在留資格「企業内転勤」の審査は厳格化された?
企業内転勤ビザの審査が厳格化されたとの情報があるものの、正確には審査基準そのものが変わったわけではありません。2026年(令和8年)4月1日から見直されたのは、申請時に提出する書類の運用であり、基準を変えずに審査を慎重に行う変更となっています。今回の変更の対象となる企業は?
今回の運用見直しの対象となるのは、所属機関のカテゴリーが3または4に該当する企業です。カテゴリー3は、前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出している団体や個人事業主のうち、カテゴリー2に当てはまらないものを指します。
カテゴリー4は、カテゴリー1から3のいずれにも該当しない団体や個人事業主が該当し、創業して間もない企業や、法定調書合計表の提出実績がまだない企業などが含まれます。
カテゴリー1・2にあたる上場企業や一定の届出を済ませた企業などは、今回の変更の対象外です。
※参考:在留資格「企業内転勤」(出入国在留管理庁)
企業内転勤ビザ運用見直しの背景
企業内転勤の在留資格を持つ外国人の数は、2025年末時点で約19,000人にのぼり、増加傾向が続いています。海外拠点を持つ企業が人材を国境を越えて異動させる動きが広がる一方で、実態の乏しいペーパーカンパニーのような海外拠点や、転勤前の勤務実態が十分に確認できないケースへの対応を強化する必要性が指摘されてきました。出入国在留管理庁は、令和8年2月24日付で行政書士会などの関係団体に対して今回の変更内容を事前に周知しており、その約1か月後にあたる4月1日から新しい運用を開始しています。事前の周知期間が設けられていたことからも、今回の見直しが突発的な審査強化というよりも、制度の適正な運用を目的とした計画的な変更であることがうかがえます。
在留資格「企業内転勤」で追加された3種類の提出書類
令和8年4月1日から追加された提出書類は、下記のように大きく3種類に整理できます。- 転勤前の事業所の実在を証明するもの
- 転勤前後の事業所の関係を証明するもの
- 転勤前の勤務実態を示すもの
※以下、参考:在留資格「企業内転勤」の提出書類の変更について(令和8年4月1日運用開始)
転勤前の事業所の実在を証明するもの
まず求められるのが、転勤前に勤務していた海外の事業所が実際に存在することを示す資料です。これまでは会社側が作成した在職証明書などで説明が済んでいたケースもありましたが、今後は公的機関が発行した資料による裏付けが必要になります。- 公的機関から発行された法人登記に関する資料
- 納税状況、取引実績、船荷証券、輸出入許可書、広告等(いずれかで実在を証明)
転勤前後の事業所の関係を証明するもの
次に必要になるのが、転勤前の海外事業所と転勤後の日本側の受け入れ機関との間にどのような関係があるかを示す資料です。この点は、転勤の形態によって求められる資料の内容が異なります。■同一法人内の転勤の場合
……外国法人の支店の登記事項証明書など、当該法人が日本に事業所を有することを明らかにする資料
■日本法人への出向の場合
……出向元の外国法人との出資関係を明らかにする資料
■日本に事務所を有する外国法人への出向の場合
……当該外国法人の支店の登記事項証明書など、当該外国法人が日本に事務所を有することを明らかにする資料+出向元の法人との資本関係を明らかにする資料
転勤前の勤務実態を示すもの
最後に求められるのが、申請人本人が転勤前の事業所で実際に勤務していたことを示す資料です。これまで会社側が作成した経歴書等で足りていた部分についても、外国の公的機関が発行した文書での裏付けが必要になった点が今回の見直しの特徴といえます。- 関連する業務に従事した機関及び内容並びに期間を明示した履歴書
- 転勤直前1年間に従事した業務内容、地位、報酬を明示した外国の機関の文書(社会保険加入証明、戸口簿等)
- 日本側受入機関の登記事項証明書、日本側事業所の実在を示す資料(不動産登記簿、事務所の写真・平面図等)
海外支社・拠点から外国人材を招聘するときの注意点
企業内転勤に限らず、海外拠点から人材を日本へ呼び入れる際には、他の在留資格や入国制度の動向も併せて確認しておく必要があります。特に、役員クラスの人材を招聘する場合と、短期の出張者を日本へ呼ぶ場合とでは、企業内転勤とは別の制度が関わってくるため、あらかじめ整理しておくと安心です。役員招聘は審査厳格化の影響を受ける(経営管理ビザの場合)
海外拠点の役員クラスを日本法人の役員として招聘する場合、企業内転勤ではなく「経営・管理」ビザが適用されることがあります。経営・管理ビザは2025年10月16日に要件が厳格化され、資本金等の要件が500万円から3,000万円に引き上げられたほか、常勤職員の雇用や一定の日本語能力、専門家による事業計画書の確認などが新たに求められるようになりました。海外拠点の社員を単に業務従事者として転勤させる場合は企業内転勤の対象となりますが、役員として日本法人の経営に関与させる場合は経営・管理ビザの対象となるため、招聘する人材の立場によって適用される在留資格が異なる点に注意が必要です。詳細はこちらの記事で解説しています→
経営管理ビザの新規申請が96%減|厳格化の全貌と今後の対応を解説
JESTA(日本版ESTA)導入で入国方法が変わる
もう一つ確認しておきたいのが、JESTA(日本版ESTA)と呼ばれる電子渡航認証制度です。これは、査証(ビザ)が免除されている国・地域からの外国人を対象に、訪日前にオンラインで渡航認証を受けることを義務付ける制度で、2026年3月10日に関連法案が閣議決定されました。政府は2028年度中の導入を目指しているとされており、現時点ではまだ運用が開始されていません。JESTAは企業内転勤の在留資格そのものとは別の制度ですが、ビザ免除国から短期出張者を日本へ呼ぶ場合の入国手続きに影響するため、海外拠点との人材往来全体を管理する立場の担当者としては、導入時期や対象範囲を併せて把握しておくとよいでしょう。詳細はこちらの記事で紹介しています→
【2026年改正】JESTAとは?日本版ESTAの対象者・導入時期・企業対応を解説
まとめ
在留資格「企業内転勤」における今回の変更は、審査基準そのものが厳しくなったわけではなく、提出書類の運用が見直されたというものです。対象となるのはカテゴリー3・4に該当する企業であり、転勤前の事業所の実在、転勤前後の事業所の関係、そして転勤前の勤務実態という3つの観点から、これまで会社側の書面だけで説明していた部分を公的機関発行の資料で裏付ける必要が出てきました。
準備すべき書類が多岐にわたるからこそ、自社での対応に不安を感じた際は、企業内転勤や外国人雇用の実務に詳しい行政書士へ早めに相談することをおすすめします。国内最大級の行政書士検索サイト「申請Navi」では、分野・地域から自社の状況に合った行政書士を検索できます。ぜひご活用ください。