技人国ビザでN2要件(CEFR B2相当)が適用される2つの要件
技人国ビザ(在留資格「技術・人文知識・国際業務」)のN2要件は、すべての外国人に一律で課されるわけではありません。申請時に日本語能力などの証明資料を求められるのは、受入れ企業(所属機関)がカテゴリー3・4に該当し、かつ外国人が言語能力を主に用いる対人業務に従事する場合です。ここでは、この2つの要件をそれぞれ確認していきます。
※以下、参考:在留資格「技術・人文知識・国際業務」(出入国在留管理庁)、翻訳・通訳業務等の言語能力を用いる対人業務に従事する場合の在留資格の明確化について(出入国在留管理庁)
【重要】技人国ビザの審査は、言語能力の証明以外にも厳しくなった項目があります。今後の在留手続きは、こちらの最新情報を元に対策しましょう。
①所属機関がカテゴリー3・4に該当する場合
技人国ビザの外国人にN2要件が適用される条件のひとつは、外国人を受け入れる企業が「カテゴリー3」または「カテゴリー4」に該当することです。カテゴリーとは、出入国在留管理庁が受入れ企業の規模や信頼性に応じて1〜4に区分しているもので、区分によって申請時に提出する書類の量が変わります。各カテゴリーの主な基準は、次の表のとおりです。
| カテゴリー | 主な該当企業・団体 |
| カテゴリー1 | 日本の証券取引所に上場している企業、国・地方公共団体、独立行政法人など |
| カテゴリー2 | 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表で、源泉徴収税額が1,000万円以上の団体・個人など |
| カテゴリー3 | 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出した団体・個人(カテゴリー2を除く) |
| カテゴリー4 | 上記のいずれにも該当しない団体・個人(設立間もない企業など) |
従業員30〜150名程度の中小企業の多くは、カテゴリー3に該当します。設立1年目で法定調書合計表をまだ提出していない企業であれば、カテゴリー4です。自社がどの区分に当たるかは、前年分の法定調書合計表に記載された源泉徴収税額を見れば確認できます。
なお、カテゴリー1・2の企業ならN2要件の適用対象外になるとは言い切れない点にも要注意です。これから解説する②に該当するのであれば、審査の過程で言語能力に関する資料を求められる可能性があるのです。
②言語能力を用いる対人業務に従事する場合
技人国ビザの外国人にN2要件が適用されるのは、外国人が「主に言語能力を用いる対人業務等」に従事する場合です。こうした業務に従事する場合、申請人がCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)におけるB2相当の言語能力を持っていることを前提としています。CEFR B2相当は、JLPT(日本語能力試験)だとN2合格の水準であり、このことから技人国ビザでは「N2要件」と呼ばれるのが一般的です。N2要件の適用対象となる対人業務の代表例は、外国語・日本語間の翻訳や通訳です。接客や案内、交渉や問い合わせといった対応も対人業務に含まれます。業種でいえば、ホテル・旅館のフロント、免税店や小売店、観光・インバウンド関連、貿易会社などが代表的ですが、この限りではありません。
ここで見落としやすいのが、日本語以外の言語を使う業務も対象になるという点です。たとえば、英語で外国人客を接客する場合は英語、中国語で通訳を行う場合は中国語の能力が問われます。
【重要】技術・人文知識・国際業務の在留手続きは、業務が一定の水準に達していないことなどを理由に不許可となる事例が多数あります。許可申請・更新・変更では、こちらの不許可事例を参考に対策しましょう。
技人国ビザのN2要件導入で追加された申請書類
2026年4月15日以降の申請から、カテゴリー3・4に該当する企業が技人国の申請を行う場合、提出書類が2つ追加されました。1つは「所属機関の代表者に関する申告書」、もう1つは言語能力を証明する書類です。前者は対人業務かどうかに関係なく必要で、後者は言語能力を主に用いる対人業務に従事する場合に必要となります。それぞれの内容を見ていきましょう。
所属機関の代表者に関する申告書
所属機関の代表者に関する申告書は、外国人を受け入れる企業の代表者について申告する書類です。カテゴリー3・4の企業は、通訳や接客といった業務内容にかかわらず、技人国の申請時にこの申告書を提出しなければなりません。対象となる申請は、在留資格認定証明書交付申請(海外からの呼び寄せ)、在留資格変更許可申請(留学などからの変更)、在留期間更新許可申請、在留資格取得許可申請のすべてです。つまり、カテゴリー3・4の企業にとっては、新規採用だけでなく、すでに雇用している外国人社員の更新手続きでも必要になる書類といえます。
