【2026年4月閣議決定】成年後見制度は「縛られないしくみ」になる!制度見直しのポイントをわかりやすく解説

【2026年4月閣議決定】成年後見制度は「縛られないしくみ」になる!制度見直しのポイントをわかりやすく解説

「成年後見制度を使いたいけれど、一度始めたら一生やめられないと聞いて二の足を踏んでいる」——そんな不安を抱える方に朗報です。2026年4月、成年後見制度を大きく変える民法改正案が閣議決定されました。後見に終わりがない・自由に決められないといった問題を改善する、26年ぶりの抜本的な制度改革です。

ここでは、成年後見制度の何がどう変わるのか・いつから施行されるのか・自分や家族の手続きにどう影響するかわかります。

この記事のポイント

  • 成年後見制度は、2026年4月に閣議決定された民法改正案により、大きく見直される方向です。
  • 主な変更点は、後見・保佐・補助の3類型を「補助」に一本化し、本人に必要な支援だけを個別に設計できるようにすることです。
  • 現行制度で不満が多かった「一度始めたらやめにくい」という問題も、必要がなくなった場合に終了しやすくする方向で見直されます。
  • 不動産売却や遺産分割など、一時的な目的のために制度を使いやすくなる可能性があります。
  • ただし、改正法はまだ施行前のため、今すぐ必要な手続きがある場合は、法改正を待たず専門家に相談することが大切です。
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成年後見制度とは?現行制度の何が問題なのか

成年後見制度は、認知症や障がいなどによって判断能力が低下した方の生活を法的に支える仕組みです。まずは制度の基本と、長年指摘されてきた課題を整理します。
認知症・知的障がい・精神障がいなどにより判断能力が低下した方は、預金の管理や不動産の売却、介護施設との契約といった法律行為を自分で行うことが難しくなります。成年後見制度は、そのような方のために家庭裁判所や本人が選んだ「後見人等」がこれらの手続きを代わりに行ったり、本人が行う行為に同意・取消しをしたりすることで、本人の財産と生活を守る制度です。
制度は大きく「法定後見」と「任意後見」の2種類に分かれます。法定後見は家庭裁判所が後見人を選任する形で、本人の判断能力がすでに低下している場合に利用します。任意後見は、本人が判断能力のあるうちに将来の支援者を自分で選んで契約しておく形です。
法定後見にはさらに、判断能力の程度に応じた3つの類型があります。
類型対象となる状態後見人等の権限
後見判断能力を欠く常況財産管理全般の包括的な代理権
保佐判断能力が著しく不十分重要行為への同意権・取消権
補助判断能力が不十分特定行為への同意権・代理権(個別付与)
現在は「後見」の利用が最も多い状況ですが、後見人に財産管理全般の包括的な代理権が付与される分、本人が自分で決められる場面が極端に少なくなるという問題が以前から指摘されてきました。現行制度には主に次の3つの課題があります。

一度始めたら一生やめられない|終身制の壁

……後見が始まると、本人の判断能力が回復しない限り、亡くなるまで制度が続きます。「不動産を1件売却したい」「遺産分割協議を成立させたい」という一時的な目的が達成された後も、後見は継続します。専門家が後見人に就いた場合、月2〜6万円程度の報酬が生涯にわたって本人の財産から支払われ続けます。こうした負担感から「使いたいけれど使えない」と申立てをためらう家族が多く、制度の利用件数が伸び悩む一因ともなっていました。

必要以上に生活のすべてを管理される|包括権限の問題

……「後見」類型では後見人に広範な代理権が一律に付与されるため、「この手続きだけ手伝ってほしい」というニーズに対応できない画一的な設計になっています。本人がまだ自分で判断できる部分まで後見人に委ねなければならない状況は、国連障害者権利条約の審査においても「権利擁護のはずが権利制限になっている」として問題視されてきました。

