新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、令和8年度から始まった中小企業向けの補助金制度です。旧「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」が統合されたもので、革新的な製品開発から新市場への進出、海外展開まで幅広く支援します。対象となるのは、日本国内に本社および事業実施場所を有する中小企業者や小規模事業者です。業種を問わず、製造業からサービス業、飲食業まで幅広い事業者が申請の対象になります。従業員規模によって申請できる枠や補助上限額が変わってくるため、まずは自社の規模を確認しておくと後の検討がスムーズです。
※参考:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは(事務局公式サイト)
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の3つの枠の比較と活用例
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金には3つの申請枠があり、それぞれ補助額や想定する事業内容が異なります。| 申請枠 | 補助上限額(賃上げ特例適用時) | 補助率 |
|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 最大2,500万円(3,500万円) | 中小企業1/2、小規模・再生事業者2/3 |
| 新事業進出枠 | 最大7,000万円(9,000万円) | 中小企業1/2 |
| グローバル枠 | 最大7,000万円(9,000万円) | 2/3 |
革新的新製品・サービス枠の活用例
革新的新製品・サービス枠は、既存事業を土台にしながら、技術的な革新性のある新製品や新サービスを生み出すことで、事業の高付加価値化や生産性向上を目指す枠です。すでに取り組んでいる事業の延長線上で新しい挑戦をしたい事業者に向いています。製造業であれば、既存の製造技術に新しい加工方法を組み合わせて高機能な部品を開発したり、これまで手作業で行っていた工程を自動化する専用設備を導入したりする取り組みが該当します。サービス業であれば、これまで提供していたサービスにITを組み合わせて新しい顧客体験を生み出す取り組みや、業界内でまだ普及していない独自のサービスメニューを開発する取り組みが想定されます。
投資内容としては、新製品や新サービスの開発に必要な機械装置の導入費、専用システムの構築費が中心になります。既存の設備や技術を活かしながら、そこに新たな要素を加えていく発想が、この枠を活用するうえでの基本的な考え方です。
新事業進出枠の活用例
新事業進出枠は、既存事業とは異なる新しい市場や高付加価値事業への進出を後押しする枠です。本業とは別の分野に挑戦したい中小企業に向いており、業種転換や事業の多角化を検討している事業者が主な対象になります。たとえば、これまで法人向けの受託加工を手がけていた製造業者が、自社ブランドの消費者向け商品を新たに展開するケースや、飲食店を運営していた事業者が食品加工事業へ進出するケースなどが考えられます。いずれも、これまでの事業とは異なる新しい市場に踏み出す点が特徴です。
この枠では、既存事業との関連性やシナジーが求められる一方で、新規性や市場性の高さが審査で重視されます。単に新しいことを始めるだけではなく、自社の強みを活かしながら新市場でどのように価値を生み出すかを、事業計画のなかで明確に示す必要があります。
グローバル枠の活用例
グローバル枠は、海外市場の開拓や輸出に向けた国内の体制強化を支援する枠です。これから海外展開を目指す事業者や、すでに一部輸出を行っているものの体制を強化したい事業者に向いています。具体的には、海外の消費者や取引先に向けた新製品を開発する取り組みや、既存製品を海外の規格や需要に合わせて改良する取り組みが該当します。また、輸出に必要な国内の生産体制や物流体制を整備するための設備投資も対象になります。
この枠でほかの2枠と異なるのは、海外市場に関する調査や販路開拓の見通しが審査のポイントになる点です。海外のどの市場を狙うのか、どのような需要が見込まれるのかを具体的に示せるかどうかが、採択の可否に影響してきます。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の補助上限額・補助率
補助上限額と補助率は、従業員規模と申請枠によって細かく設定されています。あわせて賃上げに取り組む事業者向けの特例もあるため、自社が使える金額を正確に把握しておくことが大切です。※参考:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金公募要領(第1回)
従業員規模別の補助上限額(3枠で比較表)
補助上限額は従業員規模が大きくなるほど高く設定されており、5人以下の小規模な事業者から101人以上の事業者まで段階的に区分されています。革新的新製品・サービス枠と、新事業進出枠・グローバル枠とでは上限額の水準が大きく異なる点も特徴です。| 従業員規模 | 革新的新製品・サービス枠 | 新事業進出枠 | グローバル枠 |
|---|---|---|---|
