技能実習から育成就労への移行で外国人雇用はどうなる?経過措置と継続受入れの条件・方法を解説

技能実習から育成就労への移行で外国人雇用はどうなる?経過措置と継続受入れの条件・方法を解説

外国人技能実習生を受け入れている企業にとって、2027年4月に施行される育成就労制度は避けて通れないテーマです。今受け入れている技能実習生が制度施行後も働き続けられるのか、また新たに人材を受け入れる場合はどう対応すべきなのか、判断に迷う担当者は少なくありません。対応が後手に回ると、入国期限を過ぎて受入れができなくなるといったリスクにもつながります。

ここでは、技能実習の経過措置の内容と、育成就労制度へ切り替えて受入れを継続する方法を整理して解説します。

 
なお、本記事では主に「現在技能実習生を受け入れている企業が、経過措置にどう対応すべきか」に絞って解説します。育成就労制度そのものの概要や、技能実習との違い、対象分野、転籍要件を先に確認したい場合は、【2027年施行】育成就労制度とは?技能実習との違い・対象分野・転籍要件をわかりやすく解説もあわせてご覧ください。

この記事のポイント

  • 2027年4月1日から育成就労制度が始まり、技能実習制度は経過措置へ移行する
  • 現在受け入れている技能実習生は、一定の条件を満たせば技能実習のまま継続できる
  • 技能実習3号へ進むには、施行日時点で技能実習2号を1年以上実施している必要がある
  • 施行日前に受入れ準備を進めている技能実習生は、原則として2027年6月30日までの入国が必要
  • 新規受入れは育成就労制度で進める必要があり、監理団体・監理支援機関・対象分野の確認が欠かせない

育成就労への移行で受入れ中の技能実習生はどうなる?

技能実習生の受入れ担当者にとって、育成就労制度への切り替えは自社の技能実習生の在留にどう影響するのかが最大の関心事です。結論から述べると、現在受け入れている技能実習生は制度施行後も一定の条件のもとで技能実習を継続できます。
※参考:育成就労制度Q&A育成就労制度の施行に伴う技能実習の経過措置について(厚生労働省)

経過措置により技能実習のまま継続受入れが可能

まず押さえておきたいのは、現在受け入れている技能実習生本人が在留資格「育成就労」へ変更するというしくみは存在しない点です。制度が変わるからといって、既存の技能実習生の在留資格が自動的に育成就労へ切り替わるわけではありません。
2027年4月の施行日時点で在留している技能実習生については、技能実習の在留資格のまま在留期間の更新や、1号から2号、2号から3号への在留資格変更を行うことができます。つまり施行日以降も、これまでと同じ技能実習の枠組みで受入れを継続できるということです。
一方で、企業が施行日以降に新たに外国人材を受け入れる場合は、技能実習としての新規受入れではなく、育成就労の枠組みで受け入れる形になります。まとめると、いま在籍している技能実習生については技能実習を継続し、新規に受け入れる人材については育成就労で対応するというのが基本的な整理です。

いま受け入れている技能実習生が働き続けられる期限の考え方

技能実習生がいつまで働けるかは、施行日時点でどの段階にいるかによって変わります。技能実習1号を修了した実習生は、施行日以降であっても通常どおり2号へ進むことができ、この点に経過措置による特別な制限はありません。
技能実習2号から3号へ進む場合には条件が加わります。施行日時点で技能実習2号を1年以上実施していることが、3号への移行の前提となるため、施行日直前に2号を開始したようなケースでは3号に進めない可能性があります。
技能実習3号まで移行できた場合でも、技能実習としての在留には期限があり、最長で2030年(令和12年)3月31日ごろまでを目途に終了する見込みです。この期限を過ぎて技能実習を継続することはできないため、実習生の在留状況を早めに確認しておく必要があります。
なお、在留期間の更新申請や在留資格変更申請そのものは、施行日の前後にかかわらず継続して受け付けられます。手続きの窓口や申請方法が急に変わるわけではないため、通常の実務フローに沿って準備を進めれば対応可能です。

技能実習制度と育成就労制度の違い

育成就労制度は技能実習制度を単に名称変更したものではなく、制度の根本的な目的から異なる仕組みです。ここでは両制度の違いを、目的と具体的な運用ルールの両面から整理します。

