【2026年1月施行】行政書士法改正の内容は?各業界・利用者への影響とは

【2026年1月施行】行政書士法改正の内容は?各業界・利用者への影響とは
2025年6月に成立し2026年1月1日に施行された行政書士法改正は、制度創設以来最大規模の見直しとされています。改正の内容は「行政書士の対応範囲の拡大」と「無資格者による行政書士業務の禁止の明確化」です。
 
ここでは、改正行政書士法の変更点と、行政書士業務を避けては通れない各業界への影響を解説します。

行政書士法改正の基本

行政書士法が2026年1月1日に改正・施行されました。今回の改正は制度創設以来の大きな転換点といわれています。まず、改正の概要と、なぜこのタイミングで改正が行われたのかを整理します。

今回の改正の概要・施行のスケジュール

今回の改正法の正式名称は「行政書士法の一部を改正する法律」(令和7年法律第65号)です。2025年(令和7年)の通常国会において議員立法として提出・審議され、同年6月6日に成立、6月13日に公布されました。そして2026年(令和8年)1月1日に施行されています。
「令和7年に成立した法律なのに、施行は令和8年?」と混乱される方も多いですが、法律は成立・公布の後、準備期間を経て施行されるのが一般的です。今回は公布から約半年の周知期間が設けられました。
※参考:行政書士制度(総務省)

行政書士法改正の目的・背景

今回の改正が行われた目的は、大きく2つ挙げられます。手続きのデジタル化を踏まえた行政書士の活動範囲拡大と、無資格者による行政書士業務の排除です。
【改正の背景1】デジタル化の進展
……近年、行政手続きのオンライン化・デジタル化が急速に進んでいます。補助金申請や許認可申請、在留資格の手続きなど、以前は窓口で行っていた手続きがオンライン上で完結できるようになり、書類作成の需要はむしろ増加しています。こうした流れの中で、行政書士という専門家の果たす役割はより重要になっており、制度として専門職の地位を明確にする必要性が高まっていました。
【改正の背景2】無資格者による「闇コンサル」の横行
……本来、他人の依頼を受けて報酬を得て官公署への提出書類を作成できるのは、行政書士(または弁護士等)に限られています。ところが実務の現場では、行政書士資格を持たないコンサルタントや登録支援機関などが、「コンサルタント料」「事務手数料」「会費」「サポートパック」といった名目に変えることで、実質的な書類作成代行を繰り返すケースが後を絶ちませんでした。
※参考:「行政書士法の一部を改正する法律」の成立について(会長声明)

改正行政書士法の5つの変更点

今回の改正では、行政書士の「使命」と「職責」の明文化から、無資格者への規制強化まで、大きく5つの変更が加えられました。それぞれの内容を条文ごとに確認していきましょう。
改正ポイント条文概要
①使命の明記第1条「目的」→「使命」へ変更、社会的役割の明確化
②職責の新設・デジタル対応第1条の2品位保持・デジタル対応努力義務の新設
③特定行政書士の業務拡大第1条の4不服申立て代理の範囲を大幅拡大
④業務制限の明確化第19条「いかなる名目によるかを問わず」の文言追加
⑤両罰規定の強化第23条の3業務制限違反・名称使用制限違反にも両罰規定を拡大

【改正点①】「行政書士の使命」の明記(第1条)

改正前の第1条は「行政書士法の目的」という位置づけで、法律全体の趣旨を定めた規定でした。改正後は「行政書士の使命」という表現に改められ、行政書士という職業そのものが担う社会的役割が正面から明示されました。
弁護士・司法書士・社会保険労務士などほかの士業の法律には、以前から「使命」規定が設けられています。行政書士法にはそれがなく、他士業との比較で専門職としての位置づけが弱いと指摘されてきた経緯があります。今回の改正で初めて「使命」として明文化されたことは、行政書士が単なる書類作成業務の担い手ではなく、国民の権利利益の実現に寄与する専門職であることを法律レベルで宣言した点で、象徴的な意義を持ちます。

【改正点②】「職責」の新設とデジタル社会への対応(第1条の2)

