現行と何が違う?永住許可ガイドライン案の変更点
永住許可の要件は、入管法第22条第2項が定める下記3つの柱から成り立っています。- 素行善良要件
- 独立生計要件
- 国益要件
改定案ではこの基本的な枠組み自体は維持されており、変更の中心は「独立生計要件」と「国益要件」の判断基準にあり、基本的には大幅な厳格化となります。
最初に、現行と改定案の内容を表で整理してみましょう。
| 要件 | 現行の内容 | 改定案での変更点 |
| 素行善良要件 | 法律遵守、社会的に非難されない生活 | 変更なし |
| 独立生計要件 | 資産・技能から見て安定した生活が見込まれること(抽象的な表現) | 収入基準(世帯年収が日本人世帯の平均を上回る水準)と年金基準(受給見込額が厚生年金30年加入相当)を新設 |
| 国益要件 | 在留期間、公租公課の支払い、刑罰法令違反の有無など | 日本語能力(B1相当)、制度・ルールへの理解、学齢期の子の就学などの考慮要素を追加 |
※以下、参考:永住許可に関するガイドライン改定案(出入国在留管理庁)、永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂分)
独立生計要件①:日本人世帯の平均収入以上が要求される
永住許可ガイドラインの改定案でもっとも大きく変わったのが、独立生計要件に含まれる「収入に関する基準」です。これまでの基準は、申請者が有する資産や技能から見て将来的に安定した生活を送れるかどうかという抽象的な言い回しにとどまっていました。改定案では、申請時点の世帯年収が、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準に達しているかを考慮要素とすることが明記されました。
ここでいう世帯とは、住居及び家計を共にしている人の集まりを指しており、申請者本人の年収に加え、同一生計世帯を構成する配偶者(資格外活動による収入を除く)などの年収を合算した金額が世帯年収として扱われます。申請者が扶養する親族については、たとえ海外に住んでいて同居していなくても世帯人数としてカウントされ、世帯人数が5人以上になる場合は生活費等の増加分が年収水準に上乗せされるしくみです。
海外に住む家族の扶養状況を正確に把握していないと、想定より高い年収水準を求められる可能性があるため、この点は見落とされやすいポイントといえるでしょう。
独立生計要件②:厚生年金加入歴30年以上の年金受給見込額が必要になる
独立生計要件には、今回新たに「年金に関する基準」も加わりました。改定案では、申請時点までの年金加入状況や申請時点の年収から推計される将来の受給見込額(過去に受給した脱退一時金の加入期間を除く)が、年収水準を満たす収入で30年間厚生年金に加入し続けた場合に見込まれる受給水準に達しているかどうかを考慮要素としています。
なお、配偶者がいる場合は、申請者と配偶者の受給見込額を合算したうえで判断されます。
救済として、上記のしくみにおいて受給見込額が水準に届かない場合は、申請時点で不足分を補えるだけの金融資産、いわゆる「補填資産」を有していれば、要件を満たしているものとして扱ってもらえます。ここで言う補填資産の基準額は申請者の年齢によって変わり、年金の受給開始年齢に近い人ほど基準額が高くなる一方、若い人であれば基準額は低く設定される考え方が示されています。
日本語能力・制度理解・子の就学などの要件が厳格化される
国益要件では、これまでの公租公課の支払いや刑罰法令違反の有無といった項目に加え、新たに- 日本語能力
- 我が国の制度・ルールへの理解
- 学齢期の子の就学
上記3つの考慮要素が明記されました。
日本語能力の要件の変更点
日本語能力については、文化審議会国語分科会が示す日本語教育の参照枠におけるB1相当レベル以上の能力を有しているかが考慮要素となります。B1レベルは日本語能力試験でいうとN3からN2の間に相当するとされ、日常生活で必要なやり取りが概ねできる程度の力が想定されるレベルです。なお、高度人材外国人やその家族、日本の小中学校教育を通算6年以上受けた人、永住者の子などについては、本人にB1相当の日本語能力を一律に求める必要性が乏しいとされ、この考慮要素の対象から外れます。
我が国の制度・ルールへの理解の変更点
我が国の制度・ルールへの理解については、出入国在留管理庁長官が指定する方法により、生活・就労ガイドブックに記載されている内容を中心に理解度が確認され、その水準が一定に達しているかが判断材料になります。単に日本語ができるかどうかではなく、税金や社会保険、届出義務といった生活上のルールをどれだけ理解しているかが問われる点が特徴です。
学齢期の子の就学に関する変更点
学齢期の子の就学についても新たに考慮要素に加わりました。義務教育の年齢にある子を養育している申請者については、その子が小学校または中学校に通学していることが求められ、申請者自身が学齢期にある場合は本人の通学状況が確認の対象になります。配偶者等の原則10年在留の特例が伸張される
永住許可には、素行善良要件と国益要件を満たしていれば、原則10年の在留期間を待たずに永住を認める特例が設けられており、日本人・永住者・特別永住者の配偶者や実子などがその対象となっています。上記特例は、婚姻生活の実体や在留の継続性を一定期間確認したうえで永住を認めるという考え方に基づいていますが、改定案ではこの確認期間そのものが下の表のように伸びる方向で見直されることになりました。
| 項目 | 現行 | 改定案 |
| 婚姻期間 | 3年以上 | 5年以上 |
| 本邦での継続在留期間 | 1年以上 | 3年以上 |
| 実子等の継続在留期間 | 1年以上 | 3年以上 |
新しい永住許可ガイドラインの適用時期は?
