施策を踏まえた1号特定技能外国人支援計画の作成・提出も、支援機関への委託によって代替できる義務ではありません。提出書類の記載内容の正確性・真正性に対する最終的な責任は、常に所属機関が負います。
改正後の連携フローで抜け漏れを防ぐポイント
年1回の提出サイクルになったことで「3か月ごとに確認していたから気づけた問題」が見落とされるリスクも生まれます。支援機関任せにせず、日頃から連携体制を整えておきましょう。まず、年度が始まるタイミングで支援機関と「誰がどの書類を作成・提出するか」の役割分担を書面で確認しておきたいところです。支援機関が作成すべき書類(面談記録・相談対応記録など)については、提出期限(翌年4月1日〜5月31日)より前に所属機関側で受け取れるよう、社内の受領期限を設定しておくことをおすすめします。
随時届出が必要な事由が発生した際の連絡ルートも、あらかじめ決めておく必要があります。支援機関が特異事案を把握した際は支援機関から入管へ直接報告が行われますが、所属機関側も事由の発生を認知した時点で対応が必要です。双方が情報を共有しながら迅速に動けるよう、有事の連絡体制を確立しておきましょう。
まとめ
令和7年4月1日の改正で、特定技能の定期報告は「四半期ごと年4回」から「年1回」へと大きく変わりました。初回提出期限は令和8年(2026年)4月1日〜5月31日です。ただし、改正は頻度だけでなく、届出様式の統合・随時届出対象の拡大・面談のオンライン化・市区町村への協力確認書提出など多岐にわたります。また、登録支援機関に委託していても、定期届出の提出主体・随時届出の義務は所属機関に残ります。「年1回になったから楽になった」と油断せず、年度初めに社内の対応フローを整えておくことが重要です。
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