改造自動車届出制度とは【基礎知識】
改造自動車届出制度とは、自動車の一部を改造した際に、その改造内容が保安基準に適合しているかどうかを事前に確認するためのしくみです。これまでの改造車の届出は、変更の内容を書面にまとめて事前に提出し、審査を受ける必要がありました。この事前の書面審査で改造内容や使用パーツの詳細が確認され、問題がなければ次に現車審査、いわゆる構造等変更検査を受けるという二段階の流れになっています。
【注意】特定の構造や装置ではなく、車体自体の寸法や用途(車検証に記載されている事項)が変わるときは、改造届ではなく構造変更車検が必要です。構造変更車検の詳細はこちらをご覧ください。
改造自動車届出制度はいつから・どう変わる?
自動車技術総合機構は、2026年(令和8年)3月に改造自動車届出制度の取扱いを見直し、同年10月1日から新しい運用を適用すると発表しました。ここでは審査方法の変更点や対象となる装置、適用時期について詳しく見ていきます。安全性が明らかであれば現車審査だけになる
今回の見直しでは、同一型式内に設定されている装置や、一般に流通している自動車部品を用いた改造のうち一定の条件を満たすものについて、一定の安全性が確保されていると判断し、審査方法を事前書面審査と現車審査から現車審査のみに移行します。上記の見直しは、すべての改造が対象になるわけではなく、条件を満たす改造に限って書面審査が省略されるしくみです。
新規検査等届出制度への統合でオンライン届出が可能になる
もうひとつの大きな変更点は、改造自動車届出制度が新規検査等届出制度に統合されることです。統合後は改造自動車の審査も新規検査等書面審査要領に基づいて実施され、オンライン届出を含めた手続きの効率化が図られます。自動車関連の手続きは電子化が進んでおり、電子車検証を活用したオンライン手続きも広がっています。電子車検証のしくみについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「電子車検証で一部の手続きがオンラインでできる!新しい車検証の特徴とメリットを解説」
これに伴い、届出書等の提出先も、改造自動車の新規検査等を申請する運輸支局等と同一敷地内にある事務所等に変更されます。
また、これまで交付されていた改造自動車審査結果通知書についても、交付が廃止されることになりました。
事前書面審査が不要になる条件
改造自動車届出制度の見直しで事前書面審査が不要になるのは、改造車のうち、改造の対象が下記となるものです。- 動力伝達装置(トランスミッション、プロペラシャフトなど)
- 走行装置(ホイール、アクスルなど)
- 緩衝装置(サスペンション、スプリングなど)
- 連結装置(ヒッチメンバーなど)
- 同一の型式内に設定されている装置を取付方法等を変更せずに用いた改造(純正パーツを加工せず使用する場合)
- 乗車定員9人以下の乗用自動車もしくは車両総重量3.5トン以下の貨物自動車において、一般に流通している自動車部品を無加工で用いた改造(市販パーツを加工せずに使用する場合)
新しい制度が適用されるのは2026年10月1日から
改造自動車届出制度の見直しによる取扱いは、令和8年10月1日から始まります。改造を予定する人・改造依頼を受けた工場は、上記の適用開始日以降に施工するのもひとつの方法です。新制度で届出不要となる改造車の条件【具体例あり】
今回の見直しによって事前書面審査を省略できる(届出が不要になる)のは、基本的に「純正パーツや一定の市販パーツを、無加工で取り付けた場合」に限られます。ここで言う加工とは、溶接やボルト穴・ネジ穴の加工などといった複雑な作業を指します。こうした複雑な作業のない、いわゆる「ボルトオン」あるいは「ポン付け」といった簡単な作業で部品の脱着をすることが、改造車につき届出不要となる条件です。
※参考:改造自動車届出制度の見直しについて(自動車技術総合機構)、審査事務規程の一部改正について(第72次改正)
純正パーツを取り付ける場合
事前書面審査が不要になる1つ目のケースは、同一の型式内に設定されている純正の装置を、部品加工することなくネジやボルトなどで取り付ける改造です。ここでいう同一の型式内には、いわゆるOEM車として販売されている車種も含まれます。対象となるのは動力伝達装置、走行装置、緩衝装置、連結装置の4つの装置で、いずれも自分の車の型式にもともと設定されている部品を無加工で取り付けることが条件になります。
たとえば、同一型式内に設定されている純正のエアサスペンションやリーフサスペンション、サスペンションアームへ無加工で交換するようなケースが、このパターンに当てはまります。
一定の基準を満たす市販パーツを取り付ける場合
2つ目のケースは、一般に流通している市販パーツを無加工で取り付ける改造です。こちらは4つの装置すべてが対象になるわけではなく、緩衝装置の改造のみに限られている点が純正パーツのケースとの違いになります。対象となる車両も、乗車定員9人以下の乗用自動車、または車両総重量3.5トン以下の貨物自動車に限定されます。使用するパーツについては、自動車や装置、部品の製作を業とする者が製造した、一般に流通している部品であることが条件です。