今回の改正で新設された第1条の2は、「行政書士の職責」を定める規定です。行政書士は常に品位を保持し、業務に関する法令と実務に精通したうえで、公正かつ誠実に業務を行わなければならないとされています。
とくに注目すべきは、デジタル社会への対応が士業の法律として初めて努力義務として盛り込まれた点です。具体的には、情報通信技術の活用などを通じて国民の利便向上と業務の改善・進歩を図るよう努めることが求められます。行政手続きのデジタル化が加速する中、行政書士自身も積極的にデジタル対応を進めることへの期待が、立法上の要請として示された形です。

【改正点③】特定行政書士の業務範囲の拡大(第1条の4)

特定行政書士とは、日本行政書士会連合会が実施する研修を修了した行政書士で、許認可申請後に行政庁から不利益処分を受けた場合の「審査請求・再審査請求」などの不服申立て手続を代理できる資格です。
改正前は、特定行政書士が代理できるのは「行政書士が作成した書類」に関する不服申立てに限られていました。つまり、依頼者が自分で申請して不許可になったケースでは、たとえ特定行政書士であっても不服申立ての代理ができませんでした。今回の改正でこの要件が緩和され、「行政書士が作成することができる書類」に関するものであれば、実際に行政書士が作成したかどうかを問わず代理が可能になっています。
ケース改正前改正後
行政書士が申請→拒否代理可代理可
本人が申請→拒否代理不可代理可
第三者が無償で申請→拒否代理不可代理可
この変更により、本人申請や家族による申請が不許可になった場面でも、特定行政書士が後から介入して不服申立てを代理できるようになりました。申請が通らなかった後の「権利救済」の選択肢が広がった点で、依頼者にとっても実務上のメリットが大きい改正といえます。

【改正点④】業務の制限規定の明確化(第19条)

今回の改正の中でも、実務への影響が最も大きいのがこの第19条の改正です。
改正前の条文では、
「行政書士でない者は、業として書類を作成する行為を行うことができない」
という規定でした。
改正後は、
「他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として書類を作成することができない」
と改められています。
「いかなる名目によるかを問わず」という文言の追加は、コンサルタント料・事務手数料などの名目による無資格者の業務を改めて禁止する意図があります。今回の改正により、名目が何であれ、実態として書類作成の対価が含まれていると判断されれば、無資格者による行為は一律に違法となることが条文上で明確化されています。

【改正点⑤】両罰規定の整備・強化(第23条の3)

両罰規定とは、従業員などが違反行為を行った場合に、行為者個人だけでなく、その者が所属する法人や団体にも罰則を科すしくみです。
改正前は「調査記録簿の記載等」に関する違反のみに両罰規定が適用されていましたが、改正後は適用範囲が大幅に拡大されました。
新たに両罰規定の対象となった違反行為は次のとおりです。
  • 業務の制限違反(無資格者による書類作成)
  • 名称の使用制限違反
  • 行政書士法人の帳簿備え付け・保存義務違反
  • 都道府県知事による立ち入り検査の拒否・妨害
とくに注目したいのは、業務の制限違反への両罰規定の適用です。改正後は、会社や団体の従業員が業務として無資格の書類作成を行った場合、その会社・団体にも100万円以下の罰金が科されることになります。

行政書士法改正による影響(自動車/ビザ/補助金)

今回の改正は、行政書士だけでなく、自動車業界・外国人雇用・補助金申請など幅広い分野に影響を与えます。自社の業務が違法となっていないか、改正後の実務上の注意点を業種・立場別に確認しましょう。

ディーラー・自動車整備工場が受ける影響

自動車の新規登録や名義変更、車庫証明の申請書類作成は、行政書士の独占業務に該当します。これまで多くのディーラーや整備工場では、販売・整備業務の一環として登録手続きを社内で行い、その費用を「登録代行料」「手続き手数料」などの名目で顧客から徴収してきた慣行がありました。
今回の改正により、こうした名目を変えた有償代行は明確な違反となります。今後の自動車業界は、行政書士と各社適切に連携をとり、顧客が書類作成業務を希望する場合は連携先の有資格者に繋げなくてはなりません。
一方で、OSS(自動車保有関係手続のワンストップサービス)を利用した手続きについては、行政書士法施行規則第20条に一定の例外規定が設けられています。この規定では、業界団体に所属する事業者がOSSを通じて手続きを行う場合に限り、例外的な取り扱いが認められています。もっとも、例外の適用には要件があり、要件を満たさない場合は有償での登録代行は行政書士法違反です。

