【2026年7月改正】経営事項審査の改正で何が変わる?P点への影響と対応策を解説

【2026年7月改正】経営事項審査の改正で何が変わる?P点への影響と対応策を解説

令和8年(2026年)7月1日から、経営事項審査(経審)の制度が改正されます。評価項目の新設・配点変更・削除が一度に行われる大きな見直しであり、公共工事の入札参加資格を維持している建設業者にとっては、自社のP点への影響を早めに把握しておく必要があります。

ここでは、改正の3つの柱からW点・P点への具体的な影響を解説し、早めに実施したい対応を紹介します。

この記事のポイント

  • 2026年7月1日以降の申請から、経営事項審査(経審)のW点評価項目が改正されます。
  • 「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」が新設され、最大5点の加点が可能になります。
  • 不整地運搬車・アスファルト・フィニッシャが建設機械加点(W7)の対象に追加されます。
  • 社会保険3項目(W1-1〜W1-3)は削除されますが、社会保険加入義務自体がなくなるわけではありません。
  • 改正の適用は「審査基準日」ではなく「申請日」が基準となるため、次回申請スケジュールを早めに確認することが重要です。

そもそも経営事項審査(経審)とは?

経営事項審査(経審)とは、建設業者の経営状況・財務内容・技術力などを国が定めた基準で数値化する審査制度です。公共工事の入札に参加するためには、この審査を受けることが建設業法によって義務付けられています。

経審が必要な理由と公共工事との関係

国や地方自治体などが発注する公共工事を直接請け負おうとする建設業者は、経営事項審査を受審し、その結果として算出される総合評定値(P点)を取得しなければなりません。これは建設業法第27条の23に定められた義務であり、P点があることで公共工事の入札参加資格を申請できます。
P点が重要な理由は、発注機関が入札参加資格の「格付け」にこの数値を活用しているからです。たとえば、A・B・Cといったランク区分を設けている発注機関では、P点の高低によって受注できる工事の規模や金額が変わってきます。P点が低ければ小規模工事しか受注できず、逆に高ければより規模の大きな工事への入札が可能になります。
※参考:経営事項審査及び総合評定値の請求について(国土交通省)

2026年7月の経営審査事項改正とは?大まかな内容と適用日

経審改正の適用は令和8年(2026年)7月1日ですが、これは審査基準日ではなく申請日を基準とします。審査基準日がいつであっても、申請日が令和8年7月1日以降であれば改正後の基準が適用されます。逆に、審査基準日が令和8年7月以降であっても、申請日が同年6月30日以前であれば改正前の基準が適用されます。申請スケジュールの確認は早めに行いましょう。

【基礎知識】P点の計算式と評価項目の概要

公共工事の入札参加資格に影響するP点は、経営事項審査のなかで下記の計算式によって算出されます(建設業法第27条の23第3項・国土交通省告示)
P = 0.25X1 + 0.15X2 + 0.20Y + 0.25Z + 0.15W
各項目の内容は次のとおりです。
記号評価項目主な評価内容
X1経営規模(工事高)許可業種別の年間平均完成工事高
X2経営規模(財務)自己資本額・利払前税引前償却前利益
Y経営状況負債抵抗力・収益性・財務健全性など
Z技術力技術職員数・元請完成工事高(業種別)
Wその他社会性等社会保険加入・建設機械保有・労働福祉など
5つの評価項目のうち、今回の令和8年7月改正によって変更が生じるのはW(その他社会性等)です。ウェイトとしては0.15と小さく見えますが、W点の最低点・最高点の幅は広く、内容次第でP点全体に無視できない影響を与えます。
以下では、このW点に関する改正の具体的な内容を詳しく解説します。

2026年7月経営事項審査改正の3つの変更点

令和8年7月1日施行の経審改正は、
  • 担い手の育成・確保
  • 災害対応力の強化
  • 建設業許可要件の改正を踏まえた見直し
という3つの視点から構成されています。いずれもW(その他社会性等)に関わる改正であり、評価項目の新設・拡大・削除が一度に行われる大きな見直しとなっています。
※参考:経営事項審査の主な改正事項(令和8年7月1日施行)経営事項審査の事務取扱いについて(通知)