具体的には、市販のショックアブソーバーやコイルスプリングを無加工で取り付けるようなケースが、この条件に該当します。
引き続き届出(書面審査)が必要になる改造車とは
今回の見直しで届出が不要になるのは、条件を満たす一部の改造に限られており、それ以外の改造については従来通り事前書面審査が必要です。ここでは、見直しの対象から外れる代表的なケースを確認していきます。エンジン・ブレーキを変更する場合
今回の見直しで事前書面審査が不要になるのは、動力伝達装置、走行装置、緩衝装置、連結装置の4つの装置に関する改造です。原動機であるエンジンや、制動装置であるブレーキは、この4つの装置には含まれていません。エンジンやブレーキは走行性能や停止性能に直結する部分であり、単純な強度の確認だけでなく性能面の確認も欠かせないため、今回の緩和の対象から外れています。
ワンオフパーツ・自作パーツを使用する場合
市販パーツを使った改造が届出不要になるためには、そのパーツが一般に流通している部品であることが条件になります。そのため、世界に一つしかないワンオフの手作り部品を用いる改造は、この条件に当てはまりません。また、既存の市販部品であっても、それを切断したり削ったりして加工した場合は、もとの一般流通部品とは異なるものとみなされ、対象から外れてしまいます。手作りのブラケットや、切断・溶接などの加工を施したサスペンションパーツを使用する改造は、上記のケースに該当します。
ボルト穴の拡大やブラケット加工などを行う場合
すでに説明したとおり、今回の見直しで緩和されるのは、あくまで取付方法などを変更することなく、いわゆるボルトオンで装着できる改造に限られます。見た目には小さな作業であっても、取り付けのためにボルト穴を数ミリ広げたり、干渉を避けるためにブラケットを曲げたりする加工を行った場合は、この条件から外れてしまいます。パーツそのものが純正品や市販品であっても、取り付けの過程で何らかの加工が加わっているかどうかが、届出の要否を分ける大きな判断基準になります。
なお、改造内容によっては改造自動車届出ではなく構造変更車検が必要になる場合もあります。判断に迷う方は、構造変更車検についてもあわせて確認しておきましょう。
「構造変更車検とは?費用・必要書類・手続きの流れを徹底解説」
改造自動車届出制度の見直しで注意すべきポイント
改造車の一部が届出が不要になったからといって、どのような改造でも自由に行えるわけではありません。ここでは見直しの内容を理解するうえで、特に誤解しやすいポイントを整理しておきます。届出不要でも保安基準への適合は厳しくチェックされる
事前書面審査が不要になることは、車の安全性に関する審査そのものが不要になることを意味しているわけではありません。届出が不要な改造であっても、新規検査や予備検査、構造等変更検査といった現車審査の場面では、保安基準に適合しているかどうかがそのつど確認されます。先進安全装備(センサー・エーミング)への影響にも注意
自動ブレーキなどの先進安全装備を搭載した車では、足回りやボディの改造によってセンサーの取り付け角度がずれ、正しく機能しなくなる可能性があります。緩衝装置などの改造を検討する際は、先進安全装備への影響についても販売店や整備工場に確認しておくと安心です。先進安全装備を搭載した車両では、OBD検査の対象になるケースもあります。検査の対象車両や流れについては、こちらの記事をご覧ください。
「OBD検査とは?整備工場向け|対象車両の判定・実施手順・電子保安基準適合証(保適証)の発行フローを解説」
改造自動車届出制度の見直しで得られるメリット
今回の見直しは、単に手続きの一部を省略するだけでなく、改造を楽しむユーザーにとってもいくつかの利点をもたらします。ここでは主なメリットを見ていきます。書面審査の待ち時間がなくなる
条件を満たす改造については、事前書面審査が省略され、現車審査のみで手続きが完了するようになります。これまでは書面を提出してから承認を待ち、そのあとで現車審査を受けるという二段階の流れが必要でしたが、この二度手間が解消されることになります。その結果、審査にかかるリードタイムが短縮され、改造を終えた車をより早く検査に持ち込めるようになります。書類作成費・代行手数料の負担軽減も期待できる
事前書面審査そのものが不要になる改造については、これまで必要だった書類作成の手間が少なくなります。行政書士などの専門家に依頼していた人にとっても、依頼する作業の量が減ることで、代行にかかる費用がある程度抑えられる可能性があります。まとめ
改造自動車届出制度の見直しでは、純正パーツや一定の市販パーツを無加工で取り付ける改造について、事前書面審査が不要になり、現車審査のみで手続きが完了するようになります。一方で、ワンオフパーツの使用や加工を伴う改造、エンジン・ブレーキの変更、車体形状や乗車定員に関わる改造などは、引き続き従来通りの届出が必要です。ご自身での手続きに不安がある方は、事前に行政書士などの専門家に相談することがおすすめです。