外国人材の紹介・雇用支援で認められている業務範囲
外国人材の受け入れには、有料職業紹介事業者、登録支援機関、監理団体という3種類の担い手が存在し、それぞれ許可されている業務の範囲が制度上異なります。まずは各機関が具体的にどこまでの業務を担えるのかを整理し、行政書士の独占業務との違いを理解する土台を作ります。有料職業紹介事業者が担える業務
有料職業紹介事業者は、職業安定法に基づく許可を受けて、求職者である外国人と求人企業との間に立ち、雇用契約の成立をあっせんする役割を担います。あくまで「マッチング」が本来の業務であり、在留資格の申請書類作成のような官公署への提出書類の作成は業務範囲に含まれません。担える業務の例は次のとおりです。- 求職者と求人企業の間での人材マッチング・あっせん
- 求人・求職に関する情報提供や条件交渉のサポート
- 面接の設定や日程調整、雇用契約締結までの事務的な支援
- 就労条件や職場環境に関する説明・情報提供
登録支援機関が担える業務(特定技能制度)
登録支援機関は、特定技能所属機関(受入企業)からの委託を受けて、特定技能1号外国人が日本で安定して生活し、就労を継続できるようにするための支援を行う機関です。支援計画に基づく生活支援が中心であり、在留資格の申請書類そのものを作成する業務は含まれません。担える業務の例は次のとおりです。- 雇用契約締結後の事前ガイダンスの実施
- 入国時・帰国時の送迎
- 住居確保や銀行口座開設、携帯電話契約などの生活に必要な契約支援
- 日本での生活ルールやマナーに関する生活オリエンテーション
- 日本語学習の機会の提供や相談・苦情への対応
- 定期的な面談の実施と、必要に応じた行政機関への相談同行
監理団体が担える業務(技能実習制度)
監理団体は、技能実習制度において実習実施者と技能実習生の間に立ち、技能実習が適正に行われているかを監督する非営利団体です。実習生への指導や実習実施者への監査が中心業務であり、こちらも在留資格の申請書類作成は本来の業務範囲には含まれません。担える業務の例は次のとおりです。- 入国前講習・入国後講習の企画と実施
- 実習実施者に対する定期的な監査や訪問指導
- 技能実習生からの母国語での相談対応
- 労働関係法令違反などを把握した場合の関係機関への通報
- 技能実習計画の実施状況の確認と監査報告書の作成
改正行政書士法の変更点
2026年1月1日に施行された改正行政書士法では、行政書士の使命や職責が明文化されるとともに、無資格者による業務への規制の趣旨が改めて整理されました。ここでは、登録支援機関や人材紹介会社の実務に関わる3つの変更点を確認します。※以下、参考:行政書士制度(総務省)、「行政書士法の一部を改正する法律」の成立について(会長声明)
無資格業者による禁止業務が改めて明確化される
今回の改正でとくに実務への影響が大きいのが、業務制限を定める第19条の見直しです。改正前から「行政書士又は行政書士法人でない者は、業として官公署に提出する書類の作成等を行うことができない」と定められていましたが、改正後はこの条文に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が加えられました。この文言の追加により、対価を伴うサービスとして反復継続的に行っていれば、その対価をどのような名目で受け取っていても、規制の対象になることが明確になりました。
また、違反時の罰則についても両罰規定が整備され、実際に違法な書類作成を行った職員だけでなく、その職員が所属する法人自体も罰金の対象となり得るしくみが整えられました。これまで個人の問題として捉えられがちだった無資格業務のリスクが、企業全体の経営リスクとして位置づけられるようになったといえます。
行政書士の担う使命・業務が明確化される
今回の改正では、行政書士の「目的」が「使命」に改められ、行政書士が行政手続きの円滑な実施を支え、国民の権利利益の実現に貢献する存在であることが明文化されました。あわせて、品位の保持や公正誠実な業務遂行、デジタル社会への対応といった職責も新たに条文へ加えられています。さらに、特定行政書士が行政庁に対して不服申立てを代理できる範囲についても見直しが行われました。従来は「自ら作成した書類」に関する不服申立てに限られていましたが、改正後は「行政書士が作成することができる書類」に関するものへと対象が広がっています。
