飲食業の創業計画書を書き始める前に固めておきたい3つの前提
創業計画書をいきなり上の欄から埋め始めると、後半の数字と前半の記述が食い違いやすくなります。記入を始める前に、下記の前提を確認しておきましょう。店のコンセプトを言葉にしておく
最初にやるべきなのは、開こうとしている店につき「誰に、何を、いくらで、どこで提供するのか」を一文で言い切れる状態にすることです。詳細かつ定量的な記述に統一感をもたせることが目的です。物件・席数・営業時間を仮でもよいので決める
コンセプトの次に決めるのが、店舗の物理的な条件です。創業計画における売上高の計算は席数と営業日数が出発点であり、これらを決定づけるのは物件であることから、契約前であっても「店舗をどこにする予定なのか」を明確にしなければなりません。自己資金と借入希望額のあたりをつける
自己資金と借入希望額についても、創業計画書作成における重要な前提です。とくに自己資金については、返済を要する分を除外し、金融機関の資料で証明可能な確かな金額でなければなりません。借入希望額の計算については、下記の手順で行うと良いでしょう。
- 設備資金の概算を出す(内装、厨房機器、物件取得費など)
- 運転資金の概算を出す(仕入、人件費、賃料などの数か月分)
- 1と2を合計し、開業に必要な総額を把握する
- 自己資金として使える金額を確定する
- 総額から自己資金を引き、借入希望額とする
【飲食業特化】公庫様式の創業計画書8項目の書き方
日本政策金融公庫の創業計画書は、A3用紙1枚に8つの記入欄が並んだ様式です。書式と業種別の記入例は公庫の公式サイトから無料でダウンロードでき、飲食業では洋風居酒屋の例が公開されています。欄はどれも小さめですので、書ききれない場合は別紙を添えて該当欄に別紙参照と記載すれば足ります。創業の動機|思いつきではないことを経歴と結びつけて書く
この欄で伝えるべきなのは、開業に至った経緯と、そこまでに積み上げてきた準備の中身です。具体的には、- いつからその業界にいたのか
- どの段階で独立を意識したのか
- そのために何をしてきたのか(市場調査、資格取得など)
- なぜ、その出店エリアや物件を選んだのか
- どんな店にしたいのか
経営者の略歴等|調理経験に加えて計数管理の経験も書く
略歴の欄は、勤務先の名称を並べるだけでは半分しか使えていません。それぞれの勤務先でどの業務を担当し、何ができるようになったのかまで書いてはじめて、事業を回せる人物だと伝わります。飲食店の開業では調理の腕前が注目されがちですが、審査で見られているのは店を経営できるかどうかです。具体的には、
- 保有する資格
- 仕入先との価格交渉
- 原価率の管理
- シフトの組み立て
- アルバイトの育成
- 売上や在庫の把握
取扱商品・サービス|メニュー、強み、ターゲット、競合を分けて書く
この欄は、取扱商品・サービスの内容、セールスポイント、販売ターゲット・販売戦略、競合・市場など企業を取り巻く状況の4つに分かれています。それぞれ聞かれていることが違いますので、まとめて書かず、区分に沿って埋めていきます。①取扱商品・サービスの内容
内容の欄には、実際に提供するメニューを価格とセットで書きます。すべてを並べる必要はなく、売上構成比の高いものから3つほど挙げれば十分です。ランチとディナーで主力が異なる場合は、それぞれから拾ってください。
②セールスポイント
……競合にない要素だけに絞ります。産地の生産者と直接取引していること、修業先で身につけた特定の技法、他店にない席の構成など、その店でしか成立しない要素を記述しましょう。
③販売ターゲット・販売戦略
……客層を年齢や性別だけでなく、どんな場面で来店するのかまで具体化します。近隣で働く人の平日の昼食なのか、休日の家族連れなのか、仕事帰りの一杯なのかで、必要な集客手段は変わってきます。新規の集客とリピーターの獲得は分けて考え、それぞれの手段を書いておくと戦略として読めます。
④競合・市場
……出店予定エリアにある同業態の店舗数、その価格帯、混雑する時間帯などを踏まえて自店の位置づけを記載しましょう。上記の情報は、実際に現地を視察することで得るものです。
また、メニュー表の案や内装のイメージ図を別紙として添付すると、担当者が店の姿を具体的に思い描けるようになります。文章だけで伝えきれない部分は、資料で補うほうが早いこともあります。
取引先・取引関係等|仕入先は締め日と支払日まで書く
