行政書士法改正でいつ・何が変わったのか
2025年6月に成立した改正行政書士法は、2026年1月1日に施行されました。「名目を問わず」無資格者による書類作成を禁じることが条文に明記され、補助金コンサルの業務環境は大きく変わっています。補助金申請業務に関する明文化されたルール
そもそも行政書士法は、以前から「他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類を作成すること」を行政書士の独占業務と定めていました。補助金の申請書類は「官公署に提出する書類」に該当するため、有償での書類作成は改正前から無資格者には認められていない行為です。しかし現実には、コンサル料・成功報酬・サポートパックといった名目に変えることで、実態として補助金申請書類の作成・代行を行う無資格業者が後を絶ちませんでした。名目をすり替えれば法律の網をくぐれるという解釈が、業界内で広く横行していたのです。
今回の改正で核心となるのは、第19条(業務の制限)の改正です。改正前の条文には「いかなる名目によるかを問わず」という文言がなく、これがグレーゾーンを生む一因となっていました。改正後の条文では、以下のとおり明記されています。
「他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として書類を作成することができない」
なお、今回の改正により「新たに違法となった行為が増えた」わけではありません。総務省の通知(総行行第281号)でも、この改正は「現行法の解釈を条文に明示する」ものと説明されています。改正前から違法だった行為が、条文の文言によってより明確に可視化されたという位置づけです。
※参考:行政書士制度(総務省)、「行政書士法の一部を改正する法律」の成立について(会長声明)
行政書士法改正の全体像や他業種への影響については、【2026年1月施行】行政書士法改正の5つの変更点|何が違法になった?業種別影響を解説で詳しく解説しています。
無資格者への罰則・事業者側のリスク
行政書士法に違反した場合の罰則は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。さらに今回の改正で見逃せないのが、両罰規定の整備・強化です。改正前は、一部の違反行為のみに両罰規定が適用されていました。改正後は適用範囲が大幅に拡大され、業務の制限違反(無資格者による書類作成)についても両罰規定が新たに適用されるようになっています。これにより、会社や団体の従業員が業務として無資格の書類作成を行った場合、その会社・団体にも100万円以下の罰金が科されることになりました。
依頼した事業者側にも、リスクは及びます。補助金申請のプロセスに違法行為が介在していたことが発覚した場合、採択の取り消しや補助金の全額返還を求められる可能性があります。近年では省力化投資補助金など一部の補助金の申請マニュアルに「行政書士法に抵触する行為は認められない」旨の記載が加わるなど、審査機関側も違法代行の排除に動き始めています。
補助金の採択後にルール違反が見つかった場合は、交付決定の取消しや返還請求につながることがあります。補助金の不正受給・目的外利用・返還リスクについては、補助金適正化法とは?行政書士に依頼してうっかり違反を防ごうで詳しく解説しています。
さらに深刻なのは、コンプライアンス上の傷が残ることです。「知らなかった」という事情は、必ずしも免責の理由になりません。金融機関との取引や入札参加資格の審査など、コンプライアンスを重視する場面で、こうした過去の事実が信用評価に影響する可能性があります。「知らなかったでは済まされない」という認識のもと、今すぐ自社のサービスを見直すことが求められます。
ここまではOK?合法的にできる補助金コンサルの範囲
行政書士法が改正されたとはいえ、補助金コンサルとして完全にビジネスを畳む必要はありません。「書類作成」と「経営アドバイス」の間には明確な境界線があり、無資格のコンサルタントでも適法に提供できるサービスは存在します。無資格のコンサルタントができる業務
無資格者がグレーゾーンなく提供できるのは、端的に言えば「企画・助言」の領域です。申請書そのものには手を触れず、事業者が自力で書けるよう支援する立場にとどまる限り、資格がなくても適法に報酬を受け取れます。具体的には、次のような業務が該当します。
- 自社の強みや課題の整理、売上・利益計画の策定支援など、経営視点からのアドバイス
- 制度の選定支援や、公募要領の読み方・採択のポイントの解説
- 加点項目の説明や採択事例の紹介など、事業者自身が書類を書けるよう伴走するサポート
- セミナー・オンライン講座などの形式による情報提供型サービス
行政書士との提携が必要になる業務
一方、下記に該当する業務は、行政書士との連携なしには行えません。- 申請書類や事業計画書の原案・下書きを作成する行為
- 添削・テンプレート提供という名目で、原案の大部分をコンサルタントが作り込む行為
- jGrantsなどの電子申請システムへの入力・代理送信をクライアントに代わって行う行為
- 採択報酬・コンサル料・会費など、名目を問わず書類作成・申請代行の対価として報酬を受け取るすべての取引
これらの業務を継続して提供したい場合は、行政書士との業務提携・委託契約を締結し、書類作成・申請手続の部分を有資格者に担ってもらう体制に切り替えることが不可欠です。
補助金コンサルが違法になり得る具体的な行為
「コンサル名目だからセーフ」「成功報酬だから問題ない」という認識は、もはや通用しません。ここでは、どのような行為が行政書士法違反に問われるのか、具体的なパターンを整理します。明確にNGとなる補助金コンサルの行為
最もわかりやすい違反行為は、クライアントから事業内容をヒアリングし、その内容をもとに補助金申請書類や事業計画書を代筆・作成する行為です。紙の書類であっても、jGrantsなどの電子申請システムへの入力・代理送信であっても、形式を問わず同様です。また、クライアントのGビズIDやパスワードを預かって申請操作を代行する行為も明確な違反行為です。「クライアント自身のアカウントを使っているから問題ない」という感覚は完全な誤りで、操作の主体が実質的にコンサルタントである以上、行政書士の独占業務への侵害とみなされます。