「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言の有無(新設・W1-⑧)

今回の経営審査事項の改正では、第三次・担い手3法の全面施行を踏まえ、労務費の確保やCCUS(建設キャリアアップシステム)の活用を積極的に推進する企業を評価するための新設項目です。「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」に基づき宣言を行った企業に対して、W1-⑧として最大5点が加点されます。
加点を受けるための条件は、
  • 審査基準日が宣言日以降であること
  • 宣言書と誓約書が提出されていること
上記のいずれも満たすこととされます。宣言さえすれば自動的に加点されるわけではなく、書類の提出が必須となる点に注意してください。
また、この新設にあわせて、既存のW1-⑦「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況」の配点も見直されます。具体的には、
  • 民間工事を含む全建設工事を対象とする区分:15点→10点
  • 全公共工事を対象とする区分:10点→5点
上記のようにそれぞれ引き下げられます。すでにCCUSの就業履歴管理に取り組んでいる企業は、この配点引き下げによってW1-⑦の評価が下がる可能性があります。自主宣言制度への対応と合わせて、W1全体でどう得点が変化するかを確認しておきましょう。

「建設機械の保有状況」の加点対象拡大(W7)

W7は、地域防災の観点から、災害時の復旧対応に活用される建設機械の保有状況を評価する項目です。今回の改正では、令和6年能登半島地震での活用実績を踏まえ、新たに「不整地運搬車」と「アスファルト・フィニッシャ」の2機種が加点対象に追加されます。
これにより、従来の下記9機種に加え、合計11機種が評価対象となります。
  1. ショベル系掘削機
  2. ブルドーザー
  3. トラクターショベル
  4. モーターグレーダー
  5. 移動式クレーン
  6. ダンプ
  7. 締固め用機械
  8. 解体用機械
  9. 高所作業車
  10. 不整地運搬車(新設)
  11. アスファルト・フィニッシャ(新設)
評価方法は従来と変わらず、保有台数に応じて最大15点(14台以上保有の場合)が加点されるしくみです。

「社会保険加入に関する評価項目」の削除(W1-1・W1-2・W1-3)

これまでの経審では、雇用保険(W1-1)・健康保険(W1-2)・厚生年金保険(W1-3)への未加入に対して、それぞれ-40点の減点が課されていました。今回の改正でこれら3項目が審査対象から削除され、合計最大-120点分の減点リスクがなくなります。
削除の背景には、令和元年度の建設業法改正があります。令和2年10月1日以降、社会保険への加入が建設業許可・更新の要件として義務化されました。許可の有効期間が5年であるため、令和7年10月1日以降に建設業許可を保有するすべての業者は、社会保険加入要件を当然に満たしていることになります。経審の段階で改めて加入有無を確認する必要性が乏しくなったことから、申請事務の効率化も兼ねて審査項目から削除されることとなりました。
社会保険にすでに加入済みの企業にとっては、これまでも減点は発生していなかったため、P点の数値自体に変化はありません。ただし、申請書類の様式が変更となる可能性があるため、次回申請の際は最新の様式を使用しているかどうかの確認が必要です。

経審改正でW点・P点はどう変わる?改正前後の比較

令和8年7月の改正によってW点の構成が大きく変わります。自社の点数への影響を正確に把握するために、改正前後の変化を具体的な数値で確認しておきましょう。

W点の最低点・最高点の変化

今回の改正でW点の最低点が変わります。改正前はW点の最低点が-210点でしたが、社会保険3項目(各-40点)の削除により、改正後の最低点は-90点となります。最高点は237点のまま変わりません。これにともない、総合評定値(P点)の最低点・最高点も変更となります。
改正前後の主な変更点をまとめると、以下のとおりです。
審査項目改正前改正後
W1-1:雇用保険の加入状況0 / -40点削除
W1-2:健康保険の加入状況0 / -40点削除
W1-3:厚生年金保険の加入状況0 / -40点削除
W1-⑦:就業履歴蓄積措置の実施状況(全建設工事)最高15点最高10点
W1-⑦:就業履歴蓄積措置の実施状況(全公共工事)最高10点最高5点
W1-⑧:自主宣言制度の宣言の有無なし新設・最高5点
W7:建設機械の保有状況(対象機種数)9機種11機種
W点 最低点合計-210点-90点