この欄は販売先、仕入先、外注先について、名称とシェア、掛取引の割合、回収や支払の条件を記載します。飲食店の場合、販売先はほぼすべてが一般個人で、その場で代金を受け取る現金取引になります。したがってシェアは一般個人が高い比率を占め、掛取引の割合は基本的にありません。ただし一般個人とだけ書くのではなく、括弧書きで想定する客層を添えておくと、販売ターゲットの欄と一貫性が取れます。
仕入先については、名称、仕入全体に占めるシェア、掛取引の割合、締め日と支払日まで記入します。飲食店の仕入は月末締めの翌月払いといった掛取引になることが多く、この条件が資金繰りに直結するためです。
注意したいのは、仕入先が決まらないまま申し込むケースです。仕入の目処が立っていない状態では、開業できるかどうかそのものが不確かだと判断されます。契約書までは不要ですが、どの業者からどの商品を仕入れるかは事前に固めておいてください。
従業員|人数そのものより「その人数にした理由」が問われる
この欄に記入するのは、3か月以上の継続雇用を予定している従業員の人数です。個人事業主として開業する場合、本人は従業員に含みません。誰も雇わずに一人で始めるなら0と記入します。記入する内容は人数だけですが、面談ではその人数にした根拠を尋ねられます。席数と営業時間から必要な人員を逆算し、ピークの時間帯とそうでない時間帯でどう回すかを説明できるようにしておいてください。20席の店を昼夜通しで営業するなら「混雑時はホールとキッチンに何人ずつ、落ち着いた時間帯は何人体制」といった組み立てが答えられれば十分です。
募集方法も定番の質問です。求人サイトを使うのか、ハローワークに出すのか、前職での人脈を頼るのか。開業前から店舗のアカウントを作って告知する予定があるなら、それも答えになります。ここで言葉に詰まると、採用の見通しが立っていないと受け取られかねません。
借入の状況|事業と関係のない借入も書く
ここには、申込時点で抱えている借入をすべて記載します。住宅ローンや自動車ローン、カードローン、奨学金など、開業する事業とまったく関係のない個人的な借入も対象です。借入先の金融機関名、使いみち、残高、年間の返済額を欄に沿って埋めていきます。公庫がこの欄を見ているのは、新たに融資した資金がきちんと返済されるかを判断するためです。既存の返済額が大きければ、そこに事業資金の返済が上乗せされることになり、資金繰りが厳しくなる可能性があります。年間の返済総額と、事業の見通しで算出した利益を並べて、無理のない水準かどうかが確認されます。
もうひとつの観点が、借換目的での利用でないかという点です。公庫の創業融資は、既存の借金を返すための資金としては使えません。消費者金融などからの借入が多額にある場合、借換を疑われることがありますので、その資金を何に使ったのか、返済がどう進んでいるのかを説明できるようにしておいてください。
必要な資金と調達方法|左右の合計を必ず一致させる
この欄は表が左右に分かれており、左側に開業に必要な資金、右側にその資金をどこから調達するかを記入します。公庫がとくに重く見る欄であり、多くの人が書き方に迷う場所でもあります。左側の必要な資金は、設備資金と運転資金に分けて記入します。設備資金には物件の取得費、内装工事費、厨房機器、看板や什器の購入費などが入り、業者の見積書がある項目は見積先の名称も併記します。運転資金には仕入代金、人件費、賃料、水道光熱費、広告費といった開業後に継続して発生する費用を、必要な月数分だけ計上します。
右側の調達方法は、資金の出どころごとに行が分かれています。それぞれ何を書くのかを整理すると次のとおりです。
| 調達方法の区分 | 記入する内容 |
| 自己資金 | 自分で用意し、開業に充てられる資金 |
| 親、兄弟、知人、友人等からの借入 | 借入先ごとの金額と返済条件 |
| 日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入 | 今回申し込む希望額 |
| ほかの金融機関等からの借入 | 併用する銀行や信用金庫等からの借入予定額 |
親族から受け取る資金は、贈与なのか借入なのかをはっきりさせてください。借入として記入するなら、いつまでにいくらずつ返すのかを答えられる状態にしておく必要があります。区分が曖昧なまま自己資金に含めてしまうと、後で説明がつかなくなります。
