【2026年最新】事業承継・M&A補助金とは?4つの申請枠・要件・申請方法を徹底解説

【2026年最新】事業承継・M&A補助金とは?4つの申請枠・要件・申請方法を徹底解説
事業承継・M&A補助金(旧:事業承継・引継ぎ補助金)は、中小企業の承継やM&Aに伴う費用を最大1,000万円(事業承継促進枠)まで補助する国の制度です。
ここでは、4つの申請枠の違い・対象者・申請手順・採択のポイントをわかりやすく解説します。
 
中小企業が利用できる補助金の一覧は補助金一覧の解説記事でも詳しく解説しております。

この記事のポイント

  • 事業承継・M&Aに伴う費用は最大600万〜1,000万円程度の補助が受けられる
  • 申請枠は「承継促進・専門家活用・PMI・廃業」の4つから選択する
  • 申請はJグランツ(GビズID必須)で行い、事業計画書の質が採択を左右する
  • 自社に合う枠の判断や書類作成に不安がある場合は専門家相談が有効
  • 早めの準備(ID取得・支援機関確保)が採択率アップの鍵

事業承継・M&A補助金(事業承継・引継ぎ補助金)とは

事業承継・M&A補助金は、中小企業・小規模事業者等が事業承継やM&Aに際して行う設備投資等、また事業再編・事業統合に伴う経営資源の引継ぎや引継ぎ後の経営統合に係る経費の一部を国が補助する制度です。正式名称は「事業承継・M&A補助金」といい、中小企業庁が所管しています。
この補助金は、もともと「事業承継・引継ぎ補助金」という名称で運営されていました。令和7年度補正予算の執行にあたり「事業承継・M&A補助金」へと改称され、14次公募(2026年)以降はこの名称が使われています。ただし、制度の実質的な内容や目的は従来から引き継がれています。

事業承継・M&A補助金の4つの枠

事業承継・M&A補助金は、申請者の状況や目的に応じて「事業承継促進枠」「専門家活用枠」「廃業・再チャレンジ枠」「PMI推進枠」の4つの枠が設けられています。それぞれ対象者・補助上限額・補助率が異なるため、自社の状況に合った枠を正確に把握することが重要です。

事業承継促進枠(承継に伴う設備投資が対象)

事業承継促進枠は、親族内承継・従業員承継などを予定している後継者が、承継を契機に生産性向上に資する設備投資等に取り組む費用を支援する枠です。旧名称は「経営革新枠」で、4枠の中で最も広く活用されています。
対象となるのは、公募申請時点で3期分の決算・申告が完了している企業ですが。後継者(承継予定者)の要件として、対象会社の役員または従業員として3年以上の経験が求められます。個人事業主の場合は、継続して3年以上雇用された者または被承継者の親族であることが必要です。
補助上限額・補助率は以下のとおりです。
類型補助上限額補助率
通常600万円2分の1以内
小規模企業者600万円3分の1以内
補助事業期間を含む5年間の事業計画において、付加価値額または1人当たり付加価値額の伸び率が年3%以上の向上を見込む計画であることが求められます。
対象経費の例としては、機械装置・システム構築費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、開発費、資料購入費、雑役務費、借料、専門家経費、委託費・外注費などが挙げられます。
※参考:事業承継促進枠公募要領(第14次公募)

専門家活用枠(M&A支援機関に支払う費用が対象)

専門家活用枠は、M&Aによる事業引継ぎを検討・実施している中小企業者などが、M&A支援機関(仲介業者・FAなど)に支払う費用の一部を補助する枠です。専門家活用枠には「買い手支援類型」と「売り手支援類型」の2類型があります。
対象者・要件として、買い手支援類型はM&Aにより他の中小企業者等から経営資源を引き継ぐことを希望・予定している事業者が対象です。
売り手支援類型は、M&Aにより自社の経営資源を他の中小企業者等に引き継がせることを希望・予定している事業者が対象となります。
いずれも、登録M&A支援機関が関与するM&Aであることが要件であり、成約前でも申請が可能です。
補助上限額・補助率は以下のとおりです。
類型補助上限額補助率
買い手支援類型600万円2分の1以内
売り手支援類型600万円3分の1以内
対象経費の例としては、M&A仲介手数料、フィナンシャル・アドバイザリー(FA)費用、デュー・デリジェンス(DD)費用(財務・法務・税務など)、企業概要書(IM)作成費用、契約書作成にかかる専門家費用などが挙げられます。いずれも登録M&A支援機関を通じた取引に関連する費用が対象となります。
※参考:専門家活用枠公募要領(第14次公募)