外国人材の紹介業務における今後の注意点
登録支援機関や人材紹介会社にとって重要なのは、支援委託費や紹介料の内訳から書類作成の対価を明確に分離しておくことです。契約書や請求書のうえで、生活支援や相談対応にあたる部分と、行政書士に外部委託する書類作成の部分とを区別しておくことで、対価性の有無をめぐるリスクを下げることができます。あわせて、社内の担当者が行ってよい業務は、情報収集の支援や役所への同行といった補助的な行為にとどめ、書類の作成や、行政書士が作成した書類への加除訂正には関与しないという線引きを徹底することも欠かせません。
関連記事:行政書士法改正の企業への影響とは?外注・代行体制の見直しポイントを解説
外国人材の紹介でやってはいけない行政書士違反の例
登録支援機関や人材紹介会社の現場では、日常的な支援業務のつもりで行っている対応が、実は行政書士法に違反している場合があります。とくに在留資格・入管手続きに関する書類は行政書士の独占業務にあたるため、担当者が善意で対応していたつもりの行為が違反となるケースも少なくありません。ここでは、とくに注意が必要な5つのパターンを取り上げます。関連記事:行政書士法改正で何が違法になる?無資格代行・コンサル料・会社の罰則まで解説【2026年施行】
在留資格関連書類の代筆・入力代行を行う
在留資格変更許可申請や在留資格認定証明書交付申請など、出入国在留管理局に提出する書類は公的な書類であり、原則として行政書士か弁護士でなければ有償で作成できません。登録支援機関や人材紹介会社の担当者が、良かれと思って行っている以下のような対応も、この規制に抵触するおそれがあります。- 申請書の記入欄を担当者が代わりに埋めてしまう
- 外国人本人からヒアリングした在留資格に関する情報を、担当者が申請書の文章としてまとめる
- 提出前の在留資格申請書を担当者がパソコンで作成し、印刷して本人に渡す
- 自社で導入している特定技能管理システムやビザ管理ツールを使って、担当者が在留資格申請書類を自動生成し、そのまま提出用の書類として仕上げる
本人の依頼に応じて実質的に書類を作り上げる行為は、単なる相談対応の範囲を超え、在留資格申請書類の作成そのものを代行したと評価される可能性が高い点に注意が必要です。
在留期間更新許可申請書類の作成を代行する
在留期間更新許可申請は、特定技能や技術・人文知識・国際業務など多くの在留資格で発生する定期的な入管手続きであり、対応の頻度が高いことから、慣習的に登録支援機関などのサービス提供者側で処理してしまっているケースが少なくありません。典型的な例としては、次のようなものが挙げられます。- 更新のたびに担当者が在留期間更新許可申請書一式を作成し、本人には署名だけをしてもらう
- 前回入管に提出した申請書類をひな形として使い、担当者が内容を書き換えて再提出する
- 会社側で用意した在留資格申請用の雛形に、担当者が個人情報を入力して仕上げる
支援費・管理料など名目に書類作成の対価を含める
改正行政書士法第19条には、「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が新たに加えられました。これにより、在留資格申請書類の作成に対する対価を明示的に受け取っていなくても、他の名目の費用に実質的に含まれていれば違法と判断される点が明確になっています。次のような費用の受け取り方は、特に注意が必要です。- 月額の支援委託費のなかに、在留資格関連の書類作成対応を暗黙に含めて請求する
- 「事務手数料」「管理料」という名目で、実質的に入管提出書類の作成対価を受け取る
- 紹介料や仲介手数料に、入管手続きサポート一式という名目で在留資格申請書類の作成分を上乗せする
作成済み書類の内容を実質的に変更する加除訂正を行う
行政書士が作成した在留資格関連書類であっても、その後の内容を無資格者が書き換えてしまえば、実質的な書類作成行為とみなされるおそれがあります。行政書士との分業を進めている企業でも、次のような対応には注意が必要です。- 行政書士から受け取った在留資格申請書類を、担当者が誤字修正の範囲を超えて内容を書き換える