そして、この表で最も基本的な決まりが、左側の合計と右側の合計を一致させることです。もしずれが出た場合、右側の借入希望額を増減させて帳尻を合わせたくなりますが、先に見直すべきは左側の内訳です。計上漏れの費用はないか、逆に開業時点では不要な設備が入っていないか。使いみちを詰め直したうえで、借入希望額を決めてください。
事業の見通し|創業当初と軌道に乗った後を分けて示す
最後の欄では、創業当初と、1年後または軌道に乗った後の2時点について、売上高、売上原価、経費、利益を記入します。融資した資金が返済されるかを収益面から判断する欄ですので、数字の作り方が問われます。軌道に乗った後がいつを指すのかは、自分で設定して説明できるようにしておいてください。飲食店では開業から数か月かけて客数が安定していくケースが多く、その期間の見立てには根拠が必要です。半年後を想定するなら、なぜ半年なのかを言葉にできる状態にしておきます。
経費の欄は、人件費、家賃、支払利息、その他に分けて計上します。支払利息は借入額と返済期間から概算できますので、公庫の返済シミュレーションなどで確認しておくと数字がぶれません。家賃は候補物件の賃料をそのまま入れます。
飲食店の創業計画書で「売上高の根拠」を組み立てるときのポイント
創業計画書のなかで最も厳しく見られるのが、売上をどう見込んだかという部分です。金額の大小より、その数字にたどり着くまでの計算過程が読まれていると考えるべきです。飲食店には席数を起点にした計算の型があり、それに沿って組み立てれば、根拠のある数字として示しやすくなります。基本は席数×回転率×客単価×営業日数
飲食店の月間売上は、席数、回転率、客単価、月間営業日数の4つを掛け合わせて算出するのが基本形です。たとえば、20席の店で1日あたり2回転、客単価2,000円、月25日営業であれば、20×2×2,000×25で月商100万円とのようになります。この4つのうち、席数と営業日数は自分で決められる確定値です。物件のレイアウトが決まれば席数は動きかず、営業日数も定休日の設定しだいで確定します。ここで気をつけたいのが、暦日の30日をそのまま使わないことです。週1日の定休日に加えて、仕込みや設備の手入れに充てる日、年末年始の休みまで差し引いた実際の営業日数で計算してください。日数を多めに置くと、月商全体が実態から離れていきます。
一方、回転率と客単価は推定値です。開業前ですから実績がなく、どこかから持ってくるしかありません。したがって、この2つについては何を根拠にその数字を置いたのかを説明できる状態にしておく必要があります。
計算式そのものを事業の見通しの根拠欄に書き込むことも忘れないでください。月商100万円とだけ書かれていれば担当者には検証のしようがありませんが、掛け算の式が並んでいれば、どの数字が妥当でどこに無理があるかを追いかけられます。式を開示すること自体が、数字を積み上げて考えた証拠になります。
ランチとディナー、平日と週末は分けて計算する
先ほどの計算式をそのまま一本で使うと、精度が落ちる場合があります。昼と夜では客単価も回転率も大きく変わるためです。ランチは単価1,000円で2回転、ディナーは単価3,000円で1回転、といった具合に条件が異なる営業を平均値でならしてしまうと、根拠として弱くなります。そこで、時間帯ごとに別々に算出し、最後に合算する手順を踏みます。ランチの売上とディナーの売上をそれぞれ計算し、足し合わせて月商とする形です。同じ考え方で、平日と週末の来客数に差が出る業態であれば、営業日数も平日22日、週末8日のように分けて設定します。
たとえば30席の店で、次のように分解できます。
| 区分 | 計算式 | 月間売上 |
| ランチ(平日22日) | 1,000円×30席×1.5回転×22日 | 99万円 |
| ディナー(平日22日) | 3,000円×30席×0.7回転×22日 | 138.6万円 |
| ディナー(週末8日) | 3,000円×30席×1.2回転×8日 | 86.4万円 |
この形にすると、どの時間帯が収益の柱なのかが自分でも見えてきます。上の例ではディナーが売上の7割を占めていますので、人員配置も仕入も夜に厚く寄せるべきだと判断できます。計画書の数字合わせのためではなく、開業後の運営方針を決めるためにも役立つ作業です。