成功報酬型のビジネスモデルも注意が必要です。補助金採択額の〇%を成功報酬として受け取る場合、仮に「採択支援」「伴走サポート」という名目であっても、コンサルタントが実態として申請書類の作成に関与していれば、その報酬は「書類作成への対価」と判断されます。成功報酬型であること自体が直ちに違法というわけではありませんが、書類作成への関与とセットになっている限り、法的リスクは極めて高くなります。
名目を変えてもアウトになるグレーな行為
「うちは書類作成じゃなくてコンサルだから」という言い訳が通じないのが、今回の改正の核心です。実態として書類作成の対価が含まれていると判断される場合は、名目にかかわらず一律に違法となります。近年横行しているのが、コンサル契約・顧問契約・会費制サービスに申請書作成業務を抱き合わせで販売するモデルです。月額〇万円の顧問料の中に「補助金申請サポート」が含まれている場合、その一部が実質的な書類作成の対価とみなされる可能性があります。
「テンプレート提供」や「添削」という名目も、安全地帯ではありません。提供したテンプレートがほぼそのまま申請書として使われる設計であったり、添削と称しながら実質的に原案の大部分をコンサルタントが書き直していたりする場合は、実態として書類を作成したと判断されるリスクがあります。
融資・財務コンサルの一環として補助金書類の作成を担うケースも要注意です。本業のコンサルサービスの中に補助金書類の作成が組み込まれ、全体として一つの報酬体系をとっている場合も、「書類作成への実質的な対価あり」と判断され得ます。
行政書士法改正に伴う補助金コンサルの対応
リスクの存在を理解した上で、次に取り組むべきは自身のビジネスモデルの点検と修正です。「何を・どのように見直せばよいか」を具体的なアクションとして整理します。外注や体制整備については行政書士法改正の企業への影響とは?外注・代行体制の見直しポイントを解説でも詳しく解説しております。
業務内容の洗い出し・チェックをする
まず行うべきは、現在提供しているサービスの棚卸しです。サービス内容を一覧に書き出し、以下の観点でひとつずつ確認してみましょう。- 申請書類・事業計画書の文章を、自分(またはスタッフ)が書いていないか
- 添削などの名目で、実質的に書類の大部分を作り込んでいないか
- クライアントのGビズIDやパスワードを預かり、電子申請を代わりに操作していないか
- jGrantsなどのシステムへの入力・送信を、クライアントに代わって行っていないか
- 名目を問わず「書類作成の対価」とみなされる報酬が含まれていないか
- 月額顧問料や会費の中に、実態として申請書作成サポートが含まれていないか
契約書・申込フォーム・LPを見直す
業務内容の実態を見直すと同時に、対外的な表現も修正しなければなりません。たとえ業務の実態が適法であっても、契約書やWebページの文言が「書類作成を代行している」と読み取れる表現になっていれば、それ自体がリスクになります。契約書・業務委託書では、以下のような文言が含まれていないか確認してください。
- 「補助金申請代行」
- 「書類作成代行」
- 「申請手続き一括対応」
- 「採択まで一任」
- 「丸投げOK」
- 「電子申請まで対応」
LP・セールスページも同様です。「申請をすべて代行します」「採択まで責任を持ってサポート」といった表現は、閲覧者への訴求としては有効でも、法的には書類作成の代行を約束していると受け取られかねません。全ページを見直し、「助言・情報提供の範囲で支援する」というスタンスが伝わる表現に統一することが必要です。
既存顧客との契約が更新のタイミングを迎える場合は、内容変更の理由と新たなサービス設計を丁寧に説明した上で、合意を取り直しましょう。変更内容を曖昧にしたまま継続すると、後からトラブルに発展するリスクがあります。
既存クライアントへの説明でクレームを回避する
サービス内容の変更を既存クライアントに伝えるとき、「これまでと同じことができなくなります」という伝え方ではクレームを招きやすくなります。重要なのは、変更の理由と、クライアントにとってのメリットを合わせて説明することです。伝え方の基本は「法改正への対応であり、サービスの品質向上が目的」という軸を崩さないことです。たとえば、
「2026年1月の行政書士法改正を受け、書類作成の部分を行政書士に担ってもらう体制に変更します。これにより、補助金受給後の返還リスクや法的トラブルのリスクが大幅に低減されます」
という説明であれば、クライアント側にとっても受け入れやすくなります。値下げではなく、より安心できる体制への移行として提示することがポイントです。
また、信頼できる行政書士を紹介できる状態を整えておくことが、クライアントの安心感に直結します。サービス縮小ではなく、適切な専門家とのチームで対応できるようになったという方向に話を持っていくことで、長期的な信頼関係を維持しやすくなります。書類作成のプロが加わることで採択率の向上も期待できる点も、前向きなメッセージとして伝えられるでしょう。
まとめ
2026年1月施行の行政書士法改正により、補助金コンサルの業務環境は大きく変わりました。改正のポイントは「いかなる名目によるかを問わず」という文言が条文に明記されたことです。コンサル料・成功報酬・会費など名目を変えても、実態として補助金申請書類の作成に関与している限り、無資格者の行為は違法と判断されます。法改正はビジネスの終わりではなく、経営の専門家としてより高い価値を提供できるポジションへ移行するきっかけでもあります。行政書士と連携する体制を整えることで、法令遵守と高品質なサービスを両立できます。
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