加点チャンスが生まれる企業・影響が少ない企業

今回の経営審査事項の改正は、すべての企業に同じ影響を与えるわけではありません。自社の状況に照らして、影響がどの程度あるかを整理しておく必要があります。

加点チャンスが生まれる企業

今回の改正で加点チャンスがあるのは、自主宣言制度をまだ実施していない企業です。宣言書と誓約書を提出するだけで最大5点の加点が得られるため、対応コストに対して得られる効果が大きい改正といえます。
また、不整地運搬車やアスファルト・フィニッシャをすでに保有している企業も、台数次第で建設機械(W7)の加点が増える可能性があります。

影響が少ない企業

一方、社会保険にすでに加入済みの企業は、これまでもW1-1〜W1-3で減点を受けていなかったため、今回の削除によってP点の数値が変わるわけではありません。申請書類の記載項目が減るという事務負担の軽減はありますが、点数上の変化は実質的にないといえます。

改正で注意を要する企業

経営審査事項の改正で注意を要するのは、CCUSの就業履歴管理にすでに取り組んでいる企業です。W1-⑦の配点が引き下げられるため、これまで全建設工事で15点・全公共工事で10点を取得していた企業は、改正後にそれぞれ最大10点・最大5点へと評価が下がります。

経審改正に向けて建設業者で行いたい対策

令和8年7月の改正まで時間的な余裕は多くありません。改正内容を把握したうえで、自社に必要な対応を早めに進めておくことが重要です。

自社のW点項目を改正後の配点で棚卸しする

まず取り組みたいのは、現在の経審結果をもとに、W1〜W8の各項目で自社が何点を取得しているかを確認することです。改正後はW1の構成が10項目から8項目へと変わります。削除される項目(W1-1〜W1-3)や配点が変わる項目(W1-⑦)を含めて、改正後の配点表と照らし合わせると、自社のW点がどう変化するかが見えてきます。
加点を取り損ねている項目がないかどうかも確認しておきましょう。たとえば、建退共への加入状況(W1-④)や法定外労災制度への加入(W1-③)、ワーク・ライフ・バランスへの取組(W1-⑥)なども評価対象です。今回の改正を機に、W点全体を見直す好機と捉えることをおすすめします。

「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」への対応を検討する

今回の改正で新設されるW1-⑧は、宣言書と誓約書を提出するだけで最大5点の加点が受けられる項目です。宣言手続きは、建設業振興基金が運営するCCUSポータルサイト(建設キャリアアップシステム)から行います。
ただし、加点を受けるには「審査基準日が宣言日以降であること」が要件となっています。つまり、決算日(=審査基準日)よりも前に宣言を完了させておかなければなりません。「改正が始まってから対応すればよい」と考えていると、次回の審査基準日に間に合わなくなる可能性があります。宣言から加点反映までのタイミングを逆算し、早めに手続きに着手することが大切です。

次回の経審申請スケジュールを逆算して確認する

改正の適用は申請日を基準とするため、令和8年7月1日以降に申請する場合は改正後の基準が適用されます。審査基準日(決算日)が令和8年7月より前であっても、申請日が7月1日以降であれば改正が適用される点はすでに述べたとおりです。
自社の決算月と例年の申請時期を照らし合わせ、次回の申請が改正前と改正後のどちらに当たるかを確認しておきましょう。書類様式の変更が伴う可能性もあるため、依頼する行政書士事務所や申請担当者と早めに情報共有を行い、対応の期限と準備内容を明確にしておくことが重要です。