なお、所属機関の代表者に関する申告書の記載項目はそれほど多くありません(下記)
- 代表者の氏名(英字表記)
- 代表者の在留カード番号(代表者が日本人・特別永住者以外の場合)
- 所属機関の名称
- 作成日、作成者の氏名
言語能力を証明する書類
言語能力を証明する書類は、外国人が業務で使う言語についてCEFR B2相当の能力を持っていることを示すための資料です。カテゴリー3・4の企業で、外国人が翻訳・通訳やホテルフロントなどの接客といった言語能力を主に用いる対人業務に従事する場合に提出します。提出が必要となるのは、主に在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留資格取得許可申請の場面です。在留期間更新許可申請では、以前から同じ業務を続けている場合は原則として提出不要とされています。ただし、業務内容の変更や転職によって新たに対人業務に従事することになった場合は、更新時にも提出が必要です。
証明に使える書類は、業務で使う言語が日本語か、それ以外の言語かによって異なります。
日本語能力を証明する書類
日本語を使う業務の場合、次のいずれかに該当すればCEFR B2相当の日本語能力があるものとみなされます。証明書類としては、試験の合格証明書やスコア証明書、卒業証明書などを提出することになります。| 証明方法 | 基準 | 主な提出書類の例 |
| 日本語能力試験(JLPT) | N2以上 | 合否結果通知書・日本語能力認定書 |
| BJTビジネス日本語能力テスト | 400点以上 | スコアレポート |
| 日本留学試験(日本語) | 読解・聴解・聴読解の合計200点以上 | 成績通知書 |
| JPT日本語能力試験 | 525点以上 | 成績証明書 |
| 在留歴 | 中長期在留者として20年以上日本に在留 | 在留歴を示す資料 |
| 日本の学歴① | 日本の大学卒業、または高等専門学校・専門学校(専門課程・専攻科)修了 | 卒業証明書・修了証明書 |
| 日本の学歴② | 日本の義務教育を修了し、高等学校を卒業 | 卒業証明書など |
このうち、日本の専門学校などを修了したケースでは、専攻した科目と業務内容に関連性があることが条件とされています。たとえば、ホテル・観光系の専門学校を修了した人がホテルのフロント業務に就く場合は関連性を説明しやすいものの、まったく異なる分野を学んだ場合は、試験などほかの方法での証明を検討する必要があります。
なお、文部科学大臣から「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」の認定を受けた学科を修了した外国人については、この関連性が柔軟に判断されます。
日本語以外の言語能力を証明する書類
英語や中国語など、日本語以外の言語を使って通訳や接客を行う場合は、その言語についてCEFR B2相当の能力を証明します。証明の方法は、ケース別に以下のようなものが想定されます。①業務で使う言語が申請人の母国語または公用語であるケース
……業務で使う言語が申請人の母国語または公用語である場合は、それだけでCEFR B2相当の言語能力があるものと評価されます。たとえば、中国籍の人が中国語で通訳を行う場合や、ベトナム籍の人がベトナム語で外国人客を案内する場合などが該当します。
このケースでは、国籍を確認できるパスポートの写しなどをもとに、業務で使う言語が母国語や公用語に当たることを説明する形となります。公用語であることを根拠にする場合は、その国で当該言語が公用語として使われていることを申請理由書などで補足しておくと、審査官に伝わりやすくなります。
②語学試験でCEFR B2以上の能力が証明されているケース
……母国語や公用語以外の言語を業務で使う場合は、語学試験の結果でCEFR B2以上の能力を証明する方法があります。対象となるのは、証明書上や試験の公式ホームページでCEFRのレベル表示がなされている試験に限られます。
CEFRとの対応関係を公表している主な試験には、次のようなものがあります。
| 言語 | 試験の例 | 主な提出書類の例 |
| 英語 | IELTS、ケンブリッジ英語検定、実用英語技能検定(英検) | 成績証明書(Test Report Form)、合格証明書など |
| フランス語 | DELF・DALF(B2以上) | 合格証書(ディプロム) |
| スペイン語 | DELE(B2以上) | 合格証書 |
| ドイツ語 | ゲーテ・インスティトゥート ドイツ語検定(B2以上) | 合格証書 |
DELFやDELE、ゲーテ・インスティトゥートの検定のように、試験そのものがCEFRのレベルに沿って設計されているものは、B2以上の合格証書がそのまま証明になります。英語の試験のようにスコアで結果が出るものは、取得したスコアが公式に示されたCEFRの対応表でB2以上に当たっているかを確認しましょう。