本人の意思が尊重されにくい|自己決定権の軽視

……後見人は本人の同意なく法律行為を代理できるケースがあり、本人の意思が後回しになりがちな設計です。本人が望まない施設への入所や財産処分が行われる事例も報告されており、「保護しようとすれば自由を奪うことになる」という制度の矛盾が長年指摘されてきました。
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2026年4月に閣議決定された成年後見制度見直しのポイント

2026年1月27日、法制審議会が民法改正の要綱案を決定しました。同年4月3日には民法改正案が閣議決定され、国会へ提出されています。今回の改正の核心は、「後見・保佐・補助」という3つの類型をひとつに統合し、本人の状況に合わせて支援内容を柔軟に設計できる仕組みへと転換することです。

オーダーメイド型の「補助」に一本化される

現在の成年後見制度では、判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3類型に分類され、それぞれ異なる権限が後見人等に付与されています。今回の改正では、この3類型を廃止し、もっとも柔軟な「補助」に一本化されます。
改正後は、補助人が持つ代理権や同意権の範囲を、本人の状況とニーズに合わせて個別に定める「オーダーメイド型」が基本となります。たとえば
● 特定の不動産売却に関する契約の締結だけ代理してほしい
● 遺産分割協議に関する合意がしたい
● 介護施設との入所契約の手続きだけ同意してほしい
とこのように、必要な支援の範囲を具体的に指定して申し立てることができるようになるのです。
注意が必要なのは、この改正が「支援の水準を下げる」ことを意図したものではないという点です。現行の「後見」類型では包括的な代理権が一律に付与されるため、本人の意思や残存能力が反映されにくい構造になっていました。改正後は、本人がまだ自分で判断できる部分については本人の自由を守りつつ、本当に支援が必要な部分だけを補助人が担う設計になります。
また、本人以外の者が補助開始を申し立てる場合には、本人の同意が必要とされており(本人が意思表示できない場合を除く)、本人の意思尊重が申立ての要件として明確化されています。

重要な財産行為以外は本人の意思を尊重してもらえる

補助に一本化された後の制度には、2つのパターンがあります。通常の「補助」は代理権や同意権を個別に設定する形ですが、判断能力がとくに低下している人には「特定補助人」というしくみが用意されます。
特定補助人が付されるのは「精神上の理由により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」、つまり現行の「後見」類型に相当する程度の状態にある人です。特定補助人が付されると、本人が行った次の11項目の財産行為については、本人の同意なく取り消すことができます。
● 預金・貯金の払い戻しの請求
● 元本の領収・利用
● 借財または保証
● 居住用建物の大修繕に関する請負契約などの重要な役務提供契約
● 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為
● 訴訟行為
● 贈与、和解、仲裁合意
● 相続の承認・放棄または遺産分割
● 贈与の申込みの拒絶、遺贈の放棄、負担付贈与の申込みの承諾、負担付遺贈の承認
● 民法第602条に定める期間を超える賃貸借
● 上記各行為を制限行為能力者の法定代理人として行うこと
ポイントは、日用品の購入など日常生活に関する行為にはこの取消権が及ばないことです。悪質な訪問販売への対応や高額の財産処分などから本人を守りつつ、日々の生活における意思決定には介入しない設計になっています。
また、特定補助人と「補助人の同意を要する審判」は同時に存在できないしくみになっており、どちらか一方が付された場合はもう一方の審判が取り消されます。
なお、特定補助人を付する審判には精神鑑定が必要とされており(医師2名以上の意見を聴いて明らかに不要と認められる場合を除く)、要件は厳格に定められています。一部では「本人の権利を過剰に制約するおそれがある」との指摘もあり、実際の運用のあり方が注目されます。