- 提出直前に本人の状況変化を反映させるため、担当者が独自に申請書類の記載内容を追記する
- 行政書士確認後の在留資格申請書類に、担当者が別の添付資料の内容を反映させて再構成する
無償・0円や入管オンラインシステムの入力代行と称して書類作成のみ行う
書類作成に対して直接的な報酬を受け取っていない、あるいは入管オンラインシステムへの入力代行にすぎないと説明している場合であっても、規制の対象外になるとは限りません。実務上見られる例としては、次のようなものがあります。- 「在留資格申請書の作成は無料サービスです」と案内しつつ、ほかの有償サービスと一体で提供する
- 継続的な支援契約を結んでいる顧客に限り、在留資格関連書類の作成を無償で対応する
- 本人に代わって担当者が出入国在留管理庁のオンラインシステムにログインし、申請情報を入力・送信する
- 本人から預かった情報をもとに、担当者がオンライン上で在留資格申請データを作成して送信する
外国人材の紹介・雇用支援で行政書士違反リスクを回避するには
無資格による書類作成のリスクを避けるには、行政書士との適切な業務分担を前提に、契約や社内体制を見直すことが欠かせません。ここでは実務で取り組みやすい3つの対応を紹介します。書類作成と生活支援・相談業務の役割分担を明確にする
登録支援機関や人材紹介会社が担うべき業務は、本人からの相談対応や生活面のサポート、行政機関への同行といった部分にとどまり、在留資格関連書類の作成そのものは行政書士の業務範囲になります。まずはこの前提を社内で共有し、どの業務までなら自社で対応してよいのかを具体的に線引きしておくことが重要です。たとえば、外国人本人から必要な情報をヒアリングして行政書士へ橋渡しするところまでは自社の業務とし、その情報をもとに実際の申請書類を組み立てる作業は行政書士に委ねるという分担であれば、書類作成という独占業務に踏み込まずに支援を続けられます。申請取次の資格を持つ職員がいる場合でも、取次は書類の提出行為であって作成行為ではないため、この違いを職員自身が理解しておく必要があります。
行政書士との業務委託契約を締結し、請求区分を分ける
役割分担を社内の認識だけにとどめず、行政書士との間で業務委託契約を結び、契約書のなかで在留資格関連書類の作成が自社の業務に含まれない旨を明記しておくことも有効です。契約書に業務範囲を明記しておけば、受入企業や外国人本人に対しても、どこまでが自社の支援でどこからが行政書士の業務かを説明しやすくなります。請求面についても、支援委託費や紹介料と、行政書士に対する書類作成の対価とを別の項目として区分することが望ましいといえます。支援委託費のなかに書類作成分を紛れ込ませず、行政書士への支払いは行政書士名で直接請求してもらう形にしておくことで、報酬の名目にかかわらず対価性が問われるリスクを抑えることができます。
社内の業務を見直し、コンプライアンス体制を整備する
契約や請求区分を整えるだけでなく、実際の現場で契約どおりの運用がなされているかを継続的に点検する体制も必要です。特に複数の拠点や担当者が個別に対応している組織では、契約書上のルールと現場の実態がずれてしまい、支店ごとの慣行として無資格の書類作成が残ってしまうケースも見られます。社内の業務フローを一度棚卸しし、担当者がどの範囲まで対応しているかを確認したうえで、在留資格関連書類の作成に踏み込んでいる部分があれば行政書士へ移管します。あわせて、改正行政書士法の内容や違反時の両罰規定について社内研修などを通じて周知し、担当者個人の判断に委ねず組織的にルールを守れる仕組みを整えておくことが、違反リスクを回避するうえでの土台になります。
まとめ
2026年1月施行の改正行政書士法により、在留資格関連書類の作成は名目を問わず行政書士の独占業務であることが改めて明確になりました。登録支援機関や人材紹介会社が担えるのは、生活支援や相談対応、行政機関への同行といった補助的な業務にとどまり、書類の代筆や入力代行、加除訂正、そして支援費や管理料に対価を紛れ込ませる運用も違反と評価されるおそれがあります。国内最大の行政書士検索サイト「申請Navi」では、外国人材の受け入れ業務に対応できる行政書士を分野・地域から探すことができます。改正行政書士法への対応や業務体制の見直しを検討しているときは、是非ご利用ください。