制度の目的が「国際貢献」から「人材確保」になる

技能実習制度は、日本で培った技能を実習生の母国に移転し、その国の経済発展に貢献するという国際貢献を目的として設けられた制度です。実習生はあくまで技能を学ぶ立場という位置づけになっています。
これに対して育成就労制度は、人材の確保と育成そのものを目的としています。労働力としての受入れであることが明確になった点が、技能実習との最も大きな違いです。
この目的の違いは理念上の話にとどまらず、転籍の可否や支援体制の運用ルールの違いに直結しています。国際貢献のための制度では転籍が原則認められていませんでしたが、人材確保を目的とする育成就労では、一定の条件のもとで本人の意向による転籍が認められるようになりました。

制度移行に伴う主な変更点

育成就労制度への移行にあたり、実務面でも複数の変更が加えられています。まず在留資格の区分について、技能実習では1号から3号までの段階が設けられていましたが、育成就労ではこうした号区分は設けられていません。
そのほかの重要な変更点として、下記が挙げられます。
①転籍のルール
……技能実習では原則として転籍が認められていませんでしたが、育成就労では一定期間の就労後、本人の意向による転籍が可能になります。ただし転籍先の分野や条件には制限が設けられているため、無条件に自由に移動できるわけではありません。
②受入れを支える組織
……これまで技能実習生の受入れを支援していた監理団体は、育成就労制度のもとでは監理支援機関という名称に変わり、許可を得るための基準も見直されています。既存の監理団体がそのまま育成就労に対応するには、あらためて許可を取得する必要があります。
③入国時の要件
……育成就労では就労開始前の日本語能力について一定の水準を満たすことが求められるようになり、技能実習と比べて入国時点でのハードルがやや上がっています。受入れ企業としては、こうした要件の変更を踏まえたうえで、採用計画や研修体制を見直しておくことが望ましいといえます。

育成就労制度へ移行する場合に受入れ可能な分野

育成就労制度でどの分野の外国人材を受け入れられるかは、特定技能制度の対象分野と密接に関係しています。ここでは対象分野の考え方と、自社の職種が対象になるかどうかの確認方法を解説します。

対象分野は特定技能と連動する仕組み

育成就労制度の対象分野は、特定技能1号の対象分野と原則として一致するように設計されています。具体的には、次の計19分野となります。
  1. 介護
  2. ビルクリーニング
  3. 工業製品製造業
  4. 建設
  5. 造船・舶用工業
  6. 自動車整備
  7. 航空
  8. 宿泊
  9. 農業
  10. 漁業
  11. 飲食料品製造業
  12. 外食業
  13. 自動車運送業
  14. 鉄道
  15. 林業
  16. 木材産業
  17. リネンサプライ(新設予定)
  18. 物流倉庫(新設予定)
  19. 資源循環(新設予定)
ただし育成就労制度そのものの対象分野は、この19分野すべてと完全に一致するわけではありません。国内での育成になじまないと判断される一部の分野については、特定技能の対象であっても育成就労の対象からは除外される可能性があるため、自社の分野が育成就労でも継続して対象になるかどうかは、あらためて確認しておく必要があります。

技能実習の経過措置とは?自社はどのケースに当たるか

育成就労制度の施行後も技能実習を継続できるかどうかは、施行日時点で自社の技能実習生がどの段階にあるかによって判断が変わります。ここでは経過措置の具体的な内容を、実習の段階や在留状況ごとに整理します。

施行日(2027年4月1日)前に技能実習を開始している場合の取扱い

施行日前に技能実習計画の認定を受け、施行日時点で実習を行っている技能実習生は、技能実習の在留資格のまま実習を継続できます。制度が切り替わったからといって、実習中の技能実習生が途中で在留資格を失うことはありません。