必要がなくなれば後見を終えられるようになる

現行の成年後見制度の最大の問題は、制度のしくみ上、一度始めたら最後、生活上必要ないにもかかわらず後見人(保佐人・補助人)に一定の権利が与えられ続けることでした。改正後は「補助が不要になった」と認められる場合に、家庭裁判所の判断で終えることができます。
具体的には、補助人の代理権・同意権・特定補助に関するすべての審判が取り消された場合、家庭裁判所は補助開始の審判を取り消さなければならないとされています。これが事実上の「制度の終了」を意味します。つまり、特定の不動産売却が完了した、遺産分割協議が成立したなど、当初の目的が達成されて補助の必要がなくなったと認められれば、各審判を取り消す申立てができ、最終的に補助開始の審判も取り消されることになります。

補助人の解任(新しい補助人へのバトンタッチ)が容易になる

成年後見制度の見直しでは、補助人の解任事由にも変更があります。現行制度では不正行為や著しい任務違反がなければ解任が難しい構造でしたが、改正後は「補助開始の審判を受けた者の利益のため特に必要があるとき」という新たな事由が追加されます。
これにより、専門家後見人から親族後見人へバトンタッチするいわゆる「リレー型後見」が、法律上も実現しやすくなります。親族による支援の引き継ぎが容易になれば、本人の望むかたちでのサポートも実現しやすくなるでしょう。
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新しい成年後見制度は2028年開始の見込み

民法改正案は2026年4月3日に閣議決定され、国会へ提出されました。成立後は一定の準備期間を経て施行される見通しで、現時点では2028年夏〜秋ごろの施行が想定されています。
時期内容
2026年1月27日法制審議会が民法改正要綱案を決定
2026年4月3日民法改正案が閣議決定・国会提出
2026年通常〜臨時国会国会審議・成立見込み
2028年夏〜秋ごろ(見込み)施行(公布から一定の準備期間経過後)

【よくある場面で確認】成年後見制度の見直しで私たちの生活はどう変わるのか

制度が変わるといっても、「自分の状況にはどう関係するのか」がわからなければ、なかなか行動に移せないものです。ここでは、実際によくある3つの場面をもとに、改正によって何がどう変わるかを具体的に確認します。

認知症の親の不動産を売却したいとき

認知症などで判断能力が低下した人が所有する不動産を売却するには、現行制度では後見人の選任が必要です。しかし現行制度では、売却が無事に完了した後も後見は終わらず、専門家が後見人に就いている場合は月2〜6万円程度の報酬が本人の死亡まで発生し続けます。「不動産を一件売りたいだけなのに」という思いから、申立てをためらう家族も少なくありません。
改正後は、不動産売却に必要な代理権だけを補助人に付与する形で申立てができます。売却が完了して代理権の必要がなくなれば、「必要がなくなった」として各審判の取消しを申し立てることができ、すべての審判が取り消されると補助開始の審判も取り消されます。「終わることを前提にした計画が立てられる」ようになることで、制度利用への心理的なハードルは大きく下がると期待されます。

相続人に認知症患者がいて遺産分割協議が進まないとき

相続人の中に判断能力が不十分な方がいる場合、その方を含む遺産分割協議は法律上有効に成立しません。遺産分割を進めるためには後見人(改正後は補助人)の選任が必要ですが、「一度始めたら一生続く」という現行制度のイメージから、申立てを避けて相続手続きが何年も止まってしまうケースがあります。
改正後は、遺産分割協議に必要な代理権だけを補助人に付与する形で申立てを行い、協議が成立した後に「必要がなくなった」として取消しを申し立てるという流れが可能になります。相続手続きという明確な目的のために制度を一時的に利用し、目的が果たされれば終了を目指せるという見通しが立てやすくなることは、長年止まっていた手続きを動かす大きなきっかけになるでしょう。

任意後見・家族信託と成年後見の使い分けで悩むとき

「万が一のときのために何か備えておきたいが、成年後見制度は使いにくい」という方の選択肢として、近年は任意後見契約や家族信託が注目されてきました。改正後は法定後見(補助)の柔軟性が増すことで、これらの制度との関係が変わってきます。
まず任意後見については、改正後は法定後見(補助)との併存が可能になります。つまり、元気なうちに任意後見契約を結んでおき、判断能力が低下した後に「任意後見ではカバーしきれない部分」が生じた際に補助を追加するという段階的な利用が現実的な選択肢になります。
一方、家族信託は財産管理を柔軟に行えるしくみとして有効ですが、本人の医療・介護契約などの身上監護には対応できません。その意味では、補助制度との完全な代替にはなりません。「まず任意後見または家族信託で備えておき、必要に応じて補助を組み合わせる」という発想が、改正後の現実的な設計となりそうです。
 