そして、こうして分解して示せること自体が、業態を理解している人物だという印象につながります。時間帯ごとの構造を把握せずに店を回すのは難しいと分かっている担当者からすれば、丸めた数字を出す申込者とは見え方が変わってきます。
回転率と客単価は近隣店の実態から置く
「推定値である回転率と客単価を、どこから持ってくるか」は売上の根拠づくりの中心になります。回転率は業態と時間帯で相場が異なります。回転を前提に設計されたラーメン店やそば店と、ゆっくり過ごしてもらうカフェやレストランとでは、同じ席数でも1日に受け入れられる客数がまるで違います。インターネットで見つけた一般的な数値をそのまま当てはめると、自店の業態と噛み合わない数字になりかねません。
客単価は、メニュー構成と想定される注文パターンから組み立てます。ランチで1,000円の定食に200円のドリンクを付ける人が半分いれば、平均は1,100円前後になります。ディナーで一人あたり何品注文し、アルコールをどれだけ飲むかを想定すれば、単価が見えてきます。メニューの価格設定と単価が整合していれば、取扱商品・サービスの欄との一貫性も取れます。
原価率・人件費率・家賃比率の目安で検算する
売上高が出たら、そこで終わりにせず、費用の比率から逆に検算します。売上に対して原価や人件費がどの程度の割合になるかを確認すると、計画に無理があるかどうかが見えてきます。原価率の水準は業態によって違います。素材の質で勝負する店や、鮮魚を扱う業態は原価が高めになりますし、麺類やドリンク中心の業態は低めに収まります。自店の業態に合った比率を使ってください。人件費率も、調理の手間が多い業態ほど高くなる傾向があります。
とくに確認したいのが家賃の比率です。売上に占める家賃の割合が大きすぎると、どれだけ客数を伸ばしても利益が残らない構造になります。物件を決める前にこの計算をしておくと、賃料の上限を判断する材料にもなります。
軌道に乗った後の売上を伸ばしすぎない
事業の見通しの欄には、創業当初と軌道に乗った後の2時点を書きます。ここで多くの人がやってしまうのが、将来の数字を大きく描くことです。基本の姿勢としては逆で、売上は控えめに、経費は多めに見積もっておきます。そのうえで返済ができる計画になっていれば、余裕のある計画として読まれます。控えめな数字で組んでおけば、開業後に想定を上回ったときにも慌てずに済みます。
軌道に乗った後の売上を創業当初から大きく伸ばした場合、なぜそこまで伸びるのかを必ず問われます。一般的には創業当初の1.2倍から1.3倍程度に収まることが多く、それを超える伸びを見込むなら理由が要ります。回数券やポイントカードでリピーターを増やす、開業から数か月かけて地域での認知を広げる、昼の営業を追加する。こうした具体的な施策と結びついていれば、伸びの根拠として成立します。
もうひとつ確認しておきたいのが、創業当初の時点で返済が成り立っているかという点です。軌道に乗れば返せるという計画では、乗るまでの期間をどう乗り切るのかが説明できません。控えめな数字のほうでも返済原資が出ていることを、自分の手で検算しておかなくてはなりません。
飲食店の資金計画で失敗しないための考え方
資金計画で見られているのは、いくら必要かという総額よりも、その内訳が妥当かどうかです。とくに設備資金と運転資金の区分を誤ると、資金の使いみちの説明がつかなくなり、計画全体が組み直しになります。見積書や通帳といった裏づけ資料をそろえたうえで数字を置くのが前提になります。設備資金と運転資金の線引きを明確にする
必要な資金の欄は、設備資金と運転資金の2つに分かれています。この区分は単なる分類ではなく、公庫が資金の使いみちを確認するための枠組みであり、どちらに入るのかを正しく判断しなければなりません。設備資金の定義
開業の準備段階で一度だけ発生する費用です。物件を借りるための保証金や礼金、内装や電気工事の費用、コンロや冷蔵庫といった厨房機器の購入費、テーブルや椅子などの什器、看板の製作費、店舗のホームページ制作費などが該当します。運転資金の定義
店を開けた後に毎月かかり続ける費用です。食材や飲料の仕入代金、従業員の給与、店舗の賃料、水道光熱費、消耗品費、通信費、集客のための広告費などがここに入ります。売上が立てばその中から支払っていくものですが、開業直後は売上だけでは賄いきれないため、あらかじめ資金として確保しておく必要があります。運転資金は軌道に乗るまでの数か月分を見込む
