行政書士法改正の企業への影響とは?外注・代行体制の見直しポイントを解説

行政書士法改正の企業への影響とは?外注・代行体制の見直しポイントを解説
2026年1月1日に改正行政書士法が施行され、無資格者による行政書士業務の代行に対する規制が明確化されました。自社の外注先やグループ会社の業務体制が法改正の影響を受けていないか、気になっている企業の担当者も多いのではないでしょうか。
ここでは、企業が関わる主な行政書士業務を整理したうえで、業務体制のパターン別に今回の改正が与える影響と実務対応のポイントを解説します。
 
行政書士法改正による、各業界ごとの影響は以下の記事でも解説しております。
【2026年1月施行】行政書士法改正の内容は?各業界・利用者への影響とは

企業が行政書士に依頼・外注する主な業務

行政書士は、官公署(各省庁・都道府県庁・市区町村役場・警察署など)に提出する書類の作成・申請代行、および権利義務や事実証明に関する書類の作成を業とする専門家です。その対象書類は1万種類を超えるともいわれており、企業が関わる行政手続きの多くが行政書士の業務範囲に含まれます。
企業が行政書士に依頼・外注する代表的な業務には、次のようなものがあります。
▼許認可申請
……建設業・古物商・飲食店などの営業許可、ガソリンスタンドの危険物取扱に関する許可、土地開発に伴う各種届出など、事業を運営するうえで必要な行政手続き全般
▼外国籍人材の在留資格申請・変更・更新
……外国人の採用・異動・雇用継続に伴う出入国管理手続き
▼補助金の申請
……政策に基づき省庁で行われる補助金事業につき、採択を目指し申請する手続き
▼会社設立・定款作成
……法人設立時に必要な定款そのほかの書類作成
▼各種契約書・内容証明の作成
……取引先との契約書類、権利義務に関する文書の作成
※参考:行政書士の業務(日本行政書士連合会)

行政書士法改正で会社の業務にどんな影響がある?

2026年1月1日、改正行政書士法が施行されました。改正でルールが大きく変わったわけではないものの、行政書士資格を有する者だけが行える業務(独占業務)につき、無資格者は「いかなる名目であっても」業として行えないと強調された点に留意する必要があります。
法改正の背景には、無資格者による業務が横行していた事情があります。行政書士法改正後は、上記のような行為がいっそう厳しく取り締まられると考えられます。そこで考えられるのは、企業への影響として、業務体制の見直しが求められる可能性です。
ここで、法人への影響の度合い・企業側の対応のポイントを業務別に示すと、下の表のとおりです。
業務影響度企業の対応のポイント
許認可申請委託先が行政書士登録をしているか確認する
外国人の雇用委託先の立ち位置を確認し、非行政書士への委託・再委託構造を解消する
補助金申請経営支援・分析の質を再確認しつつ、行政書士資格の保有者がいるか確認する
自動車登録・車検・廃車自動車販売店・中古車業者など車両手続きを代行している場合、行政書士登録の有無を確認する
グループ会社への業務集約別法人の書類作成代行は原則不可
顧問行政書士への依頼念のため契約内容を整理する
自社従業員の書類を自社で作成自社の書類に限り問題なし
※参考:行政書士法(e-gov)「行政書士法の一部を改正する法律」の成立について(会長声明)消防法令に基づく各種手続における行政書士法違反の防止について(通知)

【業務体制別】行政書士法改正による違法・適法の判断基準と対応のポイント

一口に「行政書士業務を外部に任せている」といっても、その形態は企業によってさまざまです。ここでは、自社の業務体制のパターン別に、今回の改正を踏まえた見直しのポイントを整理します。

【適法】自社の担当者が業務を行っている場合

自社の従業員が自社に関する書類を作成・申請する行為は、行政書士法上の問題にはなりません。行政書士法が禁じているのは、「他人の依頼を受けて報酬を得て」業として行う場合であり、自社の業務を自社の担当者が処理する行為はそもそも規制の対象外です。

【違法】顧客向けに自社担当者がサービスを提供する場合

コンサルティング会社や経営支援会社、採用・人材系企業、中古車販売会社など、サービスの一環として顧客の書類作成や申請代行を担っている企業は、今回の改正の影響を最も強く受ける立場といえます。担当者が行政書士資格を持たないまま、顧客向けに書類作成・申請代行を業として行うことは違法です。
以上を踏まえ、当てはまる会社の法改正対応のためのポイントとして、下記のようなことがいえます。
  • 顧客向けのサービスとして独占業務が必要になったときに備え、あらかじめ行政書士と提携する
  • 独占業務に関して、行政書士と顧客が直接委任関係となるよう、業務フローや顧客に渡す書類の様式を見直す