技能実習1号から2号・2号から3号に進む場合の取扱い

技能実習の段階が1号から2号、2号から3号へ進む際にも、経過措置に応じた取扱いが定められています。
施行日以降に技能実習1号を修了した実習生は、通常どおり2号へ進むことができ、この移行自体に特別な制限は設けられていません。
技能実習2号から3号への移行については、施行日時点で2号を1年以上行っていることが条件になります。技能実習2号の活動期間は在留資格変更許可日を起算日として判断されるため、実習開始日ではなく在留資格の変更が許可された日を基準に数える必要があります。
3号に進めない技能実習生への対応としては、2号終了後に帰国してもらう方法のほか、企業が新たな受入れ枠として育成就労制度での受入れを検討する方法が考えられます。ただし後者は技能実習からの在留資格の継続ではなく新規の受入れという扱いになるため、対象分野の確認や新たな計画の作成といった手続きが別途必要になります。
なお、施行日以降に実習内容の変更が必要になった場合は、技能実習計画の変更認定を受けることで対応できます。制度の切り替わりを理由に計画そのものを作り直す必要はなく、既存の計画を前提として必要な変更を加える形で対応が可能です。

受入れ準備が進んでいる段階の技能実習生は入国時期に要注意

受入れが認められている段階での技能実習生の入国時期は、経過措置の中でも見落とされやすいポイントです。施行日前に技能実習計画の認定と在留資格認定証明書の交付を受けている技能実習生は、2027年(令和9年)6月30日までに入国することが必要とされています。
施行日前に申請した技能実習計画が施行日以降に認定されるケースでも、実習開始日が2027年(令和9年)6月30日以前であることが前提となり、原則として同日までに入国しなければなりません。証明書の交付時期や計画の認定時期によって入国期限の考え方が異なるため、自社が受け入れている技能実習生がどのパターンに当たるかを、あらかじめ確認しておくことが欠かせません。
この期限を過ぎてしまうと、技能実習としての入国自体ができなくなるおそれがあります。入国を予定している技能実習生については、渡航準備や現地での手続きの進捗もあわせて早めに確認しておくと安心です。

実習の中断・再開があった場合の取扱い

病気や怪我、人権侵害などを理由に技能実習を一時中断している技能実習生についても、経過措置の対象となる取扱いが用意されています。中断の際には監理団体を通じて困難時届出書を提出することが必要で、この手続きを行っていない場合は実習の中断自体が正式に認められません。
中断していた技能実習生については、新たな技能実習計画の認定を受けることで、施行日後も技能実習生として再度入国し、実習を継続することが可能です。ただし、この場合であっても本人が在留資格を「育成就労」に変更することはできない点は変わりません。
もう一点注意したいのは、過去に技能実習生として2年以上の実習経験がある者については、その経験が育成就労制度における育成期間とみなされる仕組みになっていることです。このため、技能実習の経験が2年以上ある人材が、あらためて育成就労制度のもとで来日し就労することはできません。中断中の技能実習生を抱えている企業は、この取扱いを踏まえて再入国の方針を検討しておく必要があります。

自社の技能実習生はどの経過措置に該当するか

自社の技能実習生がどの経過措置の対象になるかを判断するには、いくつかの確認事項を順番に整理していく必要があります。
①施行日時点でその技能実習生が1号、2号、3号のどの段階にいるかを確認する
②2号を実施している場合は、在留資格変更許可日を起算日として、施行日時点までの実施期間が1年以上あるかどうかを確認し、3号への移行可否を見極める
③現在実習を中断しているか。中断している場合は困難時届出書の提出状況と、これまでの実習経験が2年以上に達しているかを確認する
④まだ入国していない技能実習生については、技能実習計画の認定状況や在留資格認定証明書の交付状況と、想定している入国予定日を確認する
これらの確認事項を技能実習生ごとに整理することで、自社がどの経過措置のパターンに当たるかが明確になり、その後の対応方針を具体的に検討しやすくなります。

経過措置で継続する場合と育成就労へ切り替える場合、どちらを選ぶべきか

技能実習生の受入れを続けるにあたり、経過措置のもとで技能実習を継続するか、育成就労制度に切り替えて受入れを行うかは、企業の状況によって最適な選択が異なります。ここでは両者の違いと、判断のポイントを整理します。

経過措置で技能実習を継続するケース

すでに技能実習を開始しており、経過措置の対象条件を満たしている企業にとっては、そのまま技能実習を継続することが現実的な選択になります。すでに実習計画が認定され、実習生が入国済みであれば、制度の切り替わりを理由に体制を変更する必要はありません。
技能実習を継続するうえでの前提となるのは、受入れを支えている監理団体の許可が有効であることです。監理団体の許可期間が残っている間は、これまでと同じ体制のもとで技能実習生の指導や生活支援を続けることができます。
また、技能実習2号を1年以上実施しており、3号への移行が見込める実習生を受け入れている場合は、そのまま技能実習を継続するメリットが大きいといえます。3号まで実習を続けられれば、実習生本人にとっても長期の就労機会が確保でき、企業側も育成にかけた時間や労力をそのまま活かすことができます。