開業初日から想定どおりの売上が立つ店はまずありません。店の存在が知られ、常連が付き、客足が安定するまでには時間がかかります。運転資金は、その助走期間を支えるための資金です。金額の目安としては、売上がほとんどなかったとしても、店舗と雇用を維持できる金額を算出します。飲食店が軌道に乗るまでには3か月から6か月程度かかるとされることが多く、少なくとも3か月分は確保しておきたいところです。
見込むべき費用の優先順位もはっきりしています。家賃と人件費は、客が一人も来なかった月でも同じ額が出ていきます。仕入や水道光熱費は売上が少なければその分減りますが、この2つは売上と連動しません。まずこの固定的な費用の数か月分を押さえ、そのうえで仕入や諸経費を足していく順序で計算してください。
なお、運転資金を必要とする月数の考え方は、面談で説明できるようにしておかなくてはなりません。オフィス街の立地で平日の昼が主力なら比較的早く客足が読める一方、住宅街で夜の営業が中心なら認知に時間がかかります。業態と立地から導いた月数であれば、根拠として通ります。
設備資金は見積書の金額と一致させる
設備資金は、金額を自分で見積もらずに、業者から取った見積書の数字をそのまま転記しましょう。計画書を書き始める前に、内装業者や厨房機器の販売店に相談し、見積書を手元に用意しておく順序になります。公庫の様式には、必要な資金の項目ごとに見積先を書く欄があります。ここに業者名を記載しておくと、担当者は見積書と照らして金額を確認できます。裏づけのある数字だと分かれば、その項目について改めて疑問を持たれることはありません。
反対に「内装費300万円」というように切りのよい数字だけが並んでいると、実際に調べた金額なのかどうかが判断できません。丸めた数字は根拠がないものとして扱われやすく、面談での質問も増えます。
金額を正確に書く理由はもうひとつあります。融資が実行された後、資金を計画どおりに使ったことを示す資料の提出を求められる場合があるためです。見積書と実際の支払額が大きく食い違っていれば、その説明が必要になります。
自己資金はいくら必要で、どう見られているのか
自己資金は、審査のかなり早い段階で確認される項目です。金額の多寡だけでなく、そのお金をどうやって用意したのかまで見られていると考えなくてはなりません。最終的な融資額は自己資金との関係で判断される面があり、必要な総額から逆算して準備しておく必要があります。開業に1,000万円かかるとして、自己資金がわずかしかない状態では、希望額に届かないことがあります。物件を探し始める前に、いくら手元に用意できるのかを確認しておくと、店舗の規模や設備の内容を現実的な範囲で検討できます。
評価につながるのが、通帳に残る積み立ての履歴です。毎月一定額をこつこつ貯めてきた記録があれば、それは開業を計画的に準備してきた証拠になります。同時に、収入の範囲で計画的にお金を管理できる人物だという判断材料にもなります。単純に金額を用意するのではなく、そこに至る過程が読まれているということです。
創業計画書と並行して進める飲食店の開業手続き
融資と許認可はまったく別の手続きです。公庫の審査が通っても保健所の営業許可がなければ店は開けませんし、その逆もまた同じで、どちらも同時に進めておく必要があります。許可が下りる時期が開業日を左右しますので、開店予定日から逆算した工程管理が欠かせません。飲食店営業許可と食品衛生責任者の取得
飲食店を営業するには、店舗の所在地を管轄する保健所から営業許可を受ける必要があります。これは食品衛生法に基づく手続きで、施設が定められた基準を満たしているかどうかが審査の対象です。あわせて必要になるのが食品衛生責任者です。施設ごとに1名を置くことが求められており、店主本人が兼ねるのが一般的です。資格は各都道府県の食品衛生協会などが実施する養成講習会を1日受講すれば取得でき、調理師や栄養士、製菓衛生師の資格を持つ方は受講が免除されます。
飲食店営業許可は、事前相談、書類の提出、施設の完成後に行われる立入検査、許可書の交付という順序で進みます。申請から許可までに要する期間は自治体によって異なります。
こうした同時並行の手続きに不安があるときは、早い段階で行政書士に相談しましょう。地域の保健所の運用を把握している事務所であれば、図面の段階で基準に触れそうな箇所を指摘してもらえますし、申請の時期も工程に合わせて逆算してもらえます。
深夜に酒類を提供する場合の届出