経審の改正対応で行政書士への相談をおすすめする理由

経審の改正対応は、制度の理解だけでなく、自社の状況に合わせた戦略的な対応が求められます。こうした場面で頼りになるのが、申請取次行政書士への相談です。

申請取次行政書士に依頼できること

申請取次行政書士は、経審に関する業務を幅広くサポートできる専門家です。改正内容の整理や自社に合わせた加点戦略の立案にとどまらず、申請書類の作成から都道府県への申請取次まで、一連の手続きを一括して依頼することができます。
自社で対応する場合、改正後の配点表の読み違えによる加点漏れや、様式変更への気づきの遅れによる書類不備、申請タイミングのズレによって改正の恩恵を受けられないといったリスクが生じやすくなります。
経審は毎年受審するものだからこそ、こうしたミスが積み重なると入札資格の格付けに長期的な影響を与えかねません。専門家に任せることで、こうしたリスクを回避しながら確実な申請を実現できます。

改正対応のタイミングこそ相談のベストタイミング

制度変更の節目は、審査項目や書類様式が一度に変わるため、例年どおりの対応では不十分になることがあります。とくに今回のように新設項目・配点変更・削除が同時に行われる改正では、実務経験が豊富な申請取次行政書士の知見が特に役立ちます。
「今の経審の点数をもっと上げたい」「改正への対応が正しいか確認したい」といった疑問がある場合、早めに行政書士へ相談を持ち込みましょう。

2026年7月経審改正に関するよくある質問

改正の適用タイミングや手続きの詳細について、よくある疑問をまとめました。申請前の最終確認にお役立てください。

Q. 令和8年7月より前に経審を申請した場合、改正は適用されますか?

A. 適用されません。今回の改正は令和8年7月1日以降に申請した場合に適用されます。審査基準日(決算日)が令和8年7月以降であっても、申請日が同年6月30日以前であれば改正前の基準で審査されます。逆に、審査基準日が令和8年6月以前であっても、申請日が7月1日以降であれば改正後の基準が適用されます。申請日が改正の適用可否を左右する点を、改めて確認しておきましょう。

Q. 「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」はどこで宣言すればよいですか?

A. 宣言手続きは、建設業振興基金が運営するCCUSポータルサイト(建設キャリアアップシステム)から行います。
宣言にあたっては宣言書と誓約書の提出が必要です。また、加点を受けるには審査基準日(決算日)が宣言日以降であることが条件となるため、決算日よりも前に宣言を完了させておく必要があります。

Q. 社会保険の減点項目(W1-1〜W1-3)が削除されると、申請書類の書式は変わりますか?

A. 審査項目の削除にともない、申請書類の様式が変更される可能性があります。
令和8年7月1日以降の申請では、最新の様式を使用する必要がありますので、国土交通省や都道府県の建設業担当窓口が公表する最新様式を必ず確認してください。従来の様式をそのまま使用すると申請が受理されない場合があるため、注意が必要です。

Q. 不整地運搬車・アスファルト・フィニッシャを保有していれば自動的に加点されますか?

A. 保有しているだけでは加点されません。
W7(建設機械の保有状況)の評価を受けるには、対象機械について自動車検査・特定自主検査・製造時検査または性能検査を受けていることが要件となっています。該当する検査を受けたうえで、申請時に所定の書類を提出する必要があります。保有機械が加点対象に該当するかどうか、検査の状況と合わせて事前に確認しておきましょう。

まとめ

令和8年7月1日以降の申請から、経営事項審査の評価項目が大きく変わります。今回の改正の内容は、次の3つです。
  • 建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度の新設
  • 建設機械の加点対象拡大(不整地運搬車・アスファルト・フィニッシャの追加)
  • 社会保険3項目(W1-1〜W1-3)の削除
改正の適用は審査基準日ではなく申請日が基準となるため、次回の申請がいつになるかを早めに確認しましょう。自主宣言制度への対応は審査基準日よりも前に宣言を完了させる必要があり、時間的な余裕を持って動かなくてはなりません。
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この記事の執筆・監修者

氏名:遠藤 秋乃
行政書士・司法書士資格保有

経歴:

大学卒業後、不動産会社で4年・メガバンクの融資部門での勤務2年を経る。

2015年~2016年にかけて、司法書士試験・行政書士試験に合格。知識を活かしてさまざまな分野の相談に200件以上対応。

入管手続き、相続、企業法務、事業承継などさまざまな分野について最新事例の調査・研究を進め、行政書士資格保有者の立場から、読者に良質な情報をお届けしています。