| 5人以下 | 750万円 | 2,500万円 | 2,500万円 |
| 6〜20人 | 1,000万円 | 4,000万円 | 4,000万円 |
| 21〜50人 | 1,250万円 | 5,500万円 | 5,500万円 |
| 51〜100人 | 2,000万円 | 7,000万円 | 7,000万円 |
| 101人以上 | 2,500万円 | 7,000万円 | 7,000万円 |
以上のように、従業員規模と枠の組み合わせによって使える金額の上限が変わってきます。自社の規模と目指す事業内容を照らし合わせることで、どの枠で、どの程度の投資規模まで補助を受けられるかを判断する材料になります。
賃上げ特例・最低賃金引上げ特例による補助額・補助率の変化
賃上げに取り組む事業者には、補助上限額が上乗せされる特例が用意されています。従業員の給与総額を一定以上増やす計画を持つ事業者は、通常の上限額よりも高い金額での申請が可能になります。| 申請枠 | 通常の上限額 | 賃上げ特例適用時の上限額 |
|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 750万〜2,500万円 | 1,000万〜3,500万円 |
| 新事業進出枠 | 2,500万〜7,000万円 | 3,500万〜9,000万円 |
| グローバル枠 | 2,500万〜7,000万円 | 3,500万〜9,000万円 |
これらの特例を活用するには、賃上げの計画や最低賃金の状況について、事業計画のなかで具体的な数値を示し、必要な証明書類を提出する必要があります。単に「賃上げを検討している」という段階では特例の対象にならないため、計画段階から数値目標を明確にしておくことが求められます。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の対象経費と申請の基本要件
対象経費は枠によって範囲が異なり、事業計画には付加価値額の増加や賃上げなど、採択後に達成すべき基本要件も設けられています。経費の使い方と要件の両方を事前に理解しておくことが、計画づくりの土台になります。対象経費の一覧
対象経費の中心となるのは、機械装置費とシステム構築費です。新製品や新サービスの開発に必要な専用機械の導入費、業務システムやソフトウェアの開発・購入費が対象範囲に含まれます。建物費は、新事業進出枠やグローバル枠で対象となる経費です。新しい事業を行うための建物の改修や、事業実施に必要な施設の整備にかかる費用が該当します。革新的新製品・サービス枠では、原則として建物費は対象外となっている点に注意が必要です。
広告宣伝費や販売促進費といった無形の経費も、一定の条件のもとで対象になります。新製品や新サービスの販路を広げるための展示会出展費や広告費などが該当し、グローバル枠では海外旅費や通訳・翻訳費も対象経費に含まれます。
一方で、対象外となる経費も存在します。汎用性の高いパソコンや事務用品の購入費、事業に直接関係しない不動産の取得費などは、対象経費として認められません。「事業に関係する費用だから使えるはず」と思い込んでしまうケースが多いため、申請前に対象経費の範囲を公募要領で細かく確認しておく必要があります。
クリアすべき4つの基本要件
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、事業計画のなかで達成を目指す基本要件がいくつか設定されています。代表的なものが、付加価値額の増加要件です。事業計画期間内に、付加価値額を一定の年率で増加させる数値目標を設定し、その達成を目指します。賃上げ要件も重要な項目です。従業員の給与総額を事業計画期間中に一定以上増加させることが求められ、これは前章で紹介した賃上げ特例とも関連しています。
さらに、事業計画期間全体を通じた成長目標として、売上高や事業所内最低賃金の向上など、複数の指標をあわせて達成することが求められます。これらの目標は、単なる希望的な数値ではなく、採択後に実際に達成を目指すべき義務として位置づけられている点を理解しておく必要があります。
未達成の場合の返還リスク
基本要件を達成できなかった場合、状況によっては補助金の一部または全部を返還しなければならないケースがあります。事業計画に記載した数値目標と実績が大きくかけ離れた場合、返還が発生する典型的な事例となります。こうしたリスクを避けるためには、事業計画を作成する段階で、無理のない実現可能な数値目標を設定することが欠かせません。景気動向や自社の実行体制を踏まえずに高すぎる目標を掲げてしまうと、後になって達成が難しくなる可能性があります。
採択後は、状況報告や実績報告のなかで、付加価値額や賃上げの進捗状況を定期的に確認されます。この報告のタイミングで目標との差が明らかになるため、計画段階からの現実的な数値設定が、後の返還リスクを避けるための備えになります。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金公募スケジュールと申請までの流れ
公募スケジュールは限られた期間で進むため、申請を検討している事業者は早めの準備が欠かせません。ここでは第1回公募の目安と、申請前に済ませておくべき準備について解説します。第1回公募のスケジュール