深夜0時を過ぎて酒類を提供する営業を行う場合は、保健所の営業許可とは別に、営業を開始する日の10日前までに警察署への届出が必要になります。風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく深夜における酒類提供飲食店営業開始届出という手続きです。対象になるのは、主として酒類を提供する業態です。居酒屋やバー、スナックなどが該当し、ラーメン店や定食屋のように食事が主体の店であれば、深夜に酒を出していても対象外となる場合があります。ただし判断は個別の営業実態によりますので、深夜営業を予定しているなら管轄の警察署で確認しておかなくてはなりません。
資金調達と許認可をまとめて行政書士に依頼するメリット
創業計画書の作成と開業の許認可は、まとめて行政書士に依頼することもできます。この2つを別々の相手に相談すると、同じ説明を繰り返すことになりますし、物件の条件や工事の内容といった前提が双方に正しく伝わっていないと、あとで食い違いが出てきます。ここでは、まとめて任せる利点と、依頼範囲の考え方、事務所を選ぶときの目安を整理します。
許認可と計画書を同じ相手が把握している利点
行政書士は、飲食店営業許可の申請書類の作成や、深夜における酒類提供飲食店営業開始届出を業務として扱っています。風俗営業許可のように要件の複雑な手続きも取り扱い範囲です。許認可を任せられる相手に、あわせて創業計画書の相談もできる点が、まとめて依頼する場合の実際的な利点になります。内容の面でも、両方を同じ相手が把握している状態には意味があります。飲食店の許認可の要件は、内装の設計や設備の仕様に直結するからです。手洗い設備やシンクの数、客席と調理場の区画といった条件を満たすための工事費は、そのまま創業計画書の設備資金に反映されます。深夜営業を予定していれば、用途地域の制約が物件選びの段階から効いてきますし、営業時間が変われば売上の計算前提も変わってきます。許認可の要件を踏まえたうえで計画書を組み立てられれば、後から数字を直す手間が減ります。
依頼する範囲は切り分けられる
依頼は、全部任せるか自分で全部やるかの二択ではありません。計画書は自分で書き、数字の根拠だけ見てもらう。許認可の手続きは任せて、融資は自分で申し込む。こうした切り分け方もできますので、どこに手が回らないのかを整理したうえで相談してみてください。自分で書いた計画書に第三者の目を通してもらうだけでも、面談で突かれそうな箇所は見えてきます。売上の前提が甘い、資金の内訳に計上漏れがある、動機と略歴の年月が合っていないなどのこうした指摘は、書いた本人には気づきにくいものです。
費用は依頼する範囲によって幅がありますので、着手前に見積もりを確認しておきましょう。許可申請の代行料金は手続きごとに設定されているのが一般的で、そこに証紙代などの実費が加わります。計画書の作成支援については、相談のみ、書類の確認、一から一緒に組み立てる、といった段階で料金が変わります。契約前に、どこまでを含んだ金額なのかを書面で示してもらうと確実です。
事務所を選ぶときに見ておきたい点
事務所を選ぶ際は、飲食店の開業を扱った実績があるかどうかを見てください。同じ許認可でも、居酒屋とカフェ、テイクアウトを併設する店では論点が違います。業態ごとの勘所を知っている相手であれば、相談の初回から具体的な話に入れます。もうひとつの目安が、出店予定の地域で手続きを重ねているかどうかです。保健所の運用には自治体ごとに細かな差がありますので、その地域を扱い慣れた事務所なら、事前相談で何を確認すべきかも把握しています。初回の相談を無料としている事務所も多く、まずは状況を話してみるところから始められます。
まとめ
創業計画書のなかで結果を大きく左右するのが、売上高の根拠と資金計画の整合の2点になります。売上は控えめに、経費は多めに置いたうえで返済が成り立つかを自分の手で確かめておけば、面談で問われても答えに詰まることはありません。そして、融資の準備と並行して進めたいのが営業許可などの手続きです。許可が下りなければ開店できませんので、開業日から逆算した工程を早い段階で組んでおきましょう。内装の設計が施設基準に関わることを考えると、工事の着手前に確認しておきたいところです。
計画書の数字に確信が持てない、許認可の要件が判断できないという段階であれば、専門家に相談する選択肢があります。申請Naviでは、地域や取扱分野から飲食店の開業に詳しい行政書士を探せます。