改定案の適用時期は、すべての項目が一斉に始まるわけではありません。これまで解説した変更点は、- 収入に関する要件の変更:2026年(令和8年)10月から適用
- 上記以外の変更:2027年(令和9年)4月から適用
以上のように、時期をずらして運用が始まる予定です。
なお、新しいガイドラインが適用される時期付近の永住許可申請については、次のような扱いを受けます。
■新しいガイドラインが適用される前に許可・不許可の処分が出ている場合
……旧基準が適用される
■新しいガイドラインの適用日前6か月以内に申請している場合
……許可・不許可の処分が出ないまま適用日を迎えた場合、新基準が適用される(処分が出ていれば旧基準が適用される)
実際のところ、2026年(令和8年)4月以降に申請された永住許可申請のほとんどは、少なくとも新しい収入要件が適用されていると考えられます。申請の標準処理期間は4か月から6か月とされ、上記申請について10月時点で処分が下ることは少ないと見込まれるためです。
また、旧基準の国益要件で審査を希望する場合には、2026年(令和8年)9月中に永住許可申請しなくてはなりません。
ケース別に見る永住許可ガイドライン改定の影響
改定案は、誰にとっても一律に同じ影響が出るわけではありません。就労ビザから永住を目指す方、配偶者として永住を目指す夫婦、外国人従業員を抱える企業とでは、注目すべきポイントが異なります。ここでは代表的な3つの立場に分けて、改定案が及ぼす影響を整理します。就労ビザから永住を目指す人への影響
技術・人文知識・国際業務などの就労ビザで働きながら永住を目指してきた人にとって、今回の改定案で気になるのは収入・年収基準の引き上げでしょう。高度な技術職・専門職で長期間勤続しない限り、永住許可にはたどり着けないと解釈せざるを得ません。外国人パートナーの永住を目指す夫婦への影響
日本人や永住者と結婚し、配偶者として永住許可を目指している夫婦にとっては、原則10年在留の特例で認められる期間が伸長され、在留期間の更新をしなくてもいい生活が遠のきます。もっとも、2人とも就労ビザで活動する共働き夫婦にとっては、有利な点もあります。新しく導入される年金要件において、夫婦の受給見込額を合算して判断してもらえるためです。
なお、配偶者が専業主婦・主夫である夫婦は、第3号被保険者の届出をきちんと行ってきたかどうかチェックしなければなりません。
外国人従業員・役員の永住を支援する企業への影響
外国人従業員や役員を受け入れる企業にとっても、今回の改定案は無関係ではありません。従業員が将来的に永住許可を目指す場合、ガイドライン改正について情報提供を行い、場合によっては早期申請の支援が必要です。永住許可は、住宅ローン契約の条件になるなど、本人の生活基盤を大きく左右する要素です。取得の可否や手続きに関する情報提供や支援がないと、離職の動機になることも考えられます。
とはいえ、永住許可申請は営業上必要になるものではないため、社内担当者に知識がまったくない場合が多く見られます。従業員への案内を考えるときは、行政書士と事前に打ち合わせた上で行うと良いでしょう。
まとめ
永住許可に関するガイドライン改定案は、独立生計要件における収入・年金基準の新設、国益要件における日本語能力・制度理解・子の就学の追加、そして配偶者等の在留特例の伸長という、大きく3つの方向で審査の枠組みを見直すものです。適用時期は2026年(令和8年)10月と予定されていますが、4月以降の申請に対しては、少なくとも変更後の収入基準が適用される可能性大と考えられます。自分や家族、従業員のケースが永住許可の基準に合致するかどうか見極めるのは簡単ではありません。国内最大級の行政書士検索サイト「申請Navi」では、外国人の在留資格・ビザ手続きに対応できる行政書士を、地域や得意分野から探すことができます。ガイドラインの改定によって自分の永住許可申請がどう変わるのか気になる方は、無料相談を行っている事務所を探してみてはいかがでしょうか。