廃業・再チャレンジ枠(廃業・事業整理のための費用が対象)

廃業・再チャレンジ枠は、事業承継・M&Aに取り組む過程で既存事業の廃業が必要となる事業者に対し、廃業にかかる費用の一部を補助する枠です。単独での申請のほか、事業承継促進枠または専門家活用枠との併用申請も可能です。
対象者・要件として、補助対象となるのは、既存事業を廃業して新たな事業に再チャレンジする中小企業者等です。廃業を伴う事業承継・M&Aを予定しており、廃業コストが発生することが要件となります。
補助上限額・補助率は以下のとおりです。
補助上限額補助率
150万円3分の2以内
他の枠との併用申請については、事業承継促進枠と併用する場合は事業承継促進枠として申請し、専門家活用枠と併用する場合は専門家活用枠として申請します。廃業・再チャレンジ枠単独での申請も可能で、その場合は廃業に係る費用のみが補助対象となります。なお、PMI推進枠との同一公募回での重複申請はできません。
対象となる廃業費用の例としては、廃業支援費、在庫処分費、解体費、原状回復費、リース解約費などが挙げられます。
※参考:廃業・再チャレンジ枠(第14次公募)

PMI推進枠(M&A実施後にかかる費用が対象)

PMI推進枠は、M&Aによる事業統合後の経営統合(PMI:Post Merger Integration)を円滑に推進するための費用を支援する枠です。「PMI専門家活用類型」と「事業統合投資類型」の2類型があります。
対象者・要件として、M&Aが成約済みであり、PMIに取り組んでいる中小企業者等(買い手側)が対象です。PMI専門家活用類型はPMIに関する専門家費用、事業統合投資類型はPMIに伴う設備投資等の費用がそれぞれ補助対象となります。M&Aの成約から一定期間内であることが要件となるため、成約後は早めに申請を検討することが重要です。
補助上限額・補助率は以下のとおりです。
類型補助上限額補助率
PMI専門家活用類型600万円2/3以内
事業統合投資類型600万円1/2以内(小規模2/3以内)
専門家活用枠との関係については、専門家活用枠(M&A成約前)とPMI推進枠(M&A成約後)は時系列が異なるため、同一公募回での同時申請はできません。ただし、異なる公募回でそれぞれ申請することは可能であり、M&Aの各フェーズに応じた補助金活用が想定されています。
対象経費の例としては、PMI専門家活用類型では統合計画策定支援費・システム統合支援費・人事制度統合支援費などの専門家費用、事業統合投資類型では事業統合に伴う設備投資・システム構築費・外注費などが挙げられます。
※参考:PMI推進枠公募要領(第14次公募)

事業承継・引継ぎ補助金の申請方法・手順

事業承継・M&A補助金の申請は、公募要領の確認から電子申請まで複数のステップを経ます。申請締切直前に慌てないよう、早めに全体の流れを把握しておくことが採択への近道です。

公募要領を確認し、申請枠・類型を決める

まず、事業承継・M&A補助金事務局の公式サイトから最新の公募要領をダウンロードし、内容を精読することから始めます。4つの申請枠(事業承継促進枠・専門家活用枠・廃業・再チャレンジ枠・PMI推進枠)はそれぞれ公募要領が異なり、対象者要件・補助上限額・対象経費も枠ごとに定められています。自社の状況(親族内承継なのか、M&Aを検討中なのか、すでにM&Aが成約済みなのかなど)を整理した上で、どの枠・類型に該当するかを確認しましょう。枠の選択を誤ると申請が無効になる場合もあるため、不明点は事務局へ早めに問い合わせることをおすすめします。

事業計画書を作成する

申請の中心となるのが事業計画書の作成です。事業承継促進枠では、承継予定者が主導して取り組む生産性向上等の事業内容を具体的に記載します。補助事業期間を含む5年間の計画において、付加価値額または1人当たり付加価値額の伸び率が年3%以上向上する見込みであることを示す必要があります。審査では計画の実現可能性・具体性・地域経済への貢献度などが評価されます。単なる設備投資の説明にとどまらず、承継後の事業がどのように成長するかというストーリーを論理的に記述することが重要です。

認定支援機関の確認書を取得する

事業計画書が完成したら、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)に内容の確認を依頼し、確認書を発行してもらいます。認定支援機関とは、中小企業庁から認定を受けた税理士・公認会計士・行政書士・金融機関などの専門家・機関で、中小企業庁のウェブサイトから検索できます。
確認書の取得には一定の時間がかかるため、申請締切の直前に依頼しても間に合わないケースがあります。公募要領にも「余裕をもって依頼すること」と明記されており、少なくとも申請締切の2〜3週間前には依頼を完了しておくことが望ましいです。