なお、本人確認などの不正防止対策が十分でないと認められる試験は、有効なものとみなされない場合があります。自宅で受験できるオンライン試験などを利用する場合は、事前に信頼性のある試験かどうかを確認しておくと安心です。
③語学試験による言語能力の証明がないケース
……母国語・公用語ではなく、CEFR表示のある語学試験の結果もない場合は、業務に必要な言語能力を持っていることを明らかに評価できる合理的な理由を説明します。
たとえば、ベトナム籍の人がアメリカやイギリスの大学を卒業しており、英語で接客を行う場合などが考えられます。この場合は、海外の大学の卒業証明書に加え、在学期間が分かる資料や、英語で授業を受けていたことが分かる成績証明書などを提出すると説明の説得力が増すでしょう。
そのうえで、申請理由書などで、どのような経緯でその言語を身につけたのか、業務に必要な水準に達していると言える理由は何かを具体的に記載します。
【ケース別】内定者・従業員が技人国N2要件を満たせない場合の対応方法
外国人の内定者や従業員がN2などの証明手段を持っていなくても、すぐに採用や雇用継続をあきらめる必要はありません。どのような対応ができるかは、海外からの呼び寄せか、留学生の採用か、すでに働いている社員の更新かによって変わります。ここでは、企業が直面しやすい4つのケースごとに対応方法を整理します。
海外から招聘する内定者がN2未取得のケース
海外から呼び寄せる内定者がN2を持っていない場合、企業はまず、ほかの方法でCEFR B2相当の能力を証明できないかを確認しましょう。まず、JLPT(日本語能力試験)のN2合格は、数ある証明手段の1つにすぎません。BJTビジネス日本語能力テストやJPT日本語能力試験での証明手段の確保も検討しましょう。これらの試験は、JLPTよりも都合の良い日程・方法で受験できる可能性があります。
留学生を採用し技人国へ変更するケース
日本で学ぶ留学生を採用する場合、企業は留学生がどの学校を卒業・修了するかを確認しましょう。日本の大学を卒業する人であれば、それだけでCEFR B2相当の日本語能力があるものとみなされるため、試験のスコアを別途用意する必要はありません。
日本の専門学校(専門課程)を修了する人も、学歴による証明が可能です。ただし、前章で触れたとおり、専攻した科目と業務内容に関連性があることが条件となります。ホテル学科を修了した人をホテルのフロントで採用するような場合は問題になりにくい一方、専攻と関係の薄い接客業務に就く場合は、JLPTなどの試験で証明する方法を検討しましょう。
注意を要するのは、日本語学校のみに在籍していた留学生です。日本語学校の修了は学歴による証明の対象に含まれていないため、JLPT N2以上やBJT400点以上などの試験結果で証明することになります。
従業員の在留期間更新を行うケース
すでに技人国で働いている従業員の在留期間を更新する場合、以前から同じ業務を続けているのであれば、言語能力の証明資料は原則として提出不要です。一方、業務内容の変更や転職によって、新たに言語能力を主に用いる対人業務に従事することになった場合は、更新申請の際に言語能力の証明資料を提出しなければなりません。具体例として、社内で事務職からホテルのフロント業務に配置転換したケースや、カテゴリー3・4の企業に通訳として転職してきた外国人の初回更新などが該当します。
こうした配置転換や中途採用を予定している場合、企業は対象者が証明資料を用意できるかを事前に確認しておきましょう。資料を用意できないまま業務を変更すると、更新時に技人国の活動に当たらないと判断されるおそれがあります。
技人国N2要件を受けて企業が取り組むべき対応
今回の日本語要件の導入により、外国人を通訳や接客で採用する企業には、これまで以上に計画的な準備が求められるようになりました。要件を満たしているかどうかは、申請直前ではなく、求人や選考の段階から確認しておくことで不許可のリスクを減らせます。ここでは、企業が取り組むべき3つの対応を紹介します。
求人・選考段階で言語能力と証明書類を確認する
企業が最初に取り組むべきなのは、求人・選考の段階で応募者の言語能力と証明書類の有無を確認することです。内定を出した後に証明手段がないと分かると、試験の受験や結果待ちで入社時期が大幅に遅れるおそれがあります。求人票には、業務で使う言語と求めるレベルを明記しておきましょう。たとえば「日本語での接客業務のため、JLPT N2以上またはBJT400点以上の方」と書いておけば、応募者も条件を把握しやすくなります。外国語で接客や通訳を行う職種であれば、使用する言語と、その言語が母国語であるか、CEFR表示のある試験でB2以上を持っているかを確認項目に加えるとよいでしょう。