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募は、2026年8月31日(月曜)から申請受付が始まり、締切は2026年9月30日(水曜)18時です。採択発表までは、通常数か月程度の審査期間が想定されています。この補助金は単発の制度ではなく、事務局から公募要領が公開されている通り、第1回以降も継続的に公募が行われる見通しが示されています。第1回に間に合わなくても、次回以降の公募で申請を検討する道が残されている点は、事業者にとって選択の余地になります。
一方で、申請受付開始から締切までの期間は約1か月程度と、決して長くありません。事業計画書の作成や必要書類の準備には相応の時間がかかるため、申請受付開始を待ってから動き始めると、締切に追われて十分な検討ができなくなる可能性があります。公募要領が公開された段階から準備を進めておく姿勢が求められます。
電子申請(GビズIDプライム)の準備が必要
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の申請は電子申請のみで行われ、GビズIDプライムアカウントの取得が申請の前提条件になります。中小機構も、GビズIDプライムアカウントを取得していない事業者に対し、早めの手続きを呼びかけています。GビズIDプライムアカウントは、オンラインでの申請から発行までに一定の期間を要します。書類に不備があれば再申請が必要になり、さらに時間を要することもあるため、余裕を持ったスケジュールで手続きを進めることが望まれます。
申請受付が始まる前の段階からGビズIDプライムアカウントの取得を済ませておくと、いざ申請が始まった際にスムーズに事業計画書の提出まで進めます。反対に、未取得のまま申請受付開始を迎えてしまうと、ID発行を待つ間に準備期間が削られ、締切に間に合わなくなる申請遅延のリスクが生じます。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金に対応した行政書士の探し方
事業計画書の作成が難しいと感じる場合は、行政書士に相談することで採択の可能性を高められます。ここでは、支援を依頼する行政書士を選ぶ際に確認しておきたいポイントを紹介します。補助金申請支援の実績で選ぶポイント
行政書士を選ぶ際は、旧ものづくり補助金や新事業進出補助金といった同種の補助金でどれだけの支援実績があるかを確認することが大切です。制度の変遷や審査の傾向を理解している事務所であれば、事業計画書の作成においても的確なアドバイスが期待できます。採択率や過去の成功事例は、事務所のホームページや無料相談の場で具体的に確認しておくと安心です。単に「実績多数」という表現だけでなく、どの枠でどのような事業者を支援してきたのかを尋ねてみると、実態が見えてきます。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金には、革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠という3つの枠があり、それぞれ審査で重視される観点が異なります。自社が申請したい枠について専門性を持つ行政書士かどうかも、選定のポイントになります。
費用形態についても事前の確認が欠かせません。着手金が必要な事務所と、採択された場合にのみ成功報酬が発生する事務所とがあり、どちらの形態が自社の予算感に合うかを見極めておく必要があります。
無料相談を活用して自社との相性を確認する
多くの行政書士事務所では無料相談の機会を設けています。この場で、自社の事業内容や目指す枠に対応できるか、事業計画書の作成をどこまでサポートしてもらえるかといった点を具体的に質問しておくと、依頼後のミスマッチを防げます。相談への対応スピードや、説明の分かりやすさといったコミュニケーションの相性も、依頼先を決めるうえで見落とせない要素です。専門用語を並べるだけの説明ではなく、自社の状況に合わせて分かりやすく答えてくれる事務所であれば、申請期間中のやり取りも安心して進められます。
一つの事務所だけで決めるのではなく、複数の行政書士に相談して比較検討することも有効な方法です。同じ事業内容を伝えても、事務所によって提案の視点や見積もりの内容は異なるため、比較することで自社に最も合った依頼先を選びやすくなります。
まとめ
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、旧ものづくり補助金と新事業進出補助金が統合された制度で、革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠という3つの枠から自社に合うものを選ぶ必要があります。補助上限額や補助率は従業員規模と枠によって細かく変わり、賃上げに取り組む事業者には特例による上乗せも用意されています。対象経費の範囲や、付加価値額の増加・賃上げといった基本要件は複雑で、達成できなければ補助金の返還が生じる可能性もあります。公募期間も限られているため、事業計画書の作成に不安を感じる場合は、早い段階で専門家に相談しましょう。
国内最大の行政書士検索サイト「申請Navi」では、全国各地域で補助金の申請支援実績を持つ行政書士を探すことができます。公募スケジュールは限られているため、なるべく早く行政書士に相談することをおすすめします。