必要書類を揃える

申請に必要な書類は、すべての枠で共通して求められるものと、申請枠・事業承継形態によって追加されるものに分かれます。
共通して必要な書類の例は以下のとおりです。
  • 公募申請書(本紙・別紙)
  • 事業計画書
  • 認定支援機関による確認書
  • 直近の決算書(貸借対照表・損益計算書など)
  • 法人の場合:登記事項証明書、法人税の確定申告書の写し
  • 個人事業主の場合:確定申告書Bおよび青色申告決算書の写し
申請枠や事業承継形態(法人の代表者交代・個人事業主の事業譲渡など)によっては、後継者の在籍を証明する書類、事業承継計画書、株主名簿など追加書類が必要になります。公募要領の「必要書類」の章を必ず確認し、漏れのないよう準備しましょう。

jGrants(電子申請システム)から申請する

本補助金の申請は、国が運営する電子申請システム「jGrants(Jグランツ)」を通じてオンラインで行います。紙による申請は受け付けていないため、事前にjGrantsのアカウント登録を済ませておく必要があります。
jGrantsの利用にはGビズIDプライムアカウントの取得が必須です。GビズIDは法人・個人事業主向けの認証システムで、取得には通常1〜2週間、混雑時には3週間程度かかる場合があります。公募要領でも速やかに取得手続きを行うよう案内されており、申請を検討し始めたタイミングで即座に取得申請を進めることが重要です。
GビズIDプライムアカウントを取得したら、jGrantsにログインし、該当する補助金・申請枠を選択して申請フォームに必要事項を入力します。事業計画書や必要書類はPDFなどの形式でアップロードします。入力内容の不備や書類の不足があると受理されない場合があるため、送信前に公募要領と照らし合わせて最終確認を行いましょう。

採択通知・交付申請・実績報告の流れ

申請受付終了後、事務局による審査を経て採択結果が通知されます。14次公募では2026年5月中旬に採択が予定されています。採択された場合は、指定された期間内に交付申請を行い、交付決定を受けてから補助事業(設備投資や専門家活用など)に着手します。交付決定前に発注・契約・支払いを行った経費は原則として補助対象外となるため、この点には十分注意が必要です。
補助事業が完了したら実績報告書を提出し、事務局による確認を経て補助金が交付されます。さらに補助事業終了後も、事業化状況報告を定められた期日までに提出する義務があります。報告を怠ると次回以降の補助金申請に影響が生じる場合もあるため、採択後のスケジュール管理も含めて計画的に取り組みましょう。

事業承継・M&A補助金の採択率を上げるための3つのポイント

事業承継・M&A補助金は、要件を満たしているだけでは採択が保証されるわけではありません。審査では事業計画の質や加点要件への対応が評価されるため、提出前に以下のポイントを意識して準備しましょう。

賃上げ加点を狙う

本補助金の審査では、賃上げへの取り組みが加点事由として設けられています。具体的には、補助事業期間中に事業場内最低賃金を地域別最低賃金より一定額以上引き上げる計画を示すことで加点を受けられます。賃上げ加点は他の中小企業庁所管の補助金(ものづくり補助金・持続化補助金など)でも共通して設けられているしくみであり、近年の審査において重視される傾向があります。
ただし、加点を狙って賃上げ計画を記載した場合、その達成状況は事業化状況報告で確認されます。過去の公募回において賃上げ加点の要件が未達成だった場合、正当な理由がない限り次回申請で大幅に減点される仕組みになっているため、実現可能な計画を立てた上で加点を申請しなければなりません。

事業計画書で「承継後の成長ストーリー」を具体的に書く

審査において最も重要な書類が事業計画書です。単に「設備を導入する」「システムを刷新する」といった投資内容の羅列では審査員に響きません。承継予定者が主導してどのような課題を解決し、承継後の事業がどのように成長するのか、その道筋を論理的かつ具体的に示すことが求められます。
事業計画書に盛り込みたい要素として、現状の課題と承継後のビジョン、投資内容と生産性向上の因果関係、付加価値額が年3%以上向上する根拠となる数値計画、地域経済への貢献(雇用維持・域内仕入・地域資源の活用など)が挙げられます。審査員は多数の申請書類を審査するため、読み手にとってわかりやすく、説得力のある構成にすることが採択の近道です。