選考の際は、本人の自己申告だけで判断せず、合格証明書やスコアレポート、卒業証明書などの原本や写しを提出してもらいます。証明書類の取得には時間がかかる場合もあるため、面接の時点で手元にあるかを確認しておくと、その後の申請準備をスムーズに進められます。
職務内容説明書で業務の専門性を具体的に示す
申請書類のなかでも、企業が力を入れて作成したいのが職務内容の説明です。技人国の審査では、外国人が従事する業務が専門的な知識や外国の文化に基づく感受性を必要とする「一定水準以上の業務」に当たるかどうかが確認されるためです。職務内容説明書では、担当する業務の内容、業務で使う言語、1日や1週間の業務の割合などを具体的に記載しましょう。たとえば「ホテルのフロント業務」とだけ書くのではなく、外国人宿泊客へのチェックイン対応や観光案内、外国語での予約メールへの返信、外国語版の案内資料の作成など、どのような場面で言語能力や専門知識を使うのかが伝わるように書くことが大切です。
あわせて、業務内容と外国人の学歴や職歴との関連性も説明しておくと、審査官が判断しやすくなります。大学で観光学を学んだ人がインバウンド対応を担当する場合は、学んだ内容がどのように業務に生かされるのかを書き添えると良いでしょう。
単純労働と判断されないための業務設計・配置を行う
技人国ビザで受入れを行う企業は、外国人従業員の業務が単純労働に偏らないよう、改めて業務設計と配置を見直しておきましょう。今回のN2要件が導入された背景には、技人国ビザで入国した外国人が、本来認められていない単純労働に従事しているケースが問題視されたことがあります。
外国人を単純作業のある現場に配置する際は、ほかのスタッフとの業務分担を明確にしておくことも大切です。シフト表や業務分担表を作成し、外国人が専門的な業務を中心に担当していることを示せるようにしておけば、審査の場面でも説明しやすくなります。採用後に業務内容を変える場合も、技人国の範囲内に収まっているかを確認したうえで判断しましょう。
技人国の日本語要件に関するよくある質問
技人国の日本語要件は2026年4月に導入されたばかりの新しいルールのため、企業の担当者からは細かな疑問が多く寄せられています。ここでは、外国人の採用や雇用継続を検討するうえで特に問い合わせの多い5つの質問を取り上げ、出入国在留管理庁の公表内容をもとに回答します。
Q. N2の合格見込みでも申請できる?
A. 出入国在留管理庁が示している基準は、JLPT N2以上を「取得していること」です。そのため、試験を受けただけで結果が出ていない段階では、N2による証明はできないと考えておきましょう。Q. N3しかない場合は不許可になる?
A. 言語能力を主に用いる対人業務で申請する場合、N3ではCEFR B2相当の日本語能力を証明したことにはなりません。出入国在留管理庁は、この言語能力がない場合は技人国に求められる「一定水準以上の業務」に従事するものとは認められないとしています。そのため、N3のみで通訳や接客業務として申請すると、不許可となる可能性は高いといえます。Q. 英語での接客業務が中心になる場合でも日本語N2は必要?
A. 英語で接客を行う業務であれば、日本語のN2は必要ありません。CEFR B2相当の言語能力は、業務で実際に使う言語について求められるためです。この場合は、英語が母国語または公用語であることや、CEFR表示のある英語試験でB2以上を取得していることなどで英語の能力を証明します。Q. カテゴリー1・2の企業なら何も準備しなくてよい?
A. カテゴリー1・2の企業は、申請時に言語能力の証明資料や所属機関の代表者に関する申告書を提出する必要はありません。一方、言語能力を主に用いる対人業務にCEFR B2相当の言語能力が求められるという考え方は、カテゴリーに関係なく共通であるため、言語能力の証明書を個別に求められる可能性はあります。Q. 要件を満たさないと既存社員の在留はどうなる?
A. 以前から同じ業務を続けている既存社員については、在留期間の更新時に言語能力の証明資料を提出する必要は原則としてありません。今回の要件導入によって、すでに働いている社員の在留資格が直ちに取り消されたり、更新できなくなったりするわけではないため、過度に心配する必要はないでしょう。まとめ
技人国ビザのN2要件(CEFR B2相当の言語能力)は、技人国で働くすべての外国人に一律で課されるものではありません。申請時に言語能力の証明資料を求められるのは、外国人が翻訳・通訳や接客などの言語能力を主に用いる対人業務に従事する場合です。企業としては、求人・選考の段階で言語能力と証明書類を確認し、職務内容説明書で業務の専門性を具体的に示すことが、不許可のリスクを減らす近道となります。あわせて、外国人の業務が単純労働に偏らないよう、業務設計や配置も見直しておきましょう。