育成就労制度へ切り替えて受け入れを継続するケース

これから新たに外国人材を受け入れる場合は、技能実習ではなく育成就労が基本の枠組みになります。現在受け入れている技能実習生の継続とは別に、今後の新規受入れをどう進めるかという観点で検討する必要があります。
育成就労での受入れを行うには、現在の監理団体が監理支援機関としての許可を新たに取得していることが前提になります。監理団体が監理支援機関への移行を予定していない場合、その団体を通じた育成就労での受入れはできないため、監理団体の対応方針を早めに確認しておくことが欠かせません。
育成就労制度では、技能実習にはなかった転籍の仕組みが導入されている点も踏まえておく必要があります。本人の意向による転籍が一定の条件のもとで認められるため、社内の受入れ体制や人員計画についても、実習生が途中で転籍する可能性を前提とした見直しが求められます。

業種・受入れ状況別に見る判断方法

経過措置での継続と育成就労への切り替えのどちらを選ぶべきかは、業種や受入れ状況によって判断材料が異なります。まず確認すべきは、自社が受け入れている分野が育成就労制度の対象分野に含まれているかどうかです。対象分野に含まれていない場合、育成就労での新規受入れという選択肢自体がそもそも成り立ちません。
次に、対象分野であっても、分野ごとに設定される受入れ見込数の状況を確認する必要があります。上限に近づいている分野では新規受入れの枠が限られるため、育成就労への切り替えを検討していても、希望する時期に受入れができないことがあります。
最後に、受入れを支えている監理団体の対応方針も判断材料になります。監理団体が監理支援機関への移行を進めている場合は、比較的スムーズに育成就労への切り替えを進めやすくなりますが、移行の予定がない場合は、監理団体の変更も含めた検討が必要になります。

まとめ

技能実習から育成就労への制度移行では、現在受け入れている技能実習生がそのまま在留資格を失うわけではなく、経過措置のもとで技能実習を継続できる仕組みが用意されています。一方で、技能実習2号から3号への移行条件や入国期限には具体的な期日が設けられており、確認を後回しにすると対応が間に合わなくなるおそれがあります。
新たに外国人材を受け入れる場合は育成就労制度が基本の枠組みとなるため、対象分野の確認や監理団体の監理支援機関への移行状況など、事前に整理すべき点も多くあります。自社の技能実習生がどの経過措置に該当するか、そして今後の新規受入れをどのように進めるべきかは、企業ごとの状況によって判断が分かれる部分です。
制度の切り替えに伴う手続きは専門性が高く、判断を誤ると受入れの継続に支障が出ることもあります。判断に迷う場合や、社内だけでの対応に不安がある場合は、早めに専門家へ相談することが安心につながります。国内最大の行政書士検索サイト「申請Navi」では、全国各地域で技能実習・育成就労制度への対応実績を持つ行政書士を探すことができます。経過措置には期限が設けられているため、対応を検討しているなら早めに行政書士へ相談することをおすすめします。

行政書士の費用は地域や対応内容、依頼主のご状況によって大きく異なります。
ご自身のケースの料金を確認したい方は、以下より簡単1分でご確認いただけます。

外国人労働者の雇用に強い地域の行政書士を探す

お住まいの地域・対応エリアから、外国人労働者の雇用に強い行政書士を探せます。

北海道・東北
関東
中部
近畿
中国・四国
九州・沖縄

この記事の執筆・監修者

氏名:遠藤 秋乃
行政書士・司法書士資格保有

経歴:

大学卒業後、不動産会社で4年・メガバンクの融資部門での勤務2年を経る。

2015年~2016年にかけて、司法書士試験・行政書士試験に合格。知識を活かしてさまざまな分野の相談に200件以上対応。

入管手続き、相続、企業法務、事業承継などさまざまな分野について最新事例の調査・研究を進め、行政書士資格保有者の立場から、読者に良質な情報をお届けしています。