成年後見制度は、判断能力が低下した後の財産管理や契約支援に関する制度です。一方で、本人が元気なうちに相続後の財産承継を決めておく手段としては、遺言書の作成が重要になります。近年は、パソコン等で作成した遺言書を法務局で保管する「デジタル遺言」の制度化も進められています。
デジタル遺言とは?いつから使える?制度のしくみをわかりやすく解説

現在すでに成年後見制度を利用している場合はどうなる?

すでに成年後見制度を利用している場合、改正法の施行後も、現在進行中の後見がただちに終了するわけではありません。
改正後の新制度は現行の3類型を廃止して「補助」に一本化するものですが、施行時点で既に後見・保佐・補助の審判を受けている人については、経過措置や移行に関する規定が別途設けられる見込みです。ただし、その具体的な内容は国会審議の中で確定するものであり、現時点では詳細は明らかになっていません。
気になるのは「今の後見を終わらせることができるのか」という点でしょう。改正後に「補助の必要がなくなった場合の取消し制度」が導入されることで、既存の後見についても何らかの形で終了を申し立てられる可能性はあります。しかし、あくまで自動終了ではなく、家庭裁判所への申立てと判断が必要であることに変わりはありません。

後見開始は法改正を待つべき?要支援者とその家族の考え方

成年後見制度の見直しを控える現在、最も良いかたちでの支援を早々に望む当事者や家族が多くいます。いま制度を利用するか、それとも改正後に利用を開始するかの判断は、状況に応じて行いましょう。
状況適切な対応
本人が悪質取引の被害を受けている・口座が凍結されているなど緊急性が高い法改正を待たず今すぐ現行制度で申立て
不動産売却・遺産分割協議が直近で必要専門家に相談のうえ、現行制度での申立てまたは改正を見越した準備
将来に備えたい・本人がまだ元気任意後見・家族信託を今のうちに検討(判断能力があるうちに動くことが最善)
現在後見を利用中で終了を検討している改正の経過措置・移行規定が確定してから専門家に相談
 
本人がまだ元気で判断能力がある場合は、成年後見制度だけでなく、遺言書の作成も早めに検討しておきたい手続きです。遺言書を作成しておくことで、相続開始後の財産承継を明確にし、家族間のトラブルを防ぎやすくなります。行政書士に遺言書作成を依頼できる範囲や費用の目安については、以下の記事で解説しています。
遺言書作成は行政書士に依頼できる?できること・費用・違いをわかりやすく解説

まとめ

2026年4月の閣議決定により、成年後見制度は大きく変わると期待されています。長年指摘されてきた「やめられない」「管理されすぎる」「本人意思が軽視される」という課題は、今後解決に向かうでしょう。
後見がどんな制度なのか知りたい、当事者とその家族が望む支援を行いたいと考える人は、行政書士に相談してみましょう。行政書士をお探しの方は、国内最大の行政書士検索サイト「申請Navi」で、対応分野・地域を絞ってお気軽にお探しください。

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この記事の執筆・監修者

氏名:遠藤 秋乃
行政書士・司法書士資格保有

経歴:

大学卒業後、不動産会社で4年・メガバンクの融資部門での勤務2年を経る。

2015年~2016年にかけて、司法書士試験・行政書士試験に合格。知識を活かしてさまざまな分野の相談に200件以上対応。

入管手続き、相続、企業法務、事業承継などさまざまな分野について最新事例の調査・研究を進め、行政書士資格保有者の立場から、読者に良質な情報をお届けしています。