外国人雇用企業・特定技能外国人への影響

外国人や、外国人を雇用する企業による在留資格などの入管関係の手続きは、行政書士(または弁護士)の独占業務です。今回の改正により、登録支援機関(外国人受入れを支援する機関)や企業の人事・総務担当者が「サポート料」「支援委託費」といった名目で書類を作成し、報酬を受け取る行為が明確に違法とされました。
注意が必要なのは、外国人を雇用する会社が、グループ内の別の会社を書類作成委託先のベンダーとするケースです。たとえ同じグループ企業であっても、別法人格の従業員に関する書類を作成し、その対価を受け取る場合は「他人の依頼を受けて報酬を得て」行う行為に該当するため、非行政書士行為となります。
なお、行政書士に在留資格などの手続きを依頼するケースでは、今回の改正で特定行政書士の業務範囲が拡大されたことにより、不許可となった場合の審査請求などの不服申立て手続も依頼できるようになっています。外国人招へい・雇用に関しては、これまでより専門家によるサポートを求めやすくなったといえるでしょう。

補助金申請・経営改善コンサルタントへの影響

補助金申請書類の作成代行は、行政書士の独占業務に含まれます。総務省は2022年の通知で「補助金申請は行政書士の独占業務」と明示しており、今回の改正ではその内容が立法によってさらに強化されました。
経営支援を謳う業者による「コンサルタント料」「成功報酬」「支援パッケージ料金」などの名目で補助金申請書類を作成・提出する行為は、改正後は条文上も明確な違反です。経営コンサルタントや中小企業診断士、税理士などが業務の一環として書類作成を担っている場合も、各士業の業務範囲外となる可能性があるため、慎重な確認が必要です。
補助金申請支援を事業として行う場合は、行政書士との提携・業務委託契約の締結が必須となります。重要なのは「コンサルティング業務」と「書類作成業務」を明確に切り分け、書類作成の部分を行政書士に委託する体制を整えましょう。

無資格業者に行政書士の業務を依頼した場合のリスク

無資格業者による行政書士業務は、その内容がずさんであり、依頼した手続きが失敗するケースが散見されます。適切に書類作成や申請代行ができるとしても、無資格であることが発覚すると、手続きや書類の有効性が損なわれ、申請の結果が撤回される可能性があります。
入管手続きや自動車登録、許認可の申請、そのほかの官公署での手続きを行政書士に依頼するリスクとして、以下のようなものが考えられます。
  • 申請書類の不備・誤りのリスクが高まる
  • 補助金採択後に無資格業者の関与が判明した場合、採択を取り消される
  • 法改正後に違法業者への摘発が強化され、依頼者自身も不利益を受ける
行政書士や行政書士法人に正式に依頼して手続きを進めている場合、今回の改正による手続き上の変更は基本的にありません。注意したいのは「申請をサポートする」「オンライン申請を代行する」などといった謳い文句のサービスであり、依頼先が行政書士資格を持っているかどうかを確認しなければなりません。

まとめ

行政書士法改正(2026年1月施行)は、行政書士の使命・職責の明文化、特定行政書士の業務範囲拡大、無資格者による書類作成の規制強化、そして両罰規定の拡大という、制度の根幹に関わる大きな変更です。
自動車業界や外国人雇用、補助金申請など幅広い分野で実務上の影響が生じており、これまでのグレーゾーンだった慣行が改正後は明確な違法行為となっています。自社の業務フローや委託先の適法性を改めて確認し、必要に応じて行政書士との連携体制を整えましょう。
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この記事の執筆・監修者

氏名:遠藤 秋乃
行政書士・司法書士資格保有

経歴:

大学卒業後、不動産会社で4年・メガバンクの融資部門での勤務2年を経る。

2015年~2016年にかけて、司法書士試験・行政書士試験に合格。知識を活かしてさまざまな分野の相談に200件以上対応。

入管手続き、相続、企業法務、事業承継などさまざまな分野について最新事例の調査・研究を進め、行政書士資格保有者の立場から、読者に良質な情報をお届けしています。