【適法】行政書士・行政書士法人に直接外注している場合

適法な外注形態の基本は、行政書士または行政書士法人との直接契約です。現在この形をとっている企業は、今回の改正によって大きく対応を迫られるわけではありませんが、念のため契約や対応可能業務を確認しておくと良いでしょう。
以上を踏まえ、当てはまる会社の法改正対応のためのポイントとして、下記のようなことがいえます。
  • 契約書の業務範囲・報酬体系・再委託の可否を見直す
  • 各種申請に関し、不服申立ての代理までできるか(他業者や自社で行ったものも可能か)確認する
今回の改正では、特定行政書士(一般に認定行政書士とも呼ばれます)の業務範囲が不服申立て・審査請求などへの対応に広がりました。詳しくは下記の記事で解説しています。
【2026年法改正でより便利に】特定行政書士とは?依頼できること・行政書士との違いをわかりやすく解説

【違法】非行政書士のコンサル会社・代行業者に外注している場合

コンサル料・サポート料などの名目で無資格の業者に書類作成代行を依頼している場合、委託先が行政書士資格を持たない限り、今回の改正により明確に違法となります。委託先が実態として書類を作成していれば、名目がどのようなものであっても規制を逃れることはできません。
また、委託先(非行政書士)がさらに行政書士に再委託している構造も認められません。依頼者である企業と書類を作成する行政書士との間に無資格の仲介業者が介在する形は、そもそも適法な委託関係とはいえないためです。
以上を踏まえ、当てはまる会社の法改正対応のためのポイントとして、下記のようなことがいえます。
  • 速やかに行政書士・行政書士法人との直接契約に切り替える
  • 委託先が「非行政書士→行政書士への再委託」という構造になっていないかを確認し、なっている場合も直接契約に切り替える

【グレー】グループ会社・関連会社間で業務を集約している場合

グループ内で行政手続きを一元管理するために、特定の関連会社や親会社の担当者がグループ各社の書類作成・申請を担っているケースがあります。自社従業員が自社の書類を処理する分には問題ありませんが、グループといえども別法人の書類作成を代行し、その対価として報酬・業務委託費・管理費などを受領している場合は「業として」行っているものと判断され、違法となる可能性があります。
以上を踏まえ、当てはまる会社の法改正対応のためのポイントとして、下記のようなことがいえます。
  • 業務体制を吟味し、行政手続きを極力自社の内部で行うようにする
  • 外部の行政書士法人にグループ全体の手続きを一括委託する形に切り替える

行政書士に依頼・外注するときに確認すべきポイント

行政書士への依頼は、単に資格の有無を確認するだけでは不十分です。専門分野や対応範囲は行政書士によって異なるため、契約前後にしっかり確認しておきましょう。

契約前に確認すること

行政書士法人との名称でないベンダーに委託するときは、担当者やサービス提供元の法人が行政書士登録をしているか確認しましょう。
次に、専門分野と実績の確認が重要です。行政書士の業務範囲は非常に広く、許認可・入管(在留資格)・補助金申請・自動車登録など、それぞれ専門知識が異なります。「行政書士ならどの分野でも対応できる」とは限らないため、依頼したい業務に関する実績や対応実績を具体的に確認しなければなりません。

契約内容で整理すべきこと

契約書には、業務の範囲を具体的に明記することが大切です。「書類の作成のみ」なのか「官公署への申請代理まで含む」のかによって、業務の内容も費用も変わります。あいまいなまま進めると、コンプライアンス違反以前に、手続きが進まないなどのトラブルに見舞われてしまいます。
また、申請が不許可・不承認となった場合の対応についても、あらかじめ取り決めておきましょう。再申請の可否、特定行政書士による不服申立ての対応が含まれるかどうかを確認しておくと、いざというときの対応がスムーズです。

行政書士との顧問契約を検討すべき企業の例

都度依頼ではなく顧問契約を結ぶことで、継続的な行政手続きをよりスムーズに、かつコストを抑えて対応できる場合があります。以下のような状況に当てはまる企業は、行政書士との顧問契約も検討してみましょう。
  • 外国籍人材の採用・在留資格管理が年間複数件発生する
  • 許認可の更新・変更届が定期的に発生する
  • 補助金申請を毎年活用している
  • グループ会社の行政手続きをまとめて一元管理したい

まとめ

今回の行政書士法改正は、行政書士の独占業務を「いかなる名目であっても」無資格者が代行することを明確に違法と位置づけるものです。ルールそのものの大幅な変更というよりも、これまでグレーとされてきた行為への締め付けが強化されたという性格が強く、外注先やベンダーの選定、グループ会社間の業務体制、自社サービスの提供方法など、幅広い場面での見直しが求められます。
まず自社の現状を棚卸しし、コンプライアンス上のリスクがないかを確認することが第一歩です。必要に応じて、信頼できる行政書士・行政書士法人への直接外注や顧問契約への切り替えを検討してみてください。
依頼先の行政書士をお探しの方は、国内最大の行政書士検索サイト「申請Navi」で探せます。是非ご利用ください。

この記事の執筆・監修者

氏名:遠藤 秋乃
行政書士・司法書士資格保有

経歴:

大学卒業後、不動産会社で4年・メガバンクの融資部門での勤務2年を経る。

2015年~2016年にかけて、司法書士試験・行政書士試験に合格。知識を活かしてさまざまな分野の相談に200件以上対応。

入管手続き、相続、企業法務、事業承継などさまざまな分野について最新事例の調査・研究を進め、行政書士資格保有者の立場から、読者に良質な情報をお届けしています。