認定支援機関を早めに確保する

事業承継促進枠の申請には、認定経営革新等支援機関による事業承継の蓋然性確認および事業計画書の確認が必須です。この確認書がなければ申請自体が受理されません。
認定支援機関の確認作業には、事業計画書の読み込みや面談、修正対応など一定の時間がかかります。特に税理士や金融機関など人気の支援機関は公募期間中に依頼が集中するため、公募開始と同時に依頼先を確保し、事業計画書の作成段階から並行して相談を進めることが理想的です。行政書士など補助金申請に精通した認定支援機関に依頼することで、計画書の質そのものを高められるメリットもあります。

事業承継・M&A補助金でよくある質問(FAQ)

制度への理解が深まるにつれ、細かな疑問も出てくるものです。ここでは申請前によく寄せられる質問をまとめました。該当する項目があれば、申請の判断材料としてお役立てください。

Q. 事業承継・引継ぎ補助金と事業承継補助金は同じもの?

A. 基本的に同じ補助金を指しています。正式名称は「中小企業生産性革命推進事業 事業承継・M&A補助金」で、令和7年度補正予算(14次公募)以降はこの名称が使われています。
それ以前は「事業承継・引継ぎ補助金」という名称でした。「事業承継補助金」「事業継承補助金」「M&A補助金」といった呼び方も広く使われていますが、いずれもこの補助金のことを指していると理解して問題ありません。

Q. 個人事業主でも申請できる?

申請できます。ただし、個人事業主には法人とは異なる要件が設けられています。青色申告者であることが前提で、税務署に提出した確定申告書Bと所得税青色申告決算書の写しを提出できることが必要です。
また、事業承継促進枠で個人事業主が申請する場合、被承継者と承継予定者による共同申請が必須となります。さらに、対象事業は公募申請時点で開業届と青色申告承認申請書を税務署へ提出した日から5年が経過していることも要件となっています。

Q. 親族への承継(親子間)でも対象になる?

対象になります。事業承継促進枠では、被承継者の親族への承継も申請可能です。ただし、後継者(承継予定者)側の要件として「被承継者の親族であり、対象会社の代表経験がない者」であることが条件とされています。つまり、すでに代表を経験している親族への承継は対象外となるため注意が必要です。
また、経営権と所有権(株式・持分等)のいずれも被承継者から承継者へ譲渡されることが実質的な事業承継の要件として求められており、名義だけの代表者交代はこれに該当しません。

Q. M&Aが不成約でも申請できる枠はある?

専門家活用枠は、M&Aの成約前・成約後を問わず申請できる枠です。M&Aを希望・検討している段階(交渉中・マッチング中)であっても、登録M&A支援機関が関与していれば申請の対象となります。
仲介手数料やデュー・デリジェンス費用なども補助対象経費に含まれるため、M&Aを本格的に検討し始めた段階で申請を検討する価値があります。
一方、PMI推進枠はM&Aの成約後が前提となるため、不成約の場合は対象外です。

Q. ほかの補助金(ものづくり補助金など)と併用できる?

原則として、同一の補助対象経費に対して国の他の補助金・助成金と重複して申請することはできません。ただし、補助対象経費が重複しない別々の取り組みであれば、異なる補助金を別々に申請すること自体は可能です。
なお、過去の公募回においてものづくり補助金など中小企業庁所管の補助金で賃上げ加点を受けていた場合、その達成状況が本補助金の審査にも影響します。未達成の場合は大幅に減点される仕組みになっているため、複数の補助金を活用する際は採択後の要件達成状況も含めて一元的に管理することが重要です。

まとめ

事業承継・M&A補助金は、事業の引継ぎやM&Aを契機に設備投資・経営革新・専門家活用に取り組む中小企業者等を広く支援する制度です。4つの申請枠はそれぞれ対象者や補助上限額・補助率が異なるため、まずは自社の状況に合った枠を選びましょう。
申請にあたっては、事業計画書の質・賃上げ加点への対応・認定支援機関の早期確保という3つのポイントを意識することで、採択率を高められます。書類の準備からjGrantsでの電子申請まで、専門的な知識と段取りが求められる手続きでもあるため、不安を感じる場合は早めに専門家へ相談することをおすすめします。
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この記事の執筆・監修者

氏名:遠藤 秋乃
行政書士・司法書士資格保有

経歴:

大学卒業後、不動産会社で4年・メガバンクの融資部門での勤務2年を経る。

2015年~2016年にかけて、司法書士試験・行政書士試験に合格。知識を活かしてさまざまな分野の相談に200件以上対応。

入管手続き、相続、企業法務、事業承継などさまざまな分野について最新事例の調査・研究を進め、行政書士資格保有者の立場から、読者に良